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初年次教育を変えて学生が活気づき、学生の意識改革に成功【神戸学院大学】連載1-2

更新日:2020年2月20日

40年以上にわたる薬学教育の歴史と実績を持つ神戸学院大学薬学部で教育改革がスタート。その手始めに導入したのは、学業不振の学生を対象にしたリメディアル教育ではなく、チームビルディングプログラム(TBP)でした。6年後の国家試験に向けて、勉強のムチをふるうまえに仲間づくりを優先した理由は?薬学教育研究推進部門(以下DEPS)を率いる佐々木秀明先生に、その勇気ある決断の結果と、学部の変化について話を聞いてみました。





――2018年度からオリエンテーション期間に、2日間の弊社のチームビルディングプログラム『自己の探求』を採用していただいていますが、学生の変化を感じますか?


佐々木先生 2018年度の1年生の留年生は、休学、離学などを含めて、2017年度に比べると激減しています。今年(2019年)の1年生の留年生は前期が終わった段階ではまだゼロです。休学、離学を含めて今年は昨年より更に抑えられたらと思っています。



――数値的な変化もさることながら、学内の雰囲気などには変化はありますか?


佐々木先生 例年学生向けに卒業生や薬害患者を招いた講演会を行っているのですが、担当の先生から「質問が多くなった。これまでと全然違う」と聞いています。以前はシーンとしてて、「質問してください」といってもほとんどでなかったけれど、いまは講演者が帰れないほど質問攻めにしているとのことです。



――チームビルディングプログラム(TBP)の体験で、人前に発言したり発表したりする恥ずかしさが払拭されているのかもしれないですね。


佐々木先生 TBPを体験したことから、質問することに慣れてきて、相手の意見を聞いて自分の意見を言える状況を作れるようになっているようです。「質問してもいいんだ」という雰囲気がかなり浸透してきて、学生の積極性が出てきたような気がします。又、以前にも増してグループディスカッションできるようになってきましたね。相当数の学生に発信力が定着してきて、それはすごい変化だと見ています。



――薬学部棟1階のフリースペースの雰囲気も随分変わった気がします。以前はあまりテーブルに座っている学生がいませんでしたが、今はいつも学生が集まっていますよね。


佐々木先生 それは先生方からも言われます。1年生が集まってグループで勉強をしているし、テスト前はいつもテーブルが埋まっていますよね。学生が集まって勉強できるあの空間はすごく大事で、もっと確保できるよう要望を出しています。



――チームビルディングプログラムの導入と並行して、1年生から担任制を導入されました。そのことについてもお聞かせください。


佐々木先生 担任制導入はDEPS立ち上げと同時進行でした。おかげで学生の状況がかなりわかるようになってきました。



――これまで1年生の指導はどのようにされていたんですか?


佐々木先生 以前は1年次生全員を初年次教育担当の少人数の教員で担当していました。均一な指導が出来るメリットのある取組みでしたが、1年次生を