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入学前教育にピアサポーターによるチームビルディングプログラムを活用【成城大学】連載1-2

更新日:2021年7月13日

成城大学では従来、リメディアル教育としての入学前教育を学部単位で実施しておられました。しかし、コミュニケーションや人間関係の構築に不安を抱える新入生が多い現実を知り、「学び」の前に「コミュニケーション」に着目した入学前教育を行うことになりました。2019年度入学者から、希望者対象の入学前教育(入学準備プログラム)にチームビルディングプログラムを実施。プログラムの実施にあたっては先輩学生が後輩学生の支援する仕組み「ピアサポーター制度」を活用しています。学生の、学生による、学生のためのプログラムはどのような進化を遂げているか?これらの取り組みの中核を担う教育イノベーションセンター長・杉本義行先生に話を聞いてみました。




――プログラムの実施においては先輩学生が新入生のサポートを行う「ピアサポーター」を活用されていますよね。まずは、ピアサポーター制度についてお聞かせください。これはどういう経緯でできた制度なのでしょうか?


杉本先生 学生による「教え合い、学び合い」をしたいという話が持ち上がったのは、教育イノベーションセンターで文科省の「大学教育再生加速プログラム」の補助金申請を行ったときです。それで、先進事例を学ぶために、公立はこだて未来大学に視察に行きました。未来大学ではピア・チュータリングといってアメリカの機関によって認定を受けた国際チューター育成プログラムで学生を育成していて、理工系大学ならではのレポートの書き方や専門科目の学習をサポートする制度ができているんです。その次に、京都の立命館、同志社、龍谷を訪問していろいろと話を聞いて、本学でもぜひやりたいということになってピアサポーター制度を立ち上げました。



――設立時には何人くらいのメンバーが集まったのでしょうか?


杉本先生 サポーター1期生は25人くらいだったと思います。1期生ということで面白がってくれて、やる気のある人が集まってくれました。彼らは入学準備プログラムで活躍してくれただけでなく、「自分たちもめちゃくちゃ苦労したので、後輩を助けるために履修相談にのってあげたい」とその役割を買って出てくれたのです。教務部でもサポートしていますが、これは今も続いていて、毎年ものすごい数の新入生が相談にやってきています。



――組織の設立は大学主導だったかもしれませんが、集まった学生たちは、自らができること・やりたいことを見つけて行動にうつすことができるとは、素晴らしいですね。


そうですね。本学はかなり活発にサポーター活動が行われているのではないでしょうか。そもそも本学には、ピアサポーターに先行してライブラリーサポーター、バリアフリーサポーター、就業力サポーター、国際交流サポーターという存在がいて、すでに活動をしていたんです。本学には理数系教育、情操教養教育、国際教育という3つの柱があるのですが、情操教養教育においては、お互いに助け合うことが大切だと考えており、サポーター活動は重要な取り組みと位置づけられています。2017年にピアサポーターを立ち上げたときには、先行の4団体と併せて5団体で成城サポーターズフォーラムを開催しました。その際には立命館大学などピアサポーター活動に歴史のある他大学の学生さんたちにも来ていただきました。



――弊社が貴学の入学前教育やピアサポーターの活用についての課題を聞くきっかけになったのも、成城サポーターズフォーラムでした。そこで、チームビルディングプログラムの活用をご提案したところ、2019年度入学生から入学準備プログラム(AOや推薦など、早期入試による入学予定者向けの入学前教育)に採用していただけることになりました。2019年2月に初めて実施した際は、弊社のファシリテーターがプログラムの進行役を務めましたが、2年目(2020年度入学生対象)はピアサポーターを中心とする学生ファシリテーターが進行役を務め、3年目(2021年度入学生対象)はプログラムをオンラインで実施するに至りました。こうしたステップを踏んで成長している学生の姿を、杉本先生はどのように感じておられますか?


