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連載開始5周年特別企画『組織を見つめるトップの視座』成城大学 学長インタビュー(前編)

odlabo

更新日:2024年2月23日

当サイト、「学校の改革・活性化」の実践紹介ブログ『学校の組織開発物語』がスタートしたのは2018年10月のこと。ここまでの5年間で13大学を取材して、組織開発的な教育改革の取り組みについてさまざまな立場の方々から話を伺ってきました。これまでに取材させていただいた方の中に、その後、組織のトップに就任された方がいらっしゃいます。急速な少子化を背景に将来社会を見据えた高等教育のあり方が問われ、文部科学省の中央教育審議会でも大学の再編・統合等が議題にのぼるなど、大学を取り巻く環境は厳しさをましています。そんな中で、組織のトップを任された方はどのように舵取りしていこうと考えておられるのか。5周年特別企画として、『組織を見つめるトップの視座』と題し、トップ就任によって感じた視点や視界の変化、組織に対する課題感についてインタビュー。率直な言葉の数々を通して、トップの視点や課題意識を読者と共有する機会を設けてみたいと思います。

第一弾は、成城大学 学長の杉本義行先生へのインタビューです。


(2021年6月公開時は副学長/連載はこちらhttps://odlabo.wixsite.com/lv-od/post/sj01-01




――杉本先生が学長に就任されたのは2022年4月で、すでに1年半が過ぎていますが、まずは就任の背景からお聞きしていってもいいでしょうか。成城大学ではどのようにして学長を決めておられるのですか?


杉本学長 本学では立候補制でなく、一次、二次の選挙によって学長が選出されます。本学では学部は4つありますが、各学部と職員層からそれぞれ15名の選挙人がおり、全部で75票です。一次選挙では、学内外から学長に適任と思う人の名前を書いて選挙人が投票する方式です。



――75人が記名する候補者は、成城大学の先生でなくてもいいということなのですか?


杉本学長 そうです。規則上は、全国から学長に適任と思われる1人の名前を書いて投票するのが一次投票です。そうして得票数の上位3人が公示され、その3名が大学運営についての所見を書くことになります。つまり、立候補ではないのですね。その所見をもとに、専任教員全員による二次投票が行われます。



――ということは、杉本先生は自由記名で上位3人に選ばれ、最終的に二次投票で選ばれたということですね。候補者選びは各学部公平な選挙人数で行われるので、非常に民主的なシステムといえそうです。ただ、「二次投票では先生が一票ずつ」となると、学部の教員数が投票の多い少ないにも影響しそうな気はしますが。


杉本学長 そうですね。民主的ではありますが、ご指摘の課題もあるように思います。ちなみに教員数が多いのは文芸学部で、前学長で2期6年務められた戸部順一先生(現学園長)も文芸学部。私は経済学部ですが、何十年ぶりかの学長ではないでしょうか。全国には学長と呼ばれる人はおよそ800人いるわけですが、同じ職名で、同じように責任があるのに、選び方も位置づけも大学によって異なっていると思います。



――ちなみに杉本先生は二次投票に向けてのどのような意見表明をされたのですか?


杉本学長 まず、若い人がなるべきだ、と申し上げました。その上で、学長は学習者中心、つまり学生ファーストでやっていかねばならないということ。もう一つは、外部との連携をもっと進めていくべきということを強調しました。



――外部との連携とは、具体的には高大接続のことですか?


杉本学長 同じ学園内の中高との高大接続もそうですし、学園外の連携校についても同様です。たんに、入学枠を拡大するというようなことだけでなく、もっと教育内容に関するようなこと。例えば、探究学習や、生徒・学生同士のつながりをもつようなことですね。連携することによって教育の機会をつくりたいと考えています。もう一つは、産業界、地域等との連携、そして外部資金の獲得も重要ですね。



――教育における連携を強化したいと考えるようになった背景は?


杉本学長 この1年で最も大きな変化といえば、生成AIやChatGPTといったテクノロジーが一般的になったことではないでしょうか。これまで、言葉として「AI」というものは存在していたけれど、誰にでもわかるかたちで認識されるようになってきましたよね。私も折に触れ、ChatGPTを使ってみるのですが、「課題もあるかもしれないけれど、コレいいな」と思うんです。

生成AIを前提として教育を進めていくことを考えると、一方では「リアルな経験を積む」ということが非常に重要になってくると思うんですよね。もちろん大学では知識やスキルを修得することが学びの根幹にあるわけですが、その部分をもっと効率化できるのであれば、身をもってやってみて感じる「経験」はますます重要になっていくのではないかという気がします。そういう面で、教室の中と外をつなげるという意味での“連携”は重要になっていくのではないでしょうか。



――「机上の学問」はもちろんこれからもあるんでしょうが、ある程度教員が教室でやらなくてよくなる可能性があれば、学生が外に出ていって経験を積む教育を推進したいということですよね。


