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【神戸常盤大学】連載1-2/「医療と教育の大学」として生きるための大学改革

更新日:2020年4月28日

神戸常盤大学では、2014年に教育イノベーション機構を設置し、教学改革に着手。全学科横断の基盤教育を構築し、2017年度より全学共通初年次教育《まなぶる▶ときわびと》の授業がスタートしました。これは 臨床検査技師、看護師、歯科衛生士、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭と、将来の目標が異なる学生が共に学ぶ必修の初年次教育です。学科の枠を越えた学びの場は、医療現場で求められるIPW(Inter-professional Work)/多職種連携)にも通じる体験となり、学生だけでなく、この授業に携わる教職員にも刺激を与えているようです。取り組みの手応えについて、学校法人玉田学園 神戸常盤大学 法人本部長 中村 忠司さんに聞いてみました。




――2014年に教育イノベーション機構をつくりましたよね。その頃に考えていたことをお聞かせいただいてもいいでしょうか。


中村さん 今の大学の形ができあがって様子を見ていると、医療検査、看護、教育、口腔保健それぞれの教員の専門分野への意識はとても高い集団であることがわかります。それはとてもありがたいことですが、組織としては、4つの専門学校に見えてしかたがない。それをなんとかしないといけないと思うようになりました。


各学科は国家資格取得のための養成校に指定されているため、指定規則があります。それが強すぎるため、自分の学科の科目でカリキュラムを構成するだけで終わっている。これをなんとか変えたいなと。当時から、「教養を身につけろ」という中教審の話も出ていましたし、大学において教員も学生諸君も共通の何かを身につけられるようにしなければならないと考えていました。



――当時から中村さんは「大学人」という言葉をよく使っていましたね。


中村さん それは教員に向かってよく言いました。「専門学校の教員じゃないんだから、教育力を担保してこそ大学人である」という言い方で。



――学生についても、大学人を育てるんだ、とおっしゃってましたよ。


中村さん そうです。みんな大学生なんだから。

まだうちが短大だった時から入試課にいたからわかるんですが、当時の衛生技術科に入学してくる学生は、神戸常盤の卒業証書が欲しいわけじゃなくて、国家資格を取りに来ていたんです。資格を取ってなんぼなんです。大学になった今でも、うちの大学はそうだと思いますよ。臨床検査技師も看護師も、国立大学上位校は実は国家資格の合格率はそう高くないのですが、それでも学生が集まります。それは彼らがその大学の卒業証書が欲しくて入学しているからなんです。うちの大学にはそういう学生は来ませんよ。


でもうちは大学なんです。資格を取らせるのは当たり前だけど、幅広い教養も身につけて欲しい。だから「大学人であれ」と言うんです。そのためには、まずは教える教員が大学人でなければなりません。

その考え方が当時の上田國寛学長(2006年~2017年)と一致して、イノベーション機構を立ち上げ、科目を変えよう、カリキュラムを変えよう、横串をさしていこう、ということになったんです。


一番難しかったのはどの教員をイノベーション機構に入れるか、ということ。上田学長は「一般教養の教員をみんな入れるべき」と言われましたが、私はバランスの問題も考えて「専門の学科で役に立っているうるさめの教員をあえて入れるべき」と主張しました。そういうことをしないと組織が交じらないと思ったからです。実際、組織づくりは見事にうまくいきました。



――なるほど。教養の先生はもともと一つの組織にいた人だから、新しい組織をつくるのにそういう属性の人だけで固めてしまうのはバランスが悪いということですね。


中村さん 教員は各自の持ち場のことだけを考えがちです。「これは大事なことだから」と担当科目を手放そうとしなかったり・・・。だからかなり思い切って共通教育に横串をさしました。そうして専門の教員にもメンバーに加わってもらって協議しながら、考えていたことを具現化していったんです。



――「横串をさす」とは、具体的にはどういうことをされたんですか?


中村さん 例えば教員側から言ってくれてありがたかったのですが、「地域との協働」という授業を全学共通科目にしました。また、芸術・文化の各分野における秀逸な方をゲストに招いて話を聞くという芸術文化論のような面白い科目をおいて、他の学科の学生と一緒に取れるようにしました。うちぐらいの規模の大学だからできることもあるだろうということで、全学科合同で一泊二日の新入生学外オリエンテーションもやってます。



――専門の枠にとらわれず、初年次は学科の枠を取り払った科目で視野を広げたり、学生同士が交流したりできるようになったんですね。教育イノベーション機構では共通教育をつくり、2017年からは学科横断で行う初年度教育の《まなぶる▶ときわびと》がスタートしました。これはどのようにして立ち上げたのですか?


中村さん 《まなぶる▶ときわびと》は、今はうちにはいませんが、教育学科の30代の教員が考案したプログラムです。そこに現教育学科長の光成先生も加わって、初年次教育はそのプログラムを基軸に考えることになりました。


このプログラムでは、教員の授業力UPも狙っています。

特別な免許がなくても「先生」と言われるポジションにつけるのは、政治家と大学の教員くらいなんですね。例えば、大学病院の臨床検査技師をしている人にうちが「准教授でお願いします」と頼めば、その日から「大学の先生」と呼ばれるようになるわけです。そんな人がいきなり授業をすると言うのは、大変なことだと思うのです。だから学生に教える訓練をしてもらうプロセスも《まなぶる▶ときわびと》に含まれています。本学に新任で来られた先生方の登竜門にもなっているんです。



――いまは各学科から4~5名の先生を出していただき、教職員20名のチームでやっていますよね。先生を出すことについて、各学科からの反発はありませんか?


中村さん ここもバランスなんですよ。周りの雰囲気を察知して、若い人の業務の軽減も考慮しながら、経験のあるベテラン教員をうまく配置する。

私はねこれを「IPW」と捉えたらいいと思ってるんです。



――IPWとは?


中村さん 多職種連携(Inter-professional Work/以下IPW)、いわゆるチーム医療のことです。今度開設する放射科にはIPWとかIPE(Inter-professional Education/複数の専門職間連携教育)といった授業科目をつくるのですが、いまの現場は、医者を頂点とせず、報・連・相にはじまる医療職種間連携がないと始まりません。《まなぶる▶ときわびと》で教員や学生が体験することは、そういう考え方に通じていくことなんですよ。初年次教育のみならず、この大学で「IPW」という柱を作ろうと思えば、いろんな発想が生まれてくるんじゃないかな。



――専門職養成、地域連携といった大学を特徴づける柱を中村さんたちが打ち立ててきたように、これから大学を担う人が新しい柱を作るときのヒントにもなりそうですね。


中村さん 私たち職員の仕事は何だろうかと考えたら、最初にボールを蹴り出す役なんですよ。前回の話に戻りますが、ゴールを決めるのは教員ですが、いまはどこにボールを蹴り出すべきかという判断は私たちがしないといけない。しかも、歳をとった私ばかりがやっていてもいけない。若手が自ら編み出した企画を進めてもらう機会も作らないと、人はついてきませんよ。



――《まなぶる▶ときわびと》の初年度が終わった2018年2月頃にお話を伺った際に、中村さんは「先生たちに『神戸常盤で大学教員をやって良かった』と言ってもらいたい」とおっしゃっていらしたのが印象に残っています。あれはどういう意味だったのか、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?


中村さん 教員と言うのは定着性の低い職種なんです。自分の専門性を高めてより自身の研究を進めやすい環境に移っていく。そういう方たちがある期間をこの大学で過ごした後、本当に役に立つには、うちの柱でもある「大学における地域貢献を学べた」、「IPWやIPEを学べた」というようなことだろうと思うんです。


ただ一方では、大学人になってもらいたいなという気持ちもあって、毎年一回はFDだけでなく、SDに関わる研修をやっています。大学認証評価機関や私学事業団、私大協といったところの人の話を聞いてもらって、「日本の私立大学とはどういうものなのか」ということをわかっていただきたいんです。それが、うちをいいなぁと思って来てくれて、いてくれたことへの感謝といいますか…。ここに来るまではそれぞれが専門職として活躍されていたのかもしれませんが、大学でその専門職の人材養成をする人になるのなら、大学をわかる大学人であってほしいという想いはありますね。





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