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入学前教育のオンライン実施は、対面と同じ満足度を得られるか?【成城大学】連載4-2


成城大学では、2019年度入学者から、リメディアル目的ではなく、コミュニケーションや人間関係への不安解消を目的とする入学前教育「大学生活スタートアップセミナー」を行っています。グループワーク形式でチームビルディングを取り入れたプログラムを実施するにあたってファシリテーターを務めるのは先輩学生たち。数回の研修を経て、本番に臨む準備をしていたのですが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、新企画であった「在学生企画」が実施できずに終わってしまいました。長引くコロナ禍の影響を受け、2021年度はオンラインで行うことになりました。対面でも難しいファシリテーションをいかにやり遂げたのか?学生主体でどのような工夫を凝らしたのか?学生ファシリテーターを務めた3人の学生(4年生Nさん、3年生Sくん、2年生Oさん)が語ってくれました。



(文芸学部文化史学科4年・Nさん(左上)、法学部法律学科3年・Sくん(右上)、社会イノベーション学部政策イノベーション学科2年・Oさん)



――NさんとSくんは前年に対面で大学生活スタートアップセミナーのファシリテーターの経験がありますが、オンラインでの実施になると聞いてどんなことを考えましたか?


Nさん オンラインなので対面と同じようにはできないとわかっていました。ですから「100%同じにできないことがダメなわけではない、オンラインでも工夫してできる」とポジティブな考え方にシフトして検討を重ねました。実は新型コロナウイルスの影響で、所属していたキャリアサポーターの活動でも、企画が何もかも倒れてしまい、就活前にメインで活動できる3年生という時期をなすすべもなく過ごすことになって、すごくネガティブに考えた時期もあったんです。だからこそ、入学準備プログラムをオンラインでやるとなったからには、それをプラスに考えて成功させたいという思いが強かったです。


Sくん  個人的には昨年度のピアサポーターは、コロナ禍にも関わらず成城大学で一番活動していた団体なのではないかと思っています。ずっと対面で行っていた交流系のイベント もZoomで行い、各種講座もオンラインで開催していました。このように、オンラインのイベントの企画運営については経験もありましたし、入学準備プログラムがオンライン開催になることは状況的にわかっていたので、そこに対して驚きはなく、「じゃあどうやるか」と考えを巡らせていましたね。



――Oさんは、高3の時に入学準備プログラムを体験されていますが、それがオンラインで実施されると聞いて、どう思いましたか?


Oさん できることとできないことがあるだろうなと思いました。一人ひとりに情報カードを配って行う課題はオンラインでは難しいだろうし、その他にもやり方を工夫しないとできないだろうし。自分の体験と比べながらどうなるのかなと不安はありましたね。



――オンラインでの実施に向けた事前研修もオンラインで行われたそうですが、具体的にはどんなことをしたのですか?


Oさん ファシリテーションとは何かを学んだあと、当日やるワークを体験してみました。高校生はどう感じるのか、どこでつまずくのかを考えながら体験しました。


Sくん 行った研修自体は、対面がオンラインになったくらいかなと思いました。ただ、前回と異なっていたのは、自分は前年に一度ファシリテーターを体験していたことと、したことがない人もいたことです。自分にとっては復習の場にもなりましたし、下の学年の様子は研修で見ていこうと思っていました。



――下の学年の人たちに対してSくんが気を配ったことはありましたか?


Sくん 今回は教える立場なんだなと気づいてはいました。「Sくんに手本をやってもらいたいからお願いね」と言われて、研修ではプログラムのデモンストレーションもしましたし、リハーサルでは、リハを聞いて感じたことをアドバイスしました。本番はグループに分かれてそれぞれがワークを担当するんですが、僕はワークを担当せず、やったことない人にファシリテーターとしての経験を積んでもらうようにしました。



――後輩の頑張る姿を見てどんなことを感じましたか?


Sくん 偉そうな言い方になってしまいますが、研修を重ねていくにしたがって、「みんなデキるな」と思いました。研修の各プロセスで成長を感じましたし、リハーサルでも、最初は考えた原稿を読み上げていたのが、最終的には原稿を見ずにアドリブも入れられるようになりました。話し方も早すぎず遅すぎず流暢で、目に見えて成長を感じられたので、本番も安心して任せられました。それも研修の効果かもしれませんが、さすがでした。



――当日はどのように進行したのですか?


