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国家試験合格率アップの秘策は全学年でのチームビルディング【神戸学院大学】連載3-3

更新日:2022年4月7日

神戸学院大学薬学部では1年生の学習・学生生活をサポートする拠点として『240(ニイヨンゼロ)』を設置。薬学教育研究推進部門(DEPS)実習助手 Tさん・Nさんの2人が対応にあたっています。成績や対人スキルに不安を抱える学生をきめ細やかにフォローすることで、ドロップアウトしそうな学生を未然に防ぐ取り組みは奏功し、2019年度入学生の退学者はゼロに(2019年11月時点)。その先に目指す目標は、国家試験合格率の向上です。カギとなるのは「先輩と後輩が勉強を教え合ったり情報共有したりする仕組みづくり」だと2人は強調します。先輩と後輩のチームビルディングが国家試験合格率アップにつながるのはなぜか?どのようにそれを実現しようとしているのか、聞いてみました。



――今後の取り組みについて考えていることをお聞かせください。


Nさん 私たちが、というよりも、もっとSA(Student Assistant)さんに活躍してほしいですね。先輩と後輩のつながりをつくるためにも、学生同士でのグループワークや教え合いを積極的にしてほしいと思っています。質問対応をするときにここ(240)を使うのもいいけれど、SAのための部屋もあればいいですね。



――いまはSAはいて、活動しているんですか?


Nさん SAは2年生以上にいるのですが、残念ながらまだあまり活用できていないですね。今はSAさんが自主的に動くというのはなくて、先生が演習の手伝いをしてほしいと要請したときに動いてもらうだけです。今年度も前期に1回、演習の手伝いをしてもらったくらいです。SAさんが主体的に動ける環境を提供するのはこちらの仕事なので、今後はそれも考えるつもりです。



――今は2020年度入学生のチームビルディングプログラムをサポートするSAをスカウト中なんですよね?


Tさん 手伝ってくれそうな1年生に「やってみない?」と声をかけると、結構「やりたい!」と言ってくれて、友達も連れて集まってくれたので、すでに30人くらい集まっています。上級生には日置先生が声をかけてくださっているので、最終的に50人くらいのSAが集まるのではないかと思います。



――いまの1年生が2年に進級したらSAとして新入生をフォローしてくれるだろう、ということですね。


Nさん 「私たちも先輩に教えてもらったので、後輩に教えてあげよう」というサイクルができることに期待しています。今、SAをやってもいいと手を挙げてくれている人は、おそらくSAの先輩によくしてもらったのではないかと思います。だから私もやってみようと思ってくれているんでしょう。


Tさん 「SAって何をするんですか」と聞かれて、「新入生のチームビルディングプログラムに参加したり、演習で授業のサポートをする役割だよ」というと「先輩がやっていたあれですか。それならやりたいです」と言ってくれる人がいるので。今後もこのサイクルを続けていけば、やりたい人も増えてくるのかなと思います。



――SAを組織として機能させるためには何が必要だと思いますか?


Nさん 私はSAの溜まり場になるような「場所」の提供は必要だと思っています。もう1つは「時間」。2年生以上は案外、時間割に余裕がないので、SAとして活動できる時間を与えてあげないといけないのかなと思います。あとは、見返り、かな。「SAやったら何かあるんですか」と見返りを求めるコもいるんです。だから、SAをするメリットも必要かもしれません。例えば、自習場所に困っている学生は割といるので、「SAの部屋を作るのでそこで自習してもいいよ」とか。そういうのはメリットになるかもしれませんね。


Tさん 確かに、自分の学生時代にSAがあったとして、どんな基準で「やる」と選ぶか考えると、やっぱりメリットがないと動かないかもしれません。上級生は勉強が忙しいので、勉強できる部屋は欲しいと思うはずです。同じ学年のSA同士で教え合えるし、先輩もいれば自分も教えてもらえるし。SAの先輩・後輩が集まるそういう部屋があったらいいだろうと思いますね。

薬学生ってみんな、勉強する環境や先輩から情報をもらうことを大事にしているんです。テストの過去問が欲しくて、そのためだけにサークルに入る人もいます。だからSA間で情報をストックして、みんなに共有できる環境が整えば、参加してくれる人が増えるのではないでしょうか。


Nさん メリットもこちらの言い方次第ですよね。「後輩に教えることで復習になるよ」と言うと「やってみようかな」という人もいますし。「これをやれば就活の役に立ちますか」と聞かれたときには「これは薬学部の新しい試みなので、自分が切り拓いて取り組んだ、といえばアピールになるんじゃないかな」と言えば、「やってみようかな」と言ってくれる人もいます。