杉本学長 よく「ChatGPTが書いた文章がおかしい」という指摘を聞きますよね。もちろん「問い方がおかしい」ということもあるのでしょうが、「何だか変だ」という直感や、ロジックとしておかしいという感覚は、いろんな経験をつまないと持てないと思うんです。これからはクリティカルシンキングのような「本当かと疑う」スキルが大事になってくるのではないでしょうか。



――おっしゃるとおりです。直感を働かせられる重要性と、それが危うくなっていることへの危機意識のようなものを先生のご意見に感じました。

次に、学長になられてからの自己評価についてお聞かせいただいてもいいでしょうか。どのような打ち手を講じ、どのように感じておられますか。


杉本学長 自己評価は、なかなか難しいかなということもありますが、まず一つは、御社にもご協力いただいているピア活動ですね。(ピア活動の詳細は過去の記事を参照⇒https://odlabo.wixsite.com/lv-od/post/sj01-02)これは、2022年度に受審した大学基準協会による大学認証評価で本学の長所として認められています。


★大学基準協会のホームページ⇒



――大学基準協会の記事を拝見すると「学生と教職員との協働(教職学協働)で取り組んでおり、これらの活動が学生同士の成長や授業改善の促進につながっている」と評価されていますね。毎年ピアサポーターの育成においては弊社でもお手伝いさせていただいているので、第三者からのこうした評価が得られてうれしいです。


杉本学長 ピアサポーターの活動も、学生にいろんな経験を積んでもらうための場の一つだと思っています。2021年度にも独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「学生支援に関する先進的な取り組みを行う大学への実地調査(令和3年度)」の対象校に選ばれたのですが、先日、再び訪問調査がありました。コロナ前後で本学の取り組みがどう変化したかについて、ピアサポートデスクの学生にもインタビューを受けてもらいました。その結果もJASSOのホームページで紹介されています。


★独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のホームページ⇒



――外部連携についてはいかがですか?


杉本学長 こちらから声をかけたり、声をかけていただいたりと、いくつかの高校と話は進めています。私は学部の意向を前提に、「学び、授業」といったところにつなげていくのが目的ですが、そこは今後の課題です。入学者の確保はどの大学でも至上命題ではあるのですが、その目的に資するためだけの連携だと少々物足りない気はしますね。



――その他にも学長に就任されてから取り組んでおられることや、変えたことなどあればお聞かせください。


杉本学長 本学はずっと学長だけの体制が続いていて、副学長制度ができたのは戸部順一学園長が学長になってからのことでした。私は初代の副学長として2期6年やっていたんですが、副学長は私1人だったので、全部の会議に出席しないといけなくて大変でした。



――学長一人も大変でしょうけど、副学長一人体制も大変だったことでしょう。


杉本学長 そうなんです。それで、私が学長になってからは規則を改正して副学長を3人に増やして、業務を分担してもらうようにしました。



――副学長は杉本先生が任命されたのですか?


杉本学長 そうです。事前に所属学部の学部長にお願いしにいって、了承してもらいました。長く国際センター長をされている方にセンター長との兼任で国際・研究担当を。大学の中でいろいろな役割を経験されている方に入学・社会連携・学長室担当を、専門的な知識をお持ちの方に教学・広報担当をお願いしています。学長室担当というのは、以前はなかったものですが、いわゆる企画の役割です。本学では「学びの森」という生涯教育も大きな任務で、さらに地域、企業、学校との連携も大変なので、それらを担ってもらっています。副学長に分担してもらっているためか、学長になってから出なくてはならない学内の会議は減りました。



――4人の関係性は?


杉本学長 副学長とは原則として毎週1回、学長補佐、大学事務局長、学長室長を交えた連絡会を行い、いろんな問題を話し合っています。大学運営上の課題についてどのように合意形成をはかるか考えながらコミュニケーションをとっています。



――副学長の6年間は間近で学長の仕事を見ておられたと思いますが、実際になってみてどんなことを感じておられますか。


杉本学長 そうですね。幼初中高がある学園の中の学長なので、理事会とか評議会とかそういうところにも学園的な観点で関与しないといけなくて、そこは大変だと感じています。

先ほど学長の決め方が他大学とは違うと申し上げましたが、昔の大学では学部がそれぞれに意思決定をしていって、結果として大学というものが運営されていくという面もあったと思うんですね。でも今は「全学」というものがあって、その中に各学部が位置づけられています。本学も建て付け的にはそうなっていますが、先に説明した学長選考方法からもわかるように、学部の意思決定を踏まえて合意形成されなければ全学的なポリシーが決まらないということもあります。



※肩書・掲載内容は取材当時(2023年10月)のものです。

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株式会社ラーニングバリューでは「自己の探求」や「チームビルディング研修」などの教育プログラムを活用し、学校や授業、クラスなどのコミュニティの活性化支援を行っています。

本サイトでは、大学改革・教育改革の現場を訪問し経営者・教職員・学生など、現場の当事者にお話を伺っていきます。

みなさまのコミュニティの活性化(=組織開発)のヒントになれば幸いです。

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