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【神戸常盤大学】連載1-3/「医療と教育の大学」として生きるための大学改革

更新日:2020年4月27日

2020年4月には「診療放射線学科」(2020年4月 設置予定 構想中)を開設予定の神戸常盤大学。学校法人玉田学園 神戸常盤大学 法人本部長 中村 忠司さんは、教員の教授力やファシリテーション力を伸ばすために、教育学部があることが、医療専門職養成大学としての強みになると考えておられます。「医療と教育の大学として生きる」。これからの神戸常盤大学の展望をどのように描いていらっしゃるのか、中村さんにお話を伺いました。



――この先の大学の展望について何か考えておられることはありますか?


中村さん 2020年4月に診療放射線技師の育成を目指す「診療放射線学科」を開設予定です。新しいフレームが加わって、いよいよ「医療と教育の大学」として生きることになります。もちろん教育改革は進めなければなりませんが、今は私は内部の充実が一番重要だと思っているんですよ。


ご存知のように、あと何年かすると18歳人口は100万人を割ってとんでもない時代を迎えるわけです。そのときになってドタバタしても同じですから、学生を集めるためのフレーム、すなわちどんな学科構成にするのかを考えておかねばならないと思っています。1つの学科を土台の柱と考えるなら、3つしかなければ不安定だけど、7つも8つもあれば基礎固めになる。これまで経験してきたから言えるのは、社会の行く先を考えて生き残れる学科をつくっていたら大きな問題はない。そこにいい教員がいればもっと充実する。決して大きな広報のお金を使える大学ではないけれど、今回の「診療放射線学科」は県内でも唯一の学科ですし、無くならないフレームをつくれば土台も強固になると信じています。



――2014年から取り組まれている教育改革についてはいかがでしょうか?


中村さん 文部科学省の方針にもあります通り、これからは中学・高校でも思考力と判断力と表現力の3つの力を養う教育が行われるようになります。うちでいえば、「思考力」はそれぞれの授業科目で養い、「判断力」は臨地実習での経験で身につけられるでしょう。「表現力」、これはコミュニケーション力などにあたるのでしょうが、大学の教員は決してそれを教えることがうまいわけではないし、ましてやそれを高めることができる教員はとても少ないと思うんです。それで「学生の表現力、コミュニケーション力を高めるためにどうするか」を教育改革のキーワードにすればいいんだと考えました。教育を変えるには教員の充実も図らなければいけないけれど、教員に表現力をつけてもらい、学生の表現力を高められる教員を養成しなければならない。さらにいえば、表現の前に、アクティブラーニングの手法の勉強やファシリテーションの力は絶対必要でしょう。そこに《まなぶる▶ときわびと》が活きてくるだろうと考えています。


ただし、教育改革については、今の空気を感じて教員や職員の組織を見ながらでないとできないと思いますね。その時その時の雰囲気や匂いを感じて進めることが重要なんです。本来は中長期計画を立てて考えるべきなのかもしれませんが、長期展望を持っているからといって、うまくいくとは限らない。今は診療放射線学科ができた時に、自分たちがどんな空気を感じるかによって変わってくるのではないかと思っています。


今回の教育改革のカギは「IPW(Inter-professional Work、多職種連携)」だと思っています。本学はこれから医療と教育の大学で生きていくと決めましたが、車で言うダイナモ(発電機)を教育学部におきたいのです。これから教育学の人間はすごく必要になるし、そのためには人材も充実させなければならないでしょう。新しいことを進めるための拠点の整備はやっておかないといけません。



――先の計画をきっちり立てる事も大事だが、その時の雰囲気や匂いを感じる事がもっと大切というお話を伺って、中村さんは大学経営のファシリテーションをされているんだな、と感じましたね。


中村さん 計画倒れが一番ダメだと思うんです。空気を読める人間が何人いるかによって大学の組織は変わるでしょう。大学の教育は時間がかかるし、決算の数字もそう。時間がかかるから、いろんな意味で我慢もしないといけない。新入生が入ってからの4年間はカリキュラムを変えてはいけないし、大学は時間のかかるサイクルのある組織なんです。だから私は中長期の計画を考えるだけではダメだと思うんです。


一方で、教育目標としてのフラッグは、入学時点から10年先ぐらいに立てるようにとは言っています。学生が4年間学んで就職して、3年後、5年後が勝負であると。入学して10年後の活躍を担保できるように教育目標を立てることが必要なんです。学部教育だから4年後(就職)にフラッグを立てればいいというやり方はやめて、卒業生が社会で活躍するようになる10年後に立てようと。そのためにも学生がどこに進もうが必要となる対応力を身につけるための初年次教育が必要なんですよ。


その上で、就職後の動向をきっちり確認して、学生の成長のステップを見守れるサイクルをつくらねばならない。「風が吹けば桶屋が儲かる」というけれど、大学というのはそういう組織。即物的な営利を目的にしてはだめなんです。大学がどこで認められるかといえば、地域貢献だったりするわけですから。



――国家資格をとるのは当たり前で、「社会で活躍している姿」をイメージして教育の仕組みを整えていくということですね。


中村さん 社会で元気でのびのびと活躍できる人材を育てるための教育システムに変えていって、その検証をして、PDCAを回していく。中長期計画を立てることよりも、教育目標に対して立てた人材育成計画を変えないことのほうが大事だと思います。われわれは社会に出て活躍している姿にフラッグを立て、その実現のために初年次から4年次までのサイクルをつくっているんです。



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 中村さんのお話をお伺いして感じたのは、「学生育成のためにも教職員の育成が大切である」という事です。そのためにどのような目標設定をし、どのように職務分掌を考え、どのように動機づけをし、そして大学教育や地域貢献などを通じてどのような体験をしてもらって成長してもらうのか、ということを語って頂いただいたように思います。そして中村さんは、それらを常にバランス感覚を大切にしながら考え、実践しておられるのだ、ということを感じました。

 その中村流の人材育成方法には、組織開発のファシリテーションのスタンスに通じるものがあると思いました。すなわち個々人の主体性やエネルギーの存在を信じ、自然とそれらが発揮されるような場を作って組織の活性化を実現し、それらを通じて個々人の成長を促す、と言う事です。

 さてお読み頂いた皆さんは、どのようにお感じになられたでしょうか。


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