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新入生の仲間づくりを先輩SAがファシリテーション【神戸学院大学】連載4-1

更新日:2020年6月10日

神戸学院大学薬学部では教育改革の一環として、2018年度から入学直後の新入生にチームビルディングプログラム(自己の探求)を実施。さらに、担任制の導入できめ細やかなフォローを行い、孤立する学生の出現を防ぐ取り組みが、学ぶ意欲の向上や留年・退学の抑制につながることに手応えを感じ始めています。仲間づくりをさらに発展させるべく、SA(Student Assistant)を活用した、「先輩・後輩のタテのつながりづくり」にも取り組んでいます。2019年度入学生のチームビルディングプログラムでSAを務めた2年生のYくん(写真右)と、学生Mさん(写真左)に、大学における仲間づくりの意味や、SAとして感じたことについて話を聞いてみました。




――まずは、お2人のことをお聞きしたいと思います。神戸学院大学薬学部への入学動機を聞かせてもらってもいいですか。


Mさん 「手に職をつけて働ける」という、親から刷りこまれたイメージもあったのかもしれませんが、子どもの頃からなんとなく薬剤師になりたいと思っていました。薬剤師になって医療の世界に入ると医者・看護師としか知り合えませんが、私はいろんな考えの人と出会いたいと思って総合大学の薬学部を志望したんです。総合大学の薬学部だったことが、神戸学院大学を選んだ理由です。


Yくん 僕は中学生ごろから医学部を目指して勉強を続けていましたが、高校に入ってからは医療関係と広い視野で大学選びを考えるようになりました。将来は医療関係の職につきたいというところからこの学部・大学を選びました。



――みなさんの学年では、仲間づくりを促すために入学直後に2日間のチームビルディングプログラム自己の探求を体験していただきましたが、いかがでしたか?


Mさん 私は同じグループになったコがいまも一番仲のいい友達です。同じサークルに入っていますし、ボランティアにも一緒にしていて、いつも一緒にいます。


Yくん 僕のグループには元気な人がいたおかげで早めに場が和みました。2日目は自分のグループの人とだけでなく、他のグループにも関わりにいって、名札を見て話しかけたりしていろいろな人と仲良くなれました。



――そのときのグループが2つ集まって担任の先生がつく担任制も導入されていますが、大学での担任制はいかがですか?


Mさん 私の担任は初年次教育担当の先生なので、勉強のことをいろいろと教えてくれます。困っていると、この本を読んだらいいよとか、この先生のところに話を聞きにいってみなさいなどアドバイスをくれるので、勉強に困っている人は助かっていると思います。


Yくん 僕の担任は、本来は上級生の授業担当の先生なので、たまに担任懇談会で集まって、「成績どうですか」と面談で聞かれるくらいかなぁ。指導にもそれぞれの先生の個性がでていますよね。



――2019年度入学生の入学後のチームビルディングプログラムでは、お二人はSAとしてサポートにつきましたが、お二人がSAに誘われたのはいつごろ?


Mさん 1年の12月ごろに、1年生全員にSA募集の告知メールが届きました。私はそれを見て自主的に参加することにしました。


Yくん 「1年生を助けるメンバーがほしいので君たちに協力してほしい。話し合いするのでお弁当は出す。ヨロシク」という感じのメールです。僕はメールが届く前に、日置先生から参加するようにと言われていて。1月に説明会があって、3月にSA育成研修を受けました。



――3月の研修や自分たちが1年生のときに体験したことをふまえて、SAとしてどんなことができたと思いますか?


Mさん 自分たちが1年生だったときは、最初にグループをつくるのに時間がかかったんです。それで、後輩がグループをつくるときに、サポートしにいくか、待つかは考えましたね。彼らも私たちのときと同じで、全然グループづくりが進まなくて、大きな円を作ってお互いに様子を見ている状態になっていて。動き出すまで待っていたけど、動かない。それで、私は1年生のふりをして周りの人に声をかけ、人が動くように場をかき混ぜたのが役に立ったのかもしれないなとは思います。


Yくん 僕は周りの人をあおりながら、かき回し続けた感じですね。ルールでは、自分とは違う特徴をもつ人とグループをつくることになっていましたが、自分たちの代がチームビルディングをしたときは、手っ取り早く近くにいるコでグループをつくってしまったばかりに、後々メンバー間の溝が開いてしまうようなこともあったようです。1年生には自分とは違う特徴や考え方をもつ人とグループを組んでもらえるように、「自分とは違う人とグループを組もう」といって、仲がいい人をなんとか離してグループをつくってもらうようにしました。



――2人の話を聞いていると、自分たちの1年生のときの経験で「いろんな人に声をかけてグループつくるほうが、時間はかかるけれど結果的にいいグループができると感じた」ということでしょうか?


