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【神戸常盤大学】連載1-1/「医療と教育の大学」として生きるための大学改革

更新日:2020年4月28日

兵庫県神戸市長田区にある神戸常盤大学は、保健科学部、教育学部と短期大学部を擁し、少人数教育をモットーに医療と教育の専門職業人を養成している大学です。2014年に教育イノベーション機構を設置し、教学改革に着手。専門職業人としての将来像を見据えた全学科横断の基盤教育を構築するなど、教職員一体となって新たな取り組みにチャレンジしています。

今回の連載で最初にご登場いただくのは、組織的な教学改革の仕掛け人でもある学校法人 玉田学園 神戸常盤大学 法人本部長 中村 忠司さん。まずはこれまでの大学の変遷と、教職員のモチベーションを高める組織づくりについてお話を伺いました。



――神戸常盤大学は、もともと幼児教育科・衛生技術科・教養科の3学科の短期大学でしたよね。それが今のような専門職養成大学に変わる転機を迎えたのはいつごろだったのでしょうか?


中村さん ちょうど2001年でしょうか。当時18歳人口が1992年度の205万人をピークにだんだん下がっていくのはすでにわかっていたのに、本学は何もできてなかったんです。想像通りあっという間に18歳人口は減っていき教養科の学生数が減ってきて、これから冬の時代を迎えるというのにまだ何もしないのか、と思っていましたよ。歴史を振り返ると、この建物(法人本部が入る本館棟・旭記念館)をつくり、私学の看護学科はほとんどなかった時代に看護学科を開設した2001年がうちの転換期だったんじゃないかな。



――看護学科開設には関わっていらっしゃったんですか?


中村さん 私がマネジメントに関わりだしたのが、ちょうどその頃でした。看護は「とにかくつくりづらい学科」という印象で。なにしろ、修士や博士といった学位を身につけているような教員が在野にはあまりいない時代で、設置認可の合否判定を受けられるような人材を探すのに苦労しました。ですが、新しい学科をつくるときのしんどさと面白さがわかりだしたのもこの頃です。そうしてなんとかわれわれと意識を統合できる教員に来てもらって、看護学科を立ち上げることができたんです。



――当時は看護短大というのはそんなに少なかったんですか?


中村さん 看護科は、もともと病院系だった大阪の藍野さん(現 藍野大学)が持っていたくらいでしょうか。1校だけだったと思います。確かに立ち上げは大変でしたが、その代わり、少子化を迎えて18歳人口が下り坂になっても10年は生きていけると思っていました。実際、志願者数もだんだん増えていきましたからね。



――当時はほとんど事例の無かった看護学科をつくることに、よく理事長はゴーサインを出してくださいましたよね。


中村さん 当時は職員が少なかったので、やる気があれば任せてもらえた。設置認可や新校舎建設の責任者も任せてもらえてラッキーだったなと思いますよ。忙しくて体調を崩したりもしたけれど、その時に生きがいというか、やる気というか、そういうものを身をもって体験できたわけだし。それ以前のヒマな自分とすごく忙しい自分とを比較すると、忙しい時のほうが、自分らの関わりで学園が大きくなっているという実感も持てた、と言えると思いますね。

後に本学が得意とするようになる地域交流も、平成14年に私たちが始めたことです。今でこそ他の大学でも地域交流・地域貢献は盛んになってきましたが、うちはかなり早い段階から組織的に取り組んできました。



――中村さんにとっては、その頃が学園の次の時代を築くために必要なさまざまな経験ができた時期だったんですね。


中村さん そうですね。特に学科新設は勉強になりました。建屋はお金払えば業者につくってもらえるけど、学科はそういうわけにはいきません。まず、自分で学科をつくる喜びを体験できた。さらにありがたいことに、組織づくりに関して、少数で責任をもってラインをつくる役割を果たす経験を積めたのは大きかったです。

今はいろいろと法律があったり、ガバナンスの問題もあったりして、これから先は私が経験したような進め方で良いのかどうかわかりませんけどね(笑)。ただ、大学には「サイズ感」がありますよね。もしうちの大学で船頭が多くなってしまえば、しんどくなって結局なにも生まれない可能性もあります。確実にバランス力ある人間が、幾人かでやることが、おそらく間違いではなかったから、現時点ではつぶれずにやれてきているんだと思いますね。



――そして、神戸常盤大学短期大学が4年制の神戸常盤大学になったんですよね。それはいつのころでした?