杉本先生 ファシリテーターを務めるピアサポーターの姿を見て、とても能力が高いと思いましたね。もちろん、いろいろと研修をやっていただいたおかげでもあるのでしょうが、かなり高度なこともやってくれていたというのが驚きでしたね。高校生の満足度も高かったのではないでしょうか。さらに、オンラインでファシリテーションを行うのはとても難易度が高く、職員の方たちのサポートもあったと思いますが、スムーズにできていましたね。それこそ、私自身も昨年初めてオンラインで授業を体験して、ツールを使いこなすのに四苦八苦したのですが、さすがにデジタルネイティブの人たちだなと感心しました。



――オンラインツールを使いこなすだけでなく、大勢の新入生の前でしっかりとファシリテーションされていたように見受けられました。


杉本先生 そうですよね。ファシリテーションスキルはすごく大切だなと感じます。大学の教育の中にもそういう力を高める場をもっと積極的に取り入れる必要はあるのかなと思いますよね。考えてみると、私自身もどういうふうに対話をするかなど習ったこともありませんし、対話と討論と議論と雑談の違いが学生にはわかっているのだろうかと思うこともあります。授業でも学生に「ちょっと話し合ってみてください」といってもなかなかうまくいかないのは私も体験しているんですよね。それがまさにコミュニケーションなのかもしれませんが、入学前教育でもそうですが、もっと初年次教育でしっかり意識してやればいいのではないかと、今さらながら気づかされました。



――私もかつてそうでしたが、対話がうまくいかないときは、「この点について話し合ってみてはどうだろう」とか「テーマが難しかったかな」など、話題やコンテンツに着目しがちですが、実はその前の準備段階で、世間では「アイスブレイク」と言われるような人間関係にちょっと触れてみるような体験をすると変わってくるんです。対話の中でそういうプロセスを設計することが重要なんだろうなと思います。


杉本先生 それも一つの学習環境ですね。人が集まれば対話ができるかといえばまったくそうではなくて、対話や議論の場を上手くデザインすることが大事ですね。学生はそういうスキルを早い段階で学んだほうがいいのではないかという気がしています。



――私もそれに賛成です。そして対話の場をデザインする方法はいろいろあるんでしょうが、私共としてはチームビルディングがとても有効ではないかと考えています。成城大学さんの事例でいえば、学生さんがチームビルディングの場づくりを経験し、学生ファシリテーターとして入学前の高校生に自分たちでそういう場づくりをしてくださいました。

こんな風に、先生だけでなく学生さんも場をデザインする力を身につけることができたら、どんなテーマでも楽しく対話ができるようになるし、学びのレベルもすごく上がるんだろうなと思います。


杉本先生 そうですね。チームビルディングといえば、日本の企業ではタックマンモデルのストーミングまでいけばいいほうで、ノーミングまでいっていない、という話も聞いたことがあります。大学での対話を「いいね、いいね」だけで終わらないようにできたら、すごいなと思います。


タックマンモデル/チームは「形成期(Form=チームが形成される)」「混乱期(Storm=ぶつかりあう)」「統一期(Norm=共通の規範が形成される)」「機能期(Perform=チームとして成果を出す)」という4段階を踏んで成長していくという考え方。



――前回の連載の東京経済大学の加藤みどり先生へのインタビューの際もまさにその話になりました。今の学生さん、いやかつての自分もそうだったかもしれませんが、ストーミングにいくまでに相手との距離を測りかねるんですよね。


杉本先生 そうなんです。忖度とか、波風を立てたくないとかいろんな感情があって、そこを突き破るには、よほど相手との関係性をつくらなければなりませんからね。



――でも、成城大学のピアサポーターは設立3年目にして、オンラインでもそういう場づくりにチャレンジして成功させた実績があるのですから。


杉本先生 そうです、これはすごいことです。



――弊社のチームビルディングプログラムは、通常は対面で行うのですが、コロナ禍でも多くの大学でオンラインで実施させていただき、対面で起きることと似たような体験を再現できる手応えを感じています。


杉本先生 オンラインでもこんなにできるんだ、ということの一方で、やっぱり対面がなければ抜け落ちてしまう部分も感じますね。本学は今年(2021年)4月下旬ごろから基本的にオンライン授業になっていますが、4月前半の2~3週間は対面授業を行うことができました。緊急事態宣言になりそうだということで、できるだけコミュニケーションをとっておこうということで、2週間くらいはそういうことばかりやっていたんです。リアルで会えた今年と、入学してからまったく会えないままオンライン授業に突入してしまった昨年とは、そこが大きな違いです。

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