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学生ファシリテーター組織はいかにして誕生したのか?【成城大学】連載4-1

成城大学では、新入生アンケートからコミュニケーションや人間関係の構築に不安を抱える新入生が多い事実を発見し、「学び」の前に「コミュニケーション」の重要性に着目。2019年度の入学予定者から、希望者を対象に、チームビルディングを取り入れた入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」を実施しています。プログラムのファシリテーターを務めるのは先輩学生。ピアサポーターを始めとする学生サポート組織に所属する学生が中心となって、事前研修~リハーサルを経て本番を迎えています。ピアサポーターに所属して学生ファシリテーターを務めた3人の学生(4年生Nさん、3年生Sくん、2年生Oさん)に、入学前教育に携わることへの思いやファシリテーションを学び、実践してみた手応えについて話を聞いてみました。



(文芸学部文化史学科4年・Nさん(左上)、法学部法律学科3年・Sくん(右上)、社会イノベーション学部政策イノベーション学科2年・Oさん)



――みなさんが入学準備プログラムの学生ファシリテーターの募集に手を挙げたきっかけを教えてください。


Nさん 入学時に何かのサークルや部活に入りたいと思っていろんな団体を検討したのですが、ノリが合うところがなかなか見つからなくて。私にマッチしたのが、オープンキャンパスで高校生に大学の魅力を伝えたり、キャリア教育授業の広報活動をしたりする「キャリアサポーター」という団体だったんです。1年後期にキャリアサポーターに入学準備プログラムの学生ファシリテーター募集の連絡がきて、面白そうなので友人と応募したのがきっかけです。



――Nさんは学生ファシリテーターの1期生ですよね。活動当初のことで覚えていることはありますか?


Nさん 初めて入学準備プログラムに携わった時は、ファシリテーターというよりも、新入生と一緒にプログラムを受ける立場でした。自分の特徴を知ることができるグラフを作って、他の人と見比べてみたり、それをきっかけにコミュニケーションをとってみたり。高校生と一緒にグループワークの本質を体験できて、「私たちの入学前にもこういうプログラムがあったら良かったのに」と思いました。



――“グループワークの本質”とはどんな意味ですか?


Nさん 相手と向き合い、話して、意見を考えて伝えることが大事だということを学べたという意味です。手元のカードに書かれている情報を一人ひとりが言葉で伝えあうワークがあったのですが、自分の解釈を伝えても、受け取り方は人によって違うのだということを感じました。



――一緒にプログラムを受けた高校生の反応で覚えていることはありますか?


Nさん みんな最初は緊張していましたが、次第に打ち解けて和やかな雰囲気になったと記憶しています。ワークの内容を難しいとか堅苦しいと受け止めていた人もいたようですが、時間が経過するうちに、「難しいけれど、みんなでやっていることが楽しい」と言ってくれたのが印象に残っています。その体験がきっかけになって、入学後にキャリアサポーターに入ってくれた人や、授業が一緒になった時に話しかけてくれて仲良くなった人もたくさんいました。



――ありがとうございました。

次は、Sくん。学生ファシリテーターになったきっかけを教えてください。


Sくん 僕は新入生向けオリエンテーションでチラシをもらってピアサポーターに入ったのがきっかけです。中高時代にインターナショナルバカロレアの教育プログラムで経験したレポート作成やプレゼンテーションのスキルが役立ちそうだと思って参加しました。可能な限りすべての活動に参加して企画運営に携わっていたので、スタートアップセミナーのファシリテーターに応募したのもその延長線上ですね。高校では中学生相手の学校紹介スタッフをしていたし、大学でもオープンキャンパススタッフを務める団体に所属しているので、同じような活動だとイメージしていました。



――なるほど。Oさんはいかがですか?


Oさん 私は推薦入試で合格して、高3の時に入学準備プログラムに参加しました。会場で学生ファシリテーターっぽい動きをしている人に興味を持ち、何の団体に所属しているか尋ねて「ピアサポーター」と教えてもらったことが今の活動につながっています。楽しかった企画にもう一度参加したいという気持ちでピアサポーターに入り、職員さんに誘っていただいて学生ファシリテーターにも参加することになりました。



――入学準備プログラムは自由参加でしたが、Oさんはなぜ参加されたのですか?


Oさん みんな受けるものだと思っていたので、学部で開かれていた入学前の説明会に参加した時に前後の席に座っていたコと日程を相談して参加することにしました。私はB日程を選び、当日教室にいたのは20~30人くらいでした。



――その日体験したことで覚えていることはありますか?


Oさん プログラムは朝から夕方まで長かったということ。それから、Sくんのことも覚えています。教室の前にいてみんなの意見をすぐにパソコンでメモしていたので。「すごい人が大学にはいるんだな」と思いました。その日、会話した先輩のこともよく覚えていて、入学後に声をかけて仲良くなることもできました。

体験した内容について覚えているのは、自分のもっているカードの情報を口頭で教え合うワークです。全員で進めているはずなのに、重要情報が最後に出てきたり、いい感じに進んでいると思ったら一人取り残されていたり。だれかが置いてけぼりになると進まなくなるので、「大丈夫?」とか「わかる?」とか声をかけるようにして。グループでやるときは問いかけが大事だという印象が残りました。



――長い一日が終わった時はどんな気持ちでしたか?


Oさん 大学生の一員になった気分になり、同じ大学に入る仲間を手に入れられてすごく心強かったです。グループは5人で学部はバラバラでしたが、LINE交換して写真を送りあったり、履修登録で連絡をとったりしました。



――NさんとSくんは、Oさんが参加した2020年2月の入学準備プログラムに学生ファシリテーターとして参加されていますよね。それに向けて2回の事前研修が行われたと思いますが、その時に体験したことについて印象に残っていることがあれば聞かせてください。


Nさん 学生ファシリテーター15人くらいが参加して、グループワーク形式でいろんなワークをしました。それぞれが考えていることを共有してみると、みんな意見が違っていて、それをいかにすり合わせて、いかに理解を深めていけばいいかについて考えさせられました。実際のシーンを想定したロールプレイでアドバイスをもらったのですが、「そういう視点でみるとこう見えるのだな」と、いろんな人の視点が自分を磨くためのいい材料になり、自分の良さを引き出す機会になったと思います。



――Sくんはどうですか?


Sくん 入学準備プログラムでは自分たちもグループに参加して高校生をサポートしなければならず、ファシリテーションという明確なスキルが必要なので、それまでに経験したことのあるオープンキャンパススタッフとは違うという認識でした。研修前は、本番で高校生から発言や考えを引き出すには、どのように質問や誘導をしたらいいのだろうと考えていました。高校時代にもグループワークでいろいろな考えを引き出す質問手法を使っていましたが、それも思い出しました。感覚的にやっていたことに「ファシリテーション」という名称がついて納得でき、それを本番で実践したというような印象を持ちました。



――なるほど。これまでの経験と研修での学びが結びついたということですね。では、本番はどうでしたか?うまくいったこと、課題を感じたことはありますか?


Sくん 最初は教室がシーンとしていましたが、プログラムを進めていくうちに高校生たちも積極的に発言できるようになって、わいわいと楽しい雰囲気に変わりました。昼休憩中も気兼ねなく話せていたし、終了後はLINE交換している光景も見られてホッとしました。


Nさん どうすれば高校生にうまく伝わるか、かなり考えてプログラムを組み立てたかいがあって、スムーズに進んだと思います。グループワークのグループは高校生同士でつくってもらったのですが、どうしても動かないグループがあったり、男女比が偏っているグループがあったりして。ファシリテーターとしては全体に目を向けないといけないのに、どうしても気になるグループにばかり目を向けて、視点が狭まってしまったことは、次に活かしたいと思いました。


Sくん 僕はグループに入ることもありましたが、スライドの投影など主に裏方的なポジションを担当しました。誰がいつ何をするかなど、ファシリテーター全員が事前の研修とリハーサルで決めた通りに動けたし、身につけたことも発揮できていたと思います。


Nさん 学生ファシリテーター4~5人で1クラス約50人の高校生を担当したのですが、始まってみると人手が足りず、行き届かないところもあるなと思いました。ですが、実施後のアンケートでは「このプログラムをやって不安がなくなった」「友だちができた」「大学生活が楽しみになった」という声が多くて、やってよかったなと思いました。



※上記で紹介された入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」の様子は成城大学のホームページでもレポートされています。


●2019.02.28大学生活スタートアップセミナー


●2020.02.25大学生活スタートアップセミナー


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年5月)のものです。

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