中村さん 2008年、今から11年前のことです。さらに4大になる時に、改組の届け出で短大に口腔保健学科を開設しました。

実は短大時代も臨床検査技師の養成課程があったから、そこそこ学力のある学生が集まっていたんです。だから志願者確保のためにも、早く4大にしないといけないと思っていました。設置基準などの問題もあって時間がかかってしまいましたが、先代がつくってくれたものを活かすのならこういう方向だろうと、看護学科開設を起点に専門職養成校に舵をきったのが良かった。あのとき、英文科や家政科しかない短大だったら今の姿はなかったと思います。



――少し話は戻りますが、組織づくりについての話をもう少し聞かせてください。私が初めて中村さんにお会いした平成元年頃は、「のんびりとした昔ながらの大学の組織」という雰囲気だったように記憶しています。中村さんが組織で上に立つようになるにつれて変えたことはありますか?


中村さん 変えましたね。私は楽な仕事は良くないと思うんです。これは働く職員のモチベーションにも関わる問題なんです。私自身はたまたま学科新設や校舎建設を担当できて忙しさを体験できたのですが、一般的に大学の仕事は楽をしようと思えば楽ができる。そうすると、ほとんどの人はモチベーションが下がっていく。

私は毎年の新人研修で必ず言うんです。「ヒマほどしんどいものはない」と。大学職員は忙しいとは限りませんし、組織の中での人の配置によってはモチベーションがあがらない部署もあります。忙しさを知らず、ヒマに慣れると、むしろしんどくなくなると思うんです。



――ポジションや役割によって左右されがちな職員のモチベーションを上げるために、何か方策はあるのでしょうか?


中村さん 私は今、地域交流センター長もやらせてもらっていますが、私たちの地域交流は、地域を研究対象としてみるのではなく、「大学の近隣にいる人との交流」から始めました。「一教員が研究対象として取り組む地域交流には限界がある」と考えていたからです。だんだんと大学が大きくなり、自分の立場が上がるほどに気づいたのは、「大学の存在が近隣の人から面白く思われてないんだ」ということ。これは良くないぞ、と思い、まずは自ら近所の人のところに入り込んでいって、喜んでもらえることをやろうとした。その始まりが「地域交流フェスタ」「健康フェスタ」といったものです。現在は地域の方と包括協定を結び、その取り組みの中に若手職員全員を参加させて、仕事へのモチベーションに繋げようとしています。


実はここがポイントなんです。大学はセクショナリズムが強くて、部署間で交流できる事業が少ないんですが、若いうちに交流を広げておいてもらわないといけない。各部署の責任者を決めて、教員にも入ってもらいながら、公開講座のネタを見つけてきたり、地域でできるイベント企画を考えてもらったりすることが、職員のモチベーションにも繋がるわけです。学生のやる気を語る前に、まずは教員のやる気、さらに深いところでは職員のやる気が必要なんですよ。これはモチベーション理論と言えるでしょうね(笑)。



――大学の存在を地域に認めてもらうために、中村さんが大学の外にある課題を見つけて大学に持ってきて、解決する役割を若い職員や先生に任せる。中村流モチベーション理論(笑)を活用して教職員のモチベーションを高めつつ、大学と地域をつなぐ、ということでしょうか。


中村さん うちは小さいけれど専門職が集まっている大学なんです。看護、臨床検査、歯科衛生、教育の各専門の教員の中には、地域の課題を研究テーマに取り上げたい人はいっぱいいるわけです。昨年から、教員1人につき5本くらい、地域の方を対象にどんな公開講座をできるかについてテーマを出してもらっています。それをきっかけに地域と繋がって来る教員がたくさん出てきました。

地域と教員が繋がれば、職員の役割は終わり。職員が教員を支える存在なんです。

今度は私たちは商店街とのお付き合いをしています。



――新しい課題をすくいあげ、人と繋がりをつくるにはキーマンが必要で、その役割を担うのが職員であるということですね。次は商店街という新たなチャネルで課題を見つけるため、先んじて職員が動いているということなんですね。


中村さん その役割は教員には無理なんですよ。いまは教職協働が叫ばれていますが、私はこの言葉が嫌いでね。教員と職員は基本的に職制が違います。大学でゴールを決めて点を取るのは教員です。職員の仕事は、オフサイドせずに教員側にキラーパスを出してあげる、場合によってはドリブルで道を開いてあげることではないか、と。結果的に教員と職員が繋がるのはいいんだけど、最初から「協働する」ことが目的になっているのは違うと思うんです。



――目的がちゃんとあって、それに向かって先生が走るのをサポートするのが職員の仕事だろと。


中村さん 若い職員の中には教職協働が大好きで、行政管理学会などで学んでわれわれも頑張らなければ、という人もいます。

私はあくまでも結果が教職協働であって、教職協働ありきだと勘違させてはいけないと考えています。




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