フィードバックとは、別の言い方をすれば、お互いに相手にとっての「鏡」になるということである。鏡はただこちらの姿をそのまま映すだけで、何の評価もしない。鏡に映った姿を見て、“よい”とか“いやだ”とかの判断をするのは、鏡ではなくその人自身である。つまりフィードバックというのは、自分と言う鏡に映った相手の様子(自分に見えた相手の姿、動作や言動が自分に与えた影響など)を、評価を加えないで、そのまま相手に返してあげることなのである。
そして、フィードバックされたことをどうするかというと、それは相手が決めることである。相手は自分で考えて、自分で行動する事ができる。
例えば、忠告と称して親切心から、自分という鏡に映ったことを相手に押しつけてしまうことはないだろうか。その場合、特に“悪い”とか“こうした方がいい”と言うようなマイナスのことがらを評価的に言われた場合、人はどうしても防衛的になり、フィードバックされたことを、そのまま受け容れるのが難しくなる。また、押しつけ的になると、それがたとえ善意であれ、過剰なお節介になってしまい、相手の自己決定を妨げてしまうことにもなりかねない。その意味で、フィードバックとは相手の自己成長に援助的にかかわっていくことであると言える。
以下に、フィードバックの留意点をいくつか挙げてみる。
● フィードバックは、相手の成長を願ってなされるものである。
● フィードバックは、相手を非難したり、攻撃したりするものではない。
● フィードバックは、相手を映す「鏡」になることで、評価はタブーである。
● フィードバックは、できごとを具体的に記述するものである。
● フィードバックは、双方通行のコミュニケーションでなされるべきである。
● フィードバックは、相手が受け容れやすいように工夫してなされることが望ましい。
● フィードバックには、“時”がある。時間が経ってからでなく、できごとがあったときに近いことが必要である(Here and Now)。
● フィードバックは、お互いの信頼関係の形成に役立つものである。
過去と他人は変えられない。変えられるのは今の自分だけ。
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