Mさん 私たちのときはグループをつくるときにも実質話したのは5人くらいで、全員とは話せてないんです。だから、1年生に対しては、一度グループができた人たちにも「本当にそれでいいの?」といって、何回も考え直してもらいました。



――どうしてそこまでグループづくりのプロセスを大切にしたんでしょうね?


Mさん グループをつくるときに、先生に説明された「いろんな特徴をもつ人とグループをつくると欠点を補いあえる関係になれます」というのが原点です。私たちのときは、積極的なコのグループが最初にできて、余り物のコのグループできる。それってどうなんだろうと思ったんです。結果的に、私は自分がいたグループでも良かったけれど、欠点は補いきれてないかもしれないし。このままでは私たちの二の舞になってしまうと思って介入しました。


Yくん その気持ちはわかる。(積極的な人のグループとそれ以外の)グループ間の温度差ができるよね。動かなかった結果が僕たちの代の人間関係を作ったとも思っています。だから、あえて自分が人を動かして、着火剤になったつもりです。でも、プログラムが終わってSAで反省会やったときに、「僕たちが動かなければ動かないなりの結果があったのではないか」という声も出ましたけどね。



――自分と違う人とグループをつくることを尊重する理由や、余りものになった人がグループになってモチベーションに影響しないように配慮したことは理解できました。グループづくり以外で印象に残っていることはありますか?


Yくん グループによっては、初日から後輩に場の進行を任せているところもありましたが、自分はSAの役割があるので、迷わず仕切る、でしゃばりにいくようにしました。僕は初日は1年生をリードし、2日目は傍観していたのですが、そうすると次第に自分たちで話し合ってプログラムを進めてくれるようになりました。


Mさん 私も初日は自分が中心となって引っ張ったけど、2日目は1年生だけで進めてもらいました。どうしても私がいると、私の出した意見に寄せてくるようになりがちなので、こちらからは意見を言わないようにして。困っても間違っても、「自分たちで決めた」という達成感は生まれたのではないかと思います。



――チームビルディングプログラム以降は、SAとしての活動は何かしたのですか?


Yくん 日置先生から声をかけられて、1年向けの化学の勉強会でサポートをしたことはあります。そのケースを聞いた別の先生からもSAを使いたいといわれたことはありますが、僕たちも実験やテストがあるので、必ず参加できるわけではないんです。チームビルディングプログラムのSAは手伝ってもいいが、自分の勉強が忙しいので後輩の勉強までは教える時間がないという人もいます。


今年の1年は僕たちSAの姿を見ているので、すでに30人くらい集まっているようですね。SAになるかどうか考えている1年生から活動について聞かれることもありますが、「1人で教えるのが不安なら、友達を連れてこい」と言っています。人数が多ければ僕らの補強になるし。いまはSAが少ないときは1人で12人を教えることになって大変ですが、SAが増えたらもっと手厚く教えられるようになると思います。



――どうすればもっとSAをやりたいという人が増えて、組織として充実していくと思いますか?


Yくん 給料がでるのでそれ目当てでやってくる人はいますが、SAをやるメリットが明確ではないんです。先輩がいれば過去問をもらえるのはメリットになるんですが、いまはまだ後輩と関わるメリットを見出せていません。「履歴書に書ける経験になる」といわれたこともありますが、他のボランティアとの違いをアピールできるかといえばまだまだ甘いですし。学内でSAの存在を知らない人もいるので、確固たる地位を築けて、サークルのように気軽に顔を出せる組織になればといいのですが。人に勉強を教えるにしても、オールマイティーにできる人は少なくて、科目による得意不得意はあるので、SAが100人いれば、必要に応じてサポートできる体制がとれるようになると思います。



――MさんはSAを組織化していくことについてどう感じますか?


Mさん Yくんみたいに先生から声を掛けてもらえる人は参加できるだろうけど、私はそうではないので。そもそもSA間のつながりが薄いので、そこが濃くなれば、SAで思いついたこともできるし、勉強会のサポートをするときも「この日はだめだけど別の日ならできるかも」ということになるかもしれません。今はまだ「友達とSAになったけど、友達が行かないなら自分も行かない」という状態かもしれませんね。



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