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チームビルディングを授業に応用。仲間とともに学ぶ姿勢の育て方【神戸学院大学】連載2-2

更新日:2020年3月17日

神戸学院大学薬学部では2018年度入学生から初年次教育の一環としてチームビルディングプログラム『自己の探求』を導入。グループワークを通して学生が打ち解けあい、大学生活へのモチベーションや期待を高めることが、「共に学ぶ」意識づけにもつながっているようです。その効果を活かしてアクティブ・ラーニングに取り組んでいるのが、薬学部 講師の日置和人先生です。チームビルディングのエッセンスをどのように授業に取り入れているのか、聞いてみました。



――2019年度入学生から、学生が自らの意思で選んだ仲間でチームをつくる「チームビルディング」を、授業や担任制とも連動させる動きが進んでいるそうですね。特に日置先生は250人の大講義室の授業でもグループワークを取り入れるなど、様々な手法にチャレンジしていると聞いています。


日置先生 とにかく落後者を少なくしたい一心です。授業のやり方も、何をどうすればみんながついてきてくれるのか、常に探し続けています。


授業って興味が湧いているときは眠くないんですが、難しいことを言われて意味がわからなくなると、とたんに眠くなってしまうものです。そこで僕の『基礎化学』の授業では、座席をチームビルディングでつくったグループごとに指定して、授業でわからなかったことをグループ内で話し合って解決してもらう時間を設けるようにしました。グループで解決できなかった疑問には僕が回答するという仕組みです。



――いわゆるアクティブ・ラーニング形式ですよね。段階的な知識の積み上げが必要な理系の専門科目は講義形式でなければ対応できないとか、アクティブ・ラーニングには不向きだと言う話を良く聞きます。それでもチャレンジしようと思われたのはなぜですか?


日置先生 2018年前期には、成績下位の学生に特別補講をしていた時期があったんです。みんな真面目にやるんですが、何度説明してもなかなか理解してもらえずとても時間がかかってしまって。それで、これはわかる学生に仲介してもらったほうがいいのではないかと思いついたんです。「そんなこともわからないのか」と言われるのが怖くて僕に質問できないことも、同級生なら聞きやすいだろうし、小難しい専門用語も学生同士ならわかりあえる言葉に換えて伝えてくれるのではないか。そう考えて、2018年後期は成績上位の学生を呼び出して「質問を吸い上げてきてほしい」と伝え、学生のわからない箇所を持ち寄ってもらいました。集めた質問は簡単に説明できるようにして、持ち帰ってわからない人に伝えてもらうようにしたんです。これはいいシステムだと思ったのですが、「どこがわからないか、わからない」と言う声も上がり、質問が集まらないという悩ましい問題も出てきました。

それで、2019年からはチームビルディングでつくったグループごとにやることにしたんです。ところが、今度は得手・不得手の問題が出てきました。グループ全員化学が苦手だと、「全員がわからない」という事態に。そこで、前期の化学の成績をもとに後期はグループを組み替えることにしました。違うメンバーとグループになれば友達のネットワークも広がりますし、グループに化学がわかる人がいれば教えてもらえるようになりますから。



――色々と試行錯誤されているのですね。他にも授業でアクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)の手法も取り入れていらっしゃると聞きました。


日置先生 アクティブ・ブック・ダイアローグを始めたのは2019年度からですね。摂南大学の事例を聞いて、そういうやり方があることを初めて知って、やってみようと思ったからです。僕はいろんな方法を探りながら試しているだけで、それが専門科目かどうかは気にしていません。

この方法を採用した一番の理由は、最近の学生が教科書を読まないからです。基礎化学の授業では教科書の補助のために大事なところだけ抜き出してまとめたレジュメ、冊子を最初に配布するのですが、学生はそれしか見ません。教科書を読まず、授業では前を向いているだけで、ノートを取るわけでもないという学生さんが多くて。でも、この方法なら無理矢理にでも教科書を読む機会を作れると思ったんです。

学生には「これは教科書の大事なところを僕なりにまとめて作ったものです。この冊子を配るのは前期だけです。後期は教科書で授業を行いますので、自分たちでこういうものが作れるようにしてください」と伝えています。



――具体的にはどのように行っているのですか?


日置先生 2通り考えました。1つは、グループ内で各自が担当する範囲を区切って、決められた範囲を読んで互いの情報交換をしなさいというもの。もう1つは、全員で同じ範囲を読んで、疑問点をお互いに出し合って、話し合って疑問を解決しなさいというものです。



――一般論として、先生方からは「カリキュラムで教えなければならない範囲が決められていて、講義形式の方が計画通り進められる。グループワークを入れると時間がかかる」と聞きます。そのあたりはどう対応されているのですか?


日置先生 大事なところは講義形式でやるんですが、聞いていない人もいますよね。授業で言ったところを入れ代わり立ち代わり聞きに来る学生はいます。ただし、それにも傾向があり、だいたい同じ箇所を聞きにくるんです。それだとお互いに時間のムダなので、化学の授業のLINEグループをつくり、質問を出してもらうようにしたんです。自分でわからないところはまずチームの人に質問してみよう。それでもわからないところはグループLINEに質問を上げてもらって、それに僕が答えるという流れです。

参加は学生の自由意志ですが、数名を除いて1年生250人くらいはグループに入っています。大多数の人が読むだけなのですが、同じ疑問をもっている人がいることがわかるし、それに対する回答もわかるし、自分が疑問を持っていなかったとしても気づくことがあるだろうし。なかなか質問は出てこないのですが、嬉しいのは、僕の代わりに解説をしてくれる学生が現れたこと。僕が説明することがないじゃん、って。そういう学生の存在がわかったのは収穫でしたね。



――まだ数は多くないとしても質問も出てきて、先生より先に答えてくれる学生がいるなんて、すごいですね!


日置先生 K君という学生ですが、まるで僕が答えているかのような答え方で、しかもわかりやすいんです。怖いくらいに勉強してきて、こちらが困るような難しい質問もしてくるんですよ。他にもアシスト役として3年生もグループに参加してもらっていますが、K君が全部答えてくれるので、今のところ彼らの出る幕はありませんね。



――面白いですね。仮想空間でもチームビルディングが進んでいるように見えます。


日置先生 中には「グループLINEに上げるレベルの質問ではないから」と僕のところに直接聞きに来る子もいますけど、「同じ疑問を抱えている人もいっぱいいるから、ぜひその質問を上げてほしい」と頼んでいます。僕のところに質問に来たあとで、グループLINEに質問を上げてくれた人もいましたが、案の定K君がしっかり答えてくれました。するとぐっと場が動きますよね。積極的な学生はもっと伸ばしてあげたいし、そういう学生が増えてコミュニティができたらSA(Student Assistant)組織もつくりやすくなりそうです。



――一連の取り組みによって、学びにおける「助け合い」の大切さを、日置先生が学生に説いているように見えます。


日置先生 自分ひとりで悩むのではなくて、わかる人に頼ればいいんですよ。僕も学生時代に助けてもらっていましたし、いまの4年生にも1・2年のころは全然勉強ができなかったけれど、できる学生と一緒に過ごすようになるうちに同等に成績が伸びてきている子もいますから。いまは1・2年のうちは学力が上がらなくてもいいから、気安くコミュニケーションできる仲間づくりを重点的にやるべきだと思っています。




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