――「メリットや見返りを求める」というと、ちょっといやらしい気もしますが、「自分のためになる」ということが明確にわかれば、活動の動機づけになりますよね。


Tさん 始まりはどうであれ、薬学生は真面目なコが多いので、活動が始まれば真面目にやってくれると思うんです。メリットがあるということもですが、自分のためになるならきっとやってくれます。これから春にかけてSA育成のための研修も行われますが、私たちがスカウトしたいいメンバーが揃っているので楽しみです。



――SAが組織化されることへの期待も大きいということですね。


Tさん SA教育は、これからの薬学部を変える重要な意味があると考えています。これまでは理由がわからないまま辞めていく学生がいたり、周りに頼れる人がいなくて情報が得られずに悩む学生がいたりしました。そういう人を減らすために、学生が集まって情報を共有することが大事だと思っています。その中でSAは重要な存在になるはずなので、どんどん大きな組織になってほしいと期待しています。



――難関国家試験の突破に向けて、これまでは個々の頑張りに委ねられてきたことを、先輩が後輩に教える仕組みをつくってチームで取り組む体制に変えようとしているように見えます。今後、神戸学院大学の薬学部はどんな風に変化していくのでしょうか。


Tさん 私の学生時代は、みんな個人技で勉強をしていて留年も多く、学内でも不穏な空気が流れていました。国家資格合格率も、私が入学してからの6年間、ずっと落ち続けていて、自分の大学が悪い方向に進んでいくのが悲しかったです。この低迷した時期に入ってきた学生の中には、正直なところ、ここに来たことを良いと思っていない人もいるかもしれません。でも、これからみんなでこの大学を良い方向に変えて、「神戸学院大学の薬学部で良かった」と思えるようにしていきたいです。私たちの時代は、こんなにみんなで何かに取り組んだことはなかったので、このままいけば必ず良くなると信じています。


Nさん 先輩が後輩に教えるSAのサイクルができることで、1~6年生が「みんなで頑張ろう」という雰囲気が生まれるはずです。今の1年生が6年生になったときに、「今年の1年生は何を勉強しているんだろう」と気にかけてくれるようになったらいいなと思います。


Tさん みんな個々のポテンシャルは高いのに、今までの教育の仕方だけだとそれを引き出せてなくて、その人の能力に気づかないまま大学を辞めさせていることもあったんだと思います。いまは個々をよく見ているから、良いところを引き出してそれを最大限に上げられると思うんです。



――事実、今年の1年生は、今までなら辞めていたようなタイプの学生もドロップアウトすることなく、まだ退学者も出ていませんしね。


Tさん いままでは成績が良くないと留年させられていたので、同じ学年の中でもライバル意識がありました。いまは留年が減ってきたことで、お互いを敵でなく仲間だと思って協力できるようになってきています。


Nさん 「うちらだけが過去問を持っている」とか(笑)


Tさん そう!本当に意地悪なコだと持っているのに持ってないといって、テスト前に仲が悪くなったりしていましたからね(苦笑)。SAを起点にみんなで有益な情報を共有して、すべての学年が協力して成長してほしいと思います。



――神戸学院大学の国家試験合格率を上げるには、それしかないですよね。


Tさん そうなんですよ。薬剤師国家試験は、大学全体が合格ラインを超えれば、みんなが受かるんです。だから学生には、みんなで伸ばしあうことを考えてほしいなと思います。



 

 今回の神戸学院大学薬学部のインタビューで、最も印象的だったのはこの若いお二人の助手の先生方の活躍です。自分たちの部屋(240)を与えられるや、その意味付けを自分たちで考え、活動内容を検討し、自ら学生の中に入って行き、学生の関係性を把握し、気になる学生を見つけてはフォローし、学生からも相談を持ち掛けられる存在となり、いつのまにか頼りになるお姉さんのような存在となっていて…。それらの成果を半年と経たずに実現し、次のステップ(SAの育成)へと視線は向いている。本当に伸び伸びと活躍されていらっしゃるなぁ、と感じました。

 また「240」での活動を通して、お二人の学生さんを見る目が変わったというお話しも印象的でした。やる気のない学生が居るのではなくて、今やる気をなくしている原因があるだけなんだ、と言うこと。この視座の変化はファシリテーションに通ずると思いました。

 そしてそれもこれも、薬学教育研究推進部門(DEPS)長の佐々木先生が、部門方針の方向付けをされ、メンバーにその役割や目的を共有されたこと、一方で具体的な仕事はお任せになったこと、また活動の要所要所を日置先生をはじめとしたDEPSの先生方が見守り、支援されていらっしゃること、などなど、DEPSがチームとして機能している結果なんだろうと思いました。チームワークが機能しているチームのメンバーが、目標を見出し主体的になった時のエネルギーのすごさを、アリアリと見せて頂いたように感じました。

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