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在学生の実体験に基づく発案で入学前教育の充実を図る【成城大学】連載4-3

成城大学では、2019年度入学者から、コミュニケーションや人間関係への不安解消を目的として、入学前教育「入学準備プログラム」を実施。入学予定者同士がお互いを知り合うグループワークや、自己理解を深めるための個人ワーク等を行う「大学生活スタートアップセミナー」と、学生生活を紹介するための「在学生企画」の2本立てで行っています。とりわけ、学生ファシリテーターにとっては、自ら発案して企画・運営を担った在学生企画にかける思いはひとしおです。様々な苦労を乗り越えて本番を向かえるまでのプロセスや、実施後の達成感、取り組みを通して得たものについて3人の学生ファシリテーター(4年生Nさん、3年生Sくん、2年生Oさん)に振り返ってもらいました。



(文芸学部文化史学科4年・Nさん(左上)、法学部法律学科3年・Sくん(右上)、社会イノベーション学部政策イノベーション学科2年・Oさん(右下))



――学生ファシリテーター発案で始めた「在学生企画」の話も聞かせてください。大学生活スタートアップセミナーが「新入生同士の交流を深めて、お互いを知り、自分を知る」という目的であるのに対して、在学生企画は「大学と学生生活を知ってもらう」ために企画されたものなんですよね?


Nさん そうです。2020年から学生主体で実施することになったのですが、プログラムだけでは補えない、先輩の声を直に聞く時間の必要性を感じて、運営メンバーから職員さんに相談して、実現にいたりました。



――(初年度は新型コロナウイルスの関係で実施できませんでしたが)具体的にはどんな企画を考えていたんですか?


Nさん キャンパスツアーと、大学生の一日の過ごし方をイメージしてもらうためのパネルセッションや、サイコロやトランプを使ってのエピソードトークをしようと考えていました。


Sくん 僕は部活でオープンキャンパスのキャンパスツアーを企画運営しているので、それをこちらでもやってみるつもりでした。残念ながら、2020年の在学生企画は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になってしまってしまい、残念な気持ちもありました。



――2021年はスタートアップセミナーがオンラインで実施されることになり、その準備と同時並行で在学生企画も進めていったのだと思いますが、どのように進めていったのですか?


Sくん 2月にスタートアップセミナーをA日程・B日程で実施して、その参加者は3月の在学生企画にもセットで参加してもらうことになっていました。内容は、アイスブレイクをして、動画を流しながらキャンパスツアーをやって、クイズをする。そして休憩をはさんで各学部の先輩にどんなキャンパスライフを過ごしているか話してもらって、最後に質問タイムを設ける、というようなものです。だいたい2時間半くらいを予定していました。



――対面とは違ってどんな工夫や配慮を凝らしましたか?


Sくん オンライン開催にあたっては、できるだけその場の雰囲気を感じてもらって、集中力を途切れさせないようにするにはどうしたほうがいいかなど、楽しんでもらうための工夫は考えました。キャンパスツアーのことで言うと、カメラを持ち歩いて中継映像を流すことも考えましたが、回線の切断の恐れもあるので、本番では事前に撮影・編集した動画を流しながらそれに合わせてしゃべることにしました。動画の長さや、クイズを挟むタイミングや回数など、参加者のことをイメージしながら、対面では検討しないようなことまで考えましたね。



――参加者の反応はいかがでしたか?


Sくん 2021年の入学生は新型コロナウイルスの関係でオープンキャンパスを体験できていないので、大学に実際に来ている人が少ないだろうなと思っていたので、何がなんでもキャンパスツアーはやりたかったんです。在学生企画終了後のアンケートでも「入学前に大学に行けなかったので、知ることができてよかった」という声があってうれしかったですね。1年生の学生ファシリテーターも、入学してからオンライン授業ばかりだったせいか、キャンパスのことをあまり知らなかったようで、彼らにとっても大学を知る良い機会になったのかなと思いました。



――高校生にも後輩学生にも好評だったようですね。Nさんは何を担当されたのですか?


Nさん 私は「キャンパスライフ紹介」と、「先輩と話そう」を中心に担当しました。私も昨年のリベンジというわけではないのですが、キャンパスライフ紹介は私が提案した企画だったので、ぜひオンラインで実施したいと思い、企画を検討しました。



――具体的にはどんな内容になったのですか?


Nさん Zoomの入口を文芸・経済・社会イノベーションの学部ごとに分けて、その学部学科特有の過ごし方について理解を深めるための企画です。インターンや留学、部活など、その学部学科ならではのエピソードを語れる人に協力してもらって、ある平日の朝から夜までのスケジュールと休日の過ごし方を帯グラフに落とし込んで、それをパワーポイントで示しながらその場で話してもらいました。私は教職をとっているのですが、1年生の時に一番困ったのは、教職を取るための相談を誰にしていいのかわからなかったことでした。そういった悩みの解消にもつなげたいと思って、この企画を考えついたのです。



――目指す職種に必要な資格取得や経験など、学部学科によって異なることを、その経験者に聞けるのは心強いですよね。その場で質問もできるし、学部ごとにイベントの終了時間も変更できますからね。


Nさん 「オンライン上で高校生から質問を引き出すのは難しい」と東京経済大学の人から聞いていたので、私たちは「ペタリ」というオンラインツールを使うことにしました。誰もが自由に付箋でコメントを記入できるツールで、私たちの学部では黄色の付箋は学校生活、赤の付箋は部活、緑の付箋は学外生活などテーマごとに色分けして、高校生に匿名で質問を記入してもらって、学生ファシリテーターがひたすらそれに答える方法で対応しました。



――質問は結構出たんでしょうか?


Nさん いっぱい集まりました。私は文芸学部チームでしたが、参加者は20人くらいで、質問がいっぱい集まり過ぎて、予定の時間をオーバーし、延長したほどです。それくらい新入生には不安なことがあるんだなと思いました。



――Oさんも新入生からの質問に対応したのですか?


Oさん はい。よく質問されたのはバイトのことと授業のこと。どの授業をとればいいのかわからないという質問には「ピアサポーターが時間割相談会をやっているのでぜひそこで聞いてください」と宣伝できました(笑)。私が入学準備プログラムを受けた時にはこのような企画はなかったので、入学前に学部の先輩にその学部のおすすめの授業情報を聞く機会があったのはよかったのではないでしょうか。



――最後に一人ずつ、今後の学生ファシリテーターとしての活動や、自分のキャリアについての豊富を聞かせてください。


Nさん 私は入学準備プログラムの創設時から携わっていますが、これが5年、10年と成城大学の新入生のためのプログラムとして続いて行けばうれしいです。私は教職課程をとっていて、将来教育系の仕事に就きたいので、キャリア支援や学生イベントなどにすごく興味がありました。自分の進路を決めるうえにおいてもこの経験を糧にして、進路選択に活かしたいです。


Sくん 将来については、ピアサポーターに入ってからいろいろな企画や運営を経験しているので、それが何らかの仕事につながるのかなぁというイメージはあります。ファシリテーションの経験は、ゼミのグループワークや、今年から始めた授業サポートにおけるグループワークの進行や考えを引き出す場面にも活かせています。バイトでも新人さんに初歩的なことを教える立場になり、相手の理解度を確認するための問いかけなどにおいて、ファシリテーションのスキルも役立つのではないかと思っています。

在学中に学生だけで企画を考えて成立させるような機会はそう多くないので、こうした活動は貴重な経験になっています。スタートアップセミナーのファシリテーターにはキャリアサポーター、ピアサポーター以外のサポーターやそれ以外の学生も参加するので、ファシリテーションを教える場面もあるし、反対にそういう経験がない人ならではの着眼点からも気づきを得られます。そういうものも含めて、ぜひいろんな学生さんに経験を通して学んでもらえたらいいなと思います。


Oさん 私もより多くの人に学生ファシリテーターやピアサポーターを経験して欲しいし、意欲のある仲間を増やしたいですね。私自身のことでいえば、ファシリテーションを学んだことで、グループで何かをする時には人のことを注意深く見るようになりました。その人が話したいのか、わかってないのかなどよく見て、コミュニケーションをとるよう心がけています。




※上記で紹介された入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」の様子は成城大学のホームページでもレポートされています。


●2019.02.28大学生活スタートアップセミナー


●2020.02.25大学生活スタートアップセミナー


●2021.03.18大学生活スタートアップセミナー


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年5月)のものです。



 

 成城大学さんの、入学前準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」の変遷を時系列を追って記載してみると以下のようになります。

  • 2019年…「大学生活スタートアップセミナー」の実施開始。在学生は、ピアサポーターを中心に集められ、学生ファシリテーターとして新入生とともにセミナーに参加。グループの一員としてセミナーの活性化に貢献

  • 2020年…学生ファシリテーターがメインファシリテーターとなって進行する「大学生活スタートアップセミナー」へと展開

  • 2021年…「大学生活スタートアップセミナー」をオンラインで学生ファシリテーターが実施。さらに前年できなかった「在学生企画」も、オンライン化してスタート

 こう見てみると、毎年実施方法や実施主体が変化し、新たなチャレンジが進んでいます。そのチャレンジは、「大学生活スタートアップセミナー」の企画主体である、同大学の教育イノベーションセンターが計画されたものではありますが、実際の活動は今回取材した学生さんたちに支えられています。そして毎年、学生さんたちに負うところが大きくなっていっているのです。

 チームが難易度の高く見える課題にチャレンジし、その過程でチームメンバー(=学生さんたち)の主体性が発揮されていく。そしてチームは次の新たな課題を見つけ出し、そこに向かってチャレンジしていく。この変化の過程そのものがチームビルディングらしさの現れではないか、と言う風に感じました。



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