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学長発信のドロップアウト対策、教職協働で学生をサポート【千葉工業大学】連載2-1

千葉工業大学では2000年代中盤から入学直後の学生を対象に新入生ガイダンスを行っています。この取り組みに立ち上げ当初から携わっているのが教学センター職員の伊藤美奈さん。退学者抑制、新入生の友達づくり、教員の負担軽減といった大学の課題と向き合いながら、教職協働に取り組んでおられます。新入生ガイダンスの初期の頃から現在に至るまでにさまざまな試みや変化があったようですが、その時々の課題やねらい、教員へのサポート体制など、これまでの歩みについて話を聞かせていただきました。



――最初に伊藤さんのプロフィールについてお尋ねしてもいいでしょうか。これまでの担当業務についてお聞かせください。


伊藤さん 今は教学センターという部署名になっていますが、教務に来て9年目です。その前は学務課と学生課を6年ずつくらい担当していました。



――教務では主にどんなお仕事を?


伊藤さん 今は大学院に関連する業務を中心に、新入生や卒業生といった学籍に関わることを担当しているため、新入生ガイダンスのプログラムにも携わっています。



――伊藤さんは新入生ガイダンスが始まった経緯についてご存知ですか?


伊藤さん はい、スタートは2006年で、今から3代前の学長が退学者抑制のねらいも含めて始めたものです。



――退学問題は2006年頃からあったんでしょうか?


伊藤さん ありました。当時は他大学よりも退学率が高かったのですが、今はどちらかといえば低い方に落ち着いています。おおよそ留年や退学の数値が3分の1程度になりました。



――先ほど、伊藤さんは新入生ガイダンスの開始時期を「2006年」と時期を明言されましたが、大学で何か印象的な出来事があったタイミングだったのでしょうか。2006年というのはちょうど初年次教育学会がたちあがった時期と重なります。


伊藤さん ちょうど私が学務にいた頃で、全学科でスタートしようとする時に、とりまとめに立ち会いました。学長が変わった時に、初年次教育が重要視されていくという方針が示され、個別にそういうことに取り組んでいる学科はあったのですが、全学で新入生ガイダンスをやろうとなったのはその時が初めてですね。



――それまでの新入生ガイダンスはどのようなものだったのですか?


伊藤さん 学科ごとにやったりやらなかったりで、懇親会形式のものが一番多かったですね。みんなを集めて授業の説明をして、その後パーティで食べ物を食べたり飲んだりして、先輩や先生と交流を深めてもらいました。



――それが、いつしか現在のように何某かのプログラムを実施する形式へと変化したんですね。


伊藤さん 最初は学務の管轄だったのですが、初年次教育のからみもあって、授業の一貫のようなものに取り扱いを変えましょうということになり、管轄が教務に移ったんです。授業色がより強まり、グループワークをしようという流れに変わってきました。そのタイミングで、独自のプログラムはあるものの、先生にも得意不得意があるので、こういうことに対応してくれる業者はないかという話が一部の学科から出てきて。いくつかの学科で外部サービスを利用して友達づくりとか自己分析といったものを取り入れて行うようになりました。



――懇親会から教育プログラムの一環へとねらいを変えていったんですね。


伊藤さん そうですね。さらに付け加えると、2016年の改組で新しい工学部が始まったのを境に、このプログラムを教職協働でやることになり、教員だけでなく各学科に担当職員がつくことになった影響も大きいと思います。先生たちから自前のプログラムでやるのは大変だと聞き、キャリアデザインの教科を含めていくつかの外部業者を紹介して、職員が運営に関わるようになっていったんです。私は2015年に教務に異動してきたので、この形式でプログラムがスタートする頃には関わっていました。



――2015年以前の新入生ガイダンスのあり方にはどんな課題があったのでしょうか。


伊藤さん 学科によって、友だちづくりをメインにしているところと、授業の一環ととらえて実験科目の基礎を体験するところがありました。ただ、退学する学生が一番大きな理由として挙げていたのは「相談できる人がいなかった」だったので、こちらとしては友達づくりをしてほしいと思っていました。それで、授業だけど、もう少し友達づくりのようなものにシフトしていったんです。ですが、そうすると先生も何をしたらいいのかと悩まれるようになりました。



