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連載開始5周年特別企画『組織を見つめるトップの視座』学校法人 玉田学園 理事長インタビュー(中編)

更新日:4月9日

神戸常盤大学(神戸市長田区)などを運営する学校法人 玉田学園 理事長 中村忠司さんへのインタビュー前編では、生え抜き職員だった中村さんが理事長に就任した背景や、法人本部長などを歴任してきた経験に基づく組織を率いる勘所についてざっくばらんにお話いただきました。中編では20~30年後を見据えた大学のブランディングの方向性や構想中に第二次イノベーションの概要についてお聞かせいただきました。


※中村理事長が法人本部長時代のインタビュー記事(2019年6月公開、3話連載)はこちらからご覧いただけます⇒https://odlabo.wixsite.com/lv-od/post/kt1-1





――理事長に就任された時、学内の人にはどんなメッセージを発信されたのでしょうか?


中村理事長 4月1日の所信表明演説では、結構厳しいことを言わせてもらいました。その時は、「卒業証書」について話をしました。本学の学生は『神戸常盤大学』に何を求めて入学してきたのだろう、ということです。これは、微妙な例えかもしれませんが、某有名国立大学の医療検査系の学部では、国家試験合格率は5割程度であるにもかかわらず、学生たちはその大学の卒業証書があれば満足だとか。ですが、私立大学である本学の学生たちが要求することは、学部教育の4年間で資格をとることで、最低でも国家試験に合格することです。卒業証書だけもらっても満足はしないだろう、と。まずは教員にはそこに力を入れてほしいと言いました。それからもう一つ、テーラーメイドエデュケーションについて。これは前学長時代に私がいい出したことなんですが、教員が学生一人ひとりをよく見て教育をしてほしいということです。どの組織や集団でも、「優秀な2割」、「平均的な6割」、「貢献度の低い2割」、で構成される「262の法則」があるといわれています。上位2割はもともと優秀な学生ですから、平均的な6割の学生をいかに上位に伸ばせるか、貢献度の低い2割をいかに中位に伸ばせるかが、教育にかかっているということです。現実的な話をすれば、いろんな入試形態のもと学生が集まっているので、国家試験の学習に四苦八苦の学生も存在します。262で構成される学生の能力を見極められる、本来の教育力がなければ、本学では教員としての役割が務まらないんです。



――「本来の教育力」について、もう少し噛み砕いて説明していただけますか?


中村理事長 私が考える教員と学生の関係は、サッカーに例えることができます。教員がミッドフィルダーになって、いいセンタリングをしてゴールチャンスを生み出し、学生がゴールを決める…。その際、教員にはその学生をよく見て、その学生に合ったセンタリングを上げる力が求められるでしょう。まさしくそれが教育力であり、本来大学教員に備わっているべき能力だと思っています。



――なるほど、先生方には一人ひとりに合う指導や必要な教育をしっかり見極めることも期待しているということですね。その教育力こそが、「『ときわ』流」であり、ひいてはブランドの醸成につながるということなんですね。『ときわ』を特徴づける教育といえば、弊社でも協力させていただいている全学共通初年次教育《まなぶる▶ときわびと》ではないでしょうか(詳細は前回の連載を参照⇒https://odlabo.wixsite.com/lv-od/post/kt1-2)。


中村理事長 まさしく、これは本学ならではの取り組みで、若手教員たちが《まなぶる》を担当するのは、何よりのFDになっていると思います。一方、熟練教員たちには、学長を中心に教学マネジメントを推進してもらっています。

