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特別編:「組織が活きるチームビルディング」を読む 連載2/5

更新日:2023年4月18日


 北森先生が書かれた「組織が活きるチームビルディング(東洋経済新報社2008)」の第1章は、「チームを支えるコミュニケーション」となっている。

やはりチームの基本はどのようなコミュニケーションがとられているかと言うことなのであろう。今回はコミュニケーションについて考えていきたい。



第1章 チームを支えるコミュニケーション


「チームビルディングを進めるうえで、まずはじめに思い浮かぶのは、対人間のコミュニケーションです。チームのメンバー間のコミュニケーションのよし悪しは、チームの力を倍増させたりも、逆に大きくそいだりもするからです。

 本章では、チーム内に好循環を生み出すようなコミュニケーションとはどのようなものかについて、考えていきたいと思います」(第1章の扉より)



コミュニケーション力とは


 我々はよく、コミュニケーション力が高いとか、コミュニケーション力を身につけるなどの表現を使ったり、或いは見たり聞いたりすることがある。ではそれは、具体的にはどんな力なのだろうか。


 私は長らく、まずは話す力、伝える力だと考えていた。ところが北森先生の残された資料の1つ「コミュニケーションの力を発揮するために」には、以下の順で書かれている。

  1. よい聴き手であること

  2. 自分の考えていること、アイディアなどをはっきりと表現すること

  3. 感情を効果的に取り扱うこと

  4. 自分のことを打ち明けること

  5. しっかりした自己概念を持っていること

そう。「表現すること」よりも先に「聴くこと」が来ているのである。これにはとても驚いた。と同時に、少し恥ずかしくなったことを覚えている。自分は人の話を聴くことの大切さを、考えたこともなかったのか、と。



「聞く」と「聴く」


 「組織が活きるチームビルディング」の中でも「聴く」ことの大切さが書かれている。そしてそれは「聞く」ではなく「聴く」なのである。


 「聴く」には心という字が入っている。「耳で聞くではなく、心で聴く」ことの大切さを先生は良く仰っていた。忙しいとき、他に気を取られているときなどは、ついつい話を聞く態度で聞いてしまう。しかしそれでは話し手が本当に伝えたいことを聴き逃してしまうかもしれない。


 また先生の残された別の資料にはこう記されている。


「きく」には、「聞く」と「聴く」とがあり、それぞれの意味、内容は質的に異なります。「聞く」は音が自動的に聞こえてくることで、それに対して「聴く」はきく者がエネルギーを費やして理解しようという意志を持って聴くことです。


「聴く」にはエネルギーが必要なのである。



「聴く」ことの積極性


 「組織が活きるチームビルディング」には、聴くことの積極性についても書かれている。聴くと言うと、どうしても受け身なイメージになりがちかと思うが、聴くと言う行為には、相手の存在を認める(ストロークする※)という、とても積極的でポジティブな力が宿っている。組織や集団が成長していく過程で、互いが互いを理解すること、聴き合うことの大切さを、北森先生は訴えておられるのだと思う。



コンセンサス

 

 少し話が変わるが、自己の探求の中に「コンセンサスを求めて」という実習がある。この実習には色々な題材があるが、よく知られているものでは例えば「月で遭難したときどうするか」と言うものがある。授業などで使っておられる読者もいらっしゃることと思う。我々のところにも「今、○○を使っているのですが、もっといいコンテンツはないでしょうか」というような相談をよくいただく。もちろんコンテンツはたくさんあるのだが、果たして「もっといい題材」と思われたのは、今使っておられるコンテンツの問題だったのであろうか。学生が「コンテンツ」に今ひとつ興味が持てなかった(ように見えた)ことが、今感じておられることの原因なのであろうか。



「話し合い」→「聴き合い」へ


 実習「コンセンサスを求めて」の解説の中で北森先生は、『「話し合い」ではなく「聴き合い」が出来るようになると、自然と答えが流れ出てくる』と仰っていた。そんな体験はなかなか出来ないかも知れないが、でも適当な妥協ではなく、本当のコンセンサスを体験した学生さん達が、とてもいい顔になるのをよく見る。たとえ妥当解と違っていてもである。そう。聴き合いが出来た時、集団は大きく成長するのだと思う。そのためには「コンテンツ」はもちろん大切であるが、それ以上に「聴き合い」が出来るような状態にグループがなっているのか、がより重要では無いかと思う。つまりはファシリテーターが学生の様子を良く観、良く聴き、その状態に合わせてコンテンツを活用することが大事では無いかと思う。

いかがでしょうか。皆さんは聴けていらっしゃいますか。



(補足)※ストロークについて


 「ストローク」とは交流分析(Transactional Analysis)の基本概念の1つである。日本語には訳しにくい言葉であるが、しいて訳すとすれば、「相手に働きかける」ということになるだろう。「目くばせ」したり、挨拶したり、話しかけたりすることは、すべてストロークになる。言いかえると、その人を無視しないこと、その人の存在そのものを認めることを、ストロークと言う。

 そして、ストロークにはポジティブな(肯定的な)ストロークとネガティブな(否定的な)ストロークがある。たとえば、ほめる、感謝する、贈り物をする、などはポジティブなストロークで、けなす、ひにくを言う、にらむ、などはネガティブなストロークである。


 「組織が活きるチームビルディング」の中で北森先生は、『私は最大のポジティブなストロークは、相手の話をよく「聴く」ことではないかと思うのです』と書かれている。



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