――その取り組みの影響で変わってきているんですね。


伊藤さん 新入生ガイダンスの改革と並行して2011年頃から職員主導で、推薦入学者を対象に友だちづくりのプログラムを行っていました。学科に関係なく学生を集めて、3月に2日間かけて様々なグループワークを行いました。その効果があったので全体に広げることになったことと、オリエンテーションも行き詰まっていたので2017年あたりから2つを一本化して、半分以上の学科で外部業者を利用して実施することになったんです。



――業者の選定はどのようにされているのですか?


伊藤さん 事務方の選定した会社やキャリアデザインの科目の委託先などトータルで10社くらいに声をかけさせていただいています。だいたい5~6社からご回答いただけるので、その中から選んでいただくか、学科でオリジナルのものをやってもいいし、学科の先生がご存知の業者を連れてきてやってもいいことになっています。



――業者側からはどのようなプログラムの提案があるのでしょうか?


伊藤さん ラーニングバリューさんのチームビルディングプログラム以外には、アドベンチャー体験から学ぶプログラムや、サバイバルゲームをやるところ、その他、本学のグローバルラウンジの運営をお願いしているECCからは英語のコミュケーションを含めたグループワークの提案をいただいています。



――友達づくりができるような内容であること以外に、プログラム選定のガイドラインはあるのでしょうか?


伊藤さん 先生方には、授業の一環なので必ずグループワークをしてください、という条件をつけています。ただ、先生に「グループワーク」というと、演習や実験をイメージされて、硬めな授業をする先生もおられます。「友達をつくれるように自己紹介も含めた和気あいあいとした作業も組み込んでください」とか「難易度の高いものではなく、誰でも取り組める内容にしてください」と依頼しています。



――事務方から先生に割と細かく要望を出されるんですね。


伊藤さん 他の大学よりも事務の力が強い、とよく言われます。でも、事務は担当学科を固定せず、毎年変わるので、「この学科ではこうしていました」と情報提供できるので、喜ぶ先生もおられます。



――外部の情報が入手できて、先生にとってもいいことだと思います。いつ頃から事務方が学科運営に積極的に関わるようになったのですか?


伊藤さん 先ほどお話しした2016年の工学部の改組の時に、学長主導でもあり事務局の主導でもあるんですが、「教職協働でやりましょう」という言葉が出て、先生だけでなく、職員も関わって積極的に学生をフォローする体制をつくることになりました。こういったプログラムもそうですし、それ以外にも、新習志野には学科担当の職員がいるので、学生の相談ができるように、先生や担当職員と連絡を取れるようにして、大学全体で教職協体制をつくる方針が示されたんです。



――教職協働に対する先生方の反応はいかがですか?


伊藤さん 威圧的な先生方は比較的少ないですし、元々がある程度職員が関与できる素地はあったんですね。だから新入生ガイダンスにしても、「学科でやりたいから絶対に無くさない」と抵抗された学科もありましたけど、「これまでとは変えたいから一緒に協力してください」とか「実施内容を一新する理由をつけたいんですけど、いい案はないですか」という感じで相談に来られる先生もいますね。



――先生へのサポート体制はどのようにしているのですか?

伊藤さん 原則として、年度ごとに1学科に1人ずつ、新入生プログラムだけの担当がつきます。それとは別に、1・2年次は別途、各学科に担当職員を振り分けて新入生の面倒を見る体制をとっています。

そのほうが、「1年生で履修がわからない人は、何学科の人はここに来るといいよ」といえますし、複数の学科をまたぐよりは、「今年はここだけ」と、担当する学科を決めて面倒を見るほうが職員も対応しやすくて、授業の調整もしてあげやすいんです。


※肩書・掲載内容は取材当時(2024年6月)のものです。

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