本学ならではの取り組みのもう一つに、IPW(=interprofessional work/医療における多職種協働、保健(行政)・医療・福祉の複数領域の専門職者による協働)を想定した教育があります。『ときわ』の学生たちには、『学歴』に終わるのではなく、『学習歴』を大事にしてほしいと思っています。そこで、フラッグを学部教育の終わる4年後ではなく、6年後くらいに立ててはどうかと考えています。社会に出てからも、大学から卒業生にさまざまなサポートを提供し、『学習歴』の更新をしていく。一方で、卒業生には後輩学生の『学習歴』充実のために、学生時代や臨床での経験談を語るなど支援を行ってもらうとか…。本学には大学院や研究科がない分、こうしたサイクルを確立していくことで、本学ならではの優位性が生まれるのではないかと考えています



――4年間の「学歴」でなく、卒業後2年目までのサポートを含めた6年間の「学習歴」で差別化を図るわけですね。しかも、卒業後の2年間は、大学からサポートも得られるが、一方で自分の経験を学びにフィードバックできる。サポートとフィードバックのサイクルで大学・卒業生の双方にメリットがありそうです。


中村理事長 第一次イノベーションは、法人本部長として取り組んだ2017年の基盤教育改革でした。今考えるべきは、学習面だけでない総体的な学生支援についてです。第二次イノベーションでは、医療系の学部と大学との連携による、新たな実習施設の開拓なども含めた就職改革のようなことを考えています。現状では、看護学科、医療検査学科、診療放射線学科、口腔保健学科のいずれの学科の卒業生も満足に就職できていますが、「今が大丈夫だからこの先も大丈夫なんてことは言えない」と、この業界に何年もいればわかることです。時代はあっという間に変わっていきますから、先のことを見据えた取り組みが必要で、今のうちから何をすべきか考えておきたいと思います。詳しい内容は、2024年度に入ってすぐ、私と学長から発表する準備をしているところです。



――基盤教育改革、就職改革で、入学から卒業まで一貫して学生を支援する体制が完成するわけですね。それによって実現したいことは?


中村理事長 ブランド力を上げることですね。非常に抽象的ですが、「ときわ」ブランドをどこまで高めていくかですね。



――ブランド力とは一体どのようなものだとお考えですか?


中村理事長 教員との会話で、「うちはブランド力が弱い」と言われたことがあるのですが、「ではどうすればいいのか?」と聞いてもなかなか答えが出ないんです。私は、ブランド力というのは、学生という人的リソースによるものではないか、特に、卒業生の活躍がブランド力にもっとも大きく影響すると思うんです。社会で活躍する卒業生の多さ、つまり社会に対する影響力が、ブランド力の高さに関係しているのではないでしょうか。

本学は小さな短期大学から出発して、今は医療系4学科と保育・幼児教育を含む教育系1学科の構成です。では、これらの分野におけるブランド力をどう可視化するかという時に、私は一般的にいわれる「国家試験の合格率」とはあまり言いたくないんです。なぜなら、それは社会に出る前の問題なので。できうる限り卒業生に医療や教育の分野に進んでもらって、「『ときわ』の人は違うね」といわれる人材になってほしい。本学は、そう社会で評価される専門職の養成をしなければならない。受験生が減る2040年、2050年に向かって、その時代にも生き残ろうとするならば、ブランド力を高めるための独自のプランを立て、組織全体をチームビルドしていかなければ、生き残り競争の激戦期を乗り越えることは無理だろう、そう思っています。



――20~30年後にも医療や教育の専門職を目指すなら『ときわ』、と選ばれるブランドになるために、何か構想しておられることはありますか?


中村理事長 ちょうど中長期計画を立てなければならない時期を迎えています。医療と教育を標榜する大学であるからには、医療系の学科を新たに加えることも検討していかなければならないだろうと思います。また、看護学科を看護学部に転換することも検討しています。これまでの枠にとらわれず、ゼロベースから『ときわ』ブランド戦略を練っているところです。



――今日お聞きしたお話の中には、どの大学でも通用することもあれば、神戸常盤大学ならではの部分もあり、中村さんと話していると、自分の大学を徹底的に理解して進んでいるなと感じます。


※肩書・掲載内容は取材当時(2023年10月)のものです。


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