Nさん 総合司会を1人立てて、各セクションは担当を決めて行いました。Zoomを使いましたが、セッションごとのグループの振り分けや通信環境の悪い高校生の対応などと、裏方担当も必要で、対面とは違う役割分担も大変でした。私はA日程では全体の総合司会で、グループワークを全体的に見て回ったり、時間管理をしたりしました。B日程は課題解決学習のグループワークやZoomのチャット管理などを担当しました。



――実際やってみてどうでしたか?オンラインでの本番を終えて感じたことを聞かせてください。


Nさん オンラインでは相手の顔を見ていても目の前に存在していないので、コミュニケーションをとりづらそうでした。ファシリテーターにとっても、対面なら、グループワークの様子を把握しやすいですが、Zoomだとブレイクアウトセッションに入ったり出たりを繰り返さなければならず難しかったです。今後はオンラインで何かをやるのが定着する時代になると思うので、今回の経験もきっと活かせるんだろうなとか、難しいけれど向き合わないといけない課題なんだなと考えさせられました。対面よりもコミュニケーションが取りにくいという課題をクリアするために、自分が聞き手の時にはうなずいたり、反応ボタンを押したり、相手が話し終わったら拍手をしたりと、反応を返すよう心がけていました。伝え方については例年よりも頭を使ったなと感じます。


Sくん Zoomならではのアイスブレイクができたり、遠くに住んでいても気軽に参加できたりという利点はあるものの、正直に言えば、入学準備プログラムのオンライン開催ってデメリットのほうが多い気はします。コミュニケーションが取りづらく、その場の雰囲気をつかみにくいので、グループワークを進めるうえでは難しいこともあります。ただ、ワークを担当した他のメンバーからは、「プログラムが進むに従って、参加者同士で話せるようになり、雰囲気が良い」と聞いていたので、オンラインでもちゃんと成立するんだなと思いました。高校ではオンライン授業が行われていたのかどうかわかりませんが、おそらくみんな初めての体験だったのではないでしょうか。結果的に楽しい雰囲気になってもらえたので良かったと思います。


Oさん 自分から話せているグループが多かったので、私は見守っていることが多かったです。うまく話せていないグループもあったので、「○○さんはどう思っているの?」と話しかけると新しい意見が出てきて、「ああ、そんな意見もあるね」と再び会話が活発になることもありました。私が高3で参加した時は、先輩も一緒にワークに加わってくれて、仲良くなるきっかけをもらえたのに、今回はそれができなかったので寂しかったです。



――オンライン実施にあたっては、他大学とお互いのプログラムの実施状況を見学したり、見学されたりといった交流もあったと聞いています。どなたか参加された方にお話を聞かせていただいてもいいでしょうか?


Oさん 見学に行ったのは私です。自分もイベントを企画する側ですので、他大学がどうやっているのか見せてもらうのは勉強になると思って。成城大学でA日程終了後のタイミングで、東京経済大学の入学予定者向けのオンラインイベントに参加させてもらいました。



――他大学の本番でのファシリテーションを見学していかがでしたか?


Oさん 東京経済大学では成城大学とは違って一人のリーダーが一貫してプログラムを進める体制をとっていたので、リーダーの負担が大きそうに見えました。時間が4時間くらいある割には、実施するゲームやプログラムの数は少な目で、一つずつの時間を長めにとっていました。「先輩に聞いてみよう」という時間も30分くらいあって、グループの様子を見学させてもらいましたが、思ったより質問が出てこないとか、質問しづらいのかなという印象も持ちました。でも、時間に余裕があるからこそ関係ない話もできて仲良くなれるグループもあって、それはそれでアリなのかなと思いました。成城大学は結構ギリギリのタイムスケジュールで行っているので、時間を長くとるとゆったりできるのかもしれません。



――タイムスケジュールに余裕をもたせることで雑談が生まれ、仲良くなるチャンスも生まれるかもしれないと思ったということですね。反対に、東京経済大学の人からは成城大学のプログラムに対してどんな感想が出たのでしょうか?


Nさん 東京経済大学からは数名の在学生が本番を見に来てくださって、みなさんが「うちの大学とは毛色が違う」とおっしゃったのが印象に残っています。大学ごとに形式も内容も違っていて、各大学の「色」が出ていて、お互いにどういうことをやっているのか交流できたのは有意義でした。

オンラインでコミュニケーションをとるのは難しいという話題から、リアクションや話し方を工夫してはどうかというフィードバックもいただきました。「オンラインでは早口だったり声が小さかったりすると聞こえないので、大きな声で話した方がいいよね」ということも話しました。


Sくん あとは、ワークが終わってから次のワークに移るまでの間、少し時間が空いて先輩と雑談できる雰囲気になった時には、先輩から話題を提供したほうがいいんじゃないかということも言ってもらいました。


※上記で紹介された入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」の様子は成城大学のホームページでもレポートされています。


●2021.03.18大学生活スタートアップセミナー


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年5月)のものです。

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