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大学生活に不安を抱える1年生の駆け込み寺。『240』設立の背景【神戸学院大学】連載3-1

更新日:2022年4月7日


薬学教育に長い歴史と実績を持つ神戸学院大学薬学部では、2017年ごろから教育改革に着手。学部横断的に教育を支援する薬学教育研究推進部門(DEPS 通称:センター)を設立し、初年次教育の見直しやチームビルディングの発想を取り入れた授業開発、担任制の導入など、次々と新たな施策を打ち出しています。その新たな試みの1つが初年次教育を支える学生のよろず相談室、通称『240(ニイヨンゼロ)』の設置です。今回はここで学生の質問・相談に対応している薬学教育研究推進部門 実習助手 Tさん・Nさんにインタビュー。学生の悩みに向き合う中で感じたことや学生支援に対する思いについて話を聞いてみました。



――まずはお二人のことについてお聞かせください。どういうきっかけでこの仕事をすることになったのですか?


Tさん 私は2019年3月まで神戸学院大学薬学部の学生でした。6年間で薬剤師資格を取得して、4月に実習助手として就職しました。



――せっかく資格を取ったのに、どうして助手になる道を選んだんですか?


Tさん 調剤薬局に行こうと思ったんですが、薬剤師免許があれば薬剤師にはいつでもなれるので、他の経験もしておきたくて。私は高校時代は文系だったのに高3の夏に理転したので、受験も入学後も苦労した経験があるんです。それでも留年せずに卒業できたので、自分がどうやって頑張ってきたかを後輩に伝えられたらという思いもありました。



――Nさんは?


Nさん 私はここの卒業生ではありません。化粧品に携わる仕事をしたくて4年制大学の理工学部に進んで化学を専攻しました。事情があって大学院を中退することになったときに、研究室を通じてここの実習助手の話をいただき、2013年から5年間、分子薬学部門の実習助手として働いていました。一旦、退職したのですが、日置先生に声をかけていただき、2019年4月から、もう一度実習助手として働くことになったんです。



――2019年度から薬学教育研究推進部門(DEPS)が設立され、新しい初年次教育が始まるにあたって、お二人はこの教室『240(ニイヨンゼロ)』の担当になられました。主にここで1年生の相談・サポート業務に対応されていると聞いていますが、どんなイメージを持ってこの仕事を始めたのですか?


Nさん 「薬学部の初年次教育が新しくなる。それをセンター(薬学教育研究推進部門(DEPS)の通称)がやっていくんだ」ということだけは聞いていました。新しい挑戦ができるので面白そうだなと思っていました。


Tさん 私は採用されるときに「初年次教育」とは聞いていました。「学生相談に乗ったり勉強の仕方を教えたりしてほしい」とは言われていましたが、何をするのかまったくわかっていませんでした。



――Tさんの学生時代には、初年次教育をサポートしてくれるような部屋はあったんですか?


Tさん あるにはありましたが、本当にどうしていいかわからないときに質問に行くか、呼び出されたときに行く場所だったんです。しかも、実習助手と接するのは実習時間だけで、たくさんケアしてもらったとは感じていませんでした。

でも、『240』は何をするのかまったく決まってない状態からスタートしたので、自分たちでしたいようにできるなと思ったんです。私の頭の中にある「学生と密にコミュニケーションを取れるような場所にしたい」というイメージを野ヶ峯さんには話していました。


Nさん Tさんの考えを受け入れて、その方向で進めていくことにしました。私自身、大学1年のときは成績が良くなかったので、質問したり、勉強の進め方を相談したりできる気軽な部屋があればいいだろうなと思いました。



――初年次教育を変え、センターを設置するなど、一連の改革の背景にある薬学部の課題には気づいていましたか?学生として・助手としてここで過ごしていらしたお二人は、初年次の退学者や留年者の多さ、国家試験合格率の低下といった事象をどんな風に感じていたんでしょうか? また、その課題に対して『240』では何ができそうだと考えていますか?


Tさん 私が1年のときは30人ほど留年・退学していたのですが、そんなものかと思ってしまっていました。薬学に向いていない子はどんどん辞めて、頑張った人だけが生き延びる場所なんだと。

でも、いまは真逆の考えでいます。ふるいにかけて落とすのではなく、見込みがある人はみんな引きあげようとしています。私たちの時も、賢いのに勉強の仕方がわからないことが原因で留年して辞めてしまう人もいて、もったいないなと思うこともありました。いまはそういう学生をケアできているので、今後はかなり良くなっていくのではないでしょうか。


Nさん これまでは留年する学生に対して「学力もやる気も低くてふさぎ込みがちな人、もしくは勉強せずに遊んでいるだけの人」というマイナスのイメージを持っていました。でも、ここで1年生と話すようになって、いろんな子がいて、良くない状態になっている子には理由があるんだなと気づいたんです。ポツポツとしか話せない子でも、ゆっくりと会話してその理由を考えます。成績が良くない人も実は勉強の仕方がわかっていないだけで、コツがつかめたらできるようになるんだなと思うようになりました。



――2018年度入学生から、初年次教育の一環として、入学直後に弊社のチームビルディングプログラム『自己の探求』を導入していただいています。2019年度の実施ではお2人にも学生のグループに入って体験していただきましたが、いかがでしたか?


Tさん 私はこのプログラム自体が面白くて、単純に楽しみながら参加できました。人としゃべるのが好きなので、コミュニケーションとりながら進めていくのが楽しくて。特にグループの人と協力しながら謎解きをする課題解決学習はゲーム感覚で面白かったです。

私はおとなしい学生が多いグループに入っていたので、最初のうちは自分が何かしゃべらないといけないと思って話しかけていたのですが、教員であることもあって、警戒心を持たれたのかあまりしゃべってもらえなくて。だんだん気配を消してフェードアウトしていったら、私の代わりにちゃんとリーダーのような学生が現れてくれました。そういうのはすごく面白いなと思いました。


Nさん 私もグループに入りましたが、介入しすぎずに場を盛り上げるのは難しくて、ファシリテーションの難しさを感じました。私が黙っていても学生がしゃべるようになって来たら、あとは流れにまかせて進めてもらいました。個人的に面白かったのは、プログラムの最初にする「学習スタイル」の実習です。自己分析や心理テストが好きなので、自分を見つめ直す機会にもなるなと思って、楽しんで取り組むことができました。



――あのプログラムのねらいの1つは、学生同士の関係性が変化していくチームビルディングの体験をすることなのですが、その後の学生さんの姿を見て、チームビルディングの効果をどのように感じていますか?


Nさん あのプログラムを面白かったという学生は多くて、それをきっかけに結束が強まったグループもあるようです。前期の実習班は、チームビルディングプログラムで作ったグループを元にして組んだので結構まとまっていましたね。後期はそのグループをバラして別の人とグループを組んでもらうようにしたら、一部悲しんでいる班もありました。


Tさん チームビルディングプログラムをきっかけに友達ができたという声は聞きました。全員がどこかのグループに入ることになるので、自分からは友達がつくれないような学生でも輪に入れていていいのかなと思いました。あと2日間で色々なグループワークを体験することで、友達と協力し合うことに慣れますよね。私は学生時代にみんなで話し合って勉強する機会が少なかったのですが、いまの1年生は授業でも進んで輪になってグループワークする姿が見られるのですごくいいなと思います。



――授業の場だけでなく、友達と集まって自習をしたり教え合ったりする姿も見受けられますよね。


Tさん 薬学部棟1階のエントランスにはテーブルがいくつかあるのですが、みんなで輪になって教え合っていますよね。私の学生の頃よりもそういう学生が増えている印象があります。1年のうちはそんなに友達の輪も広がっていませんでしたし。今はみんなで集まって、大きなグループを作って教え合っているのでいいなと思いながら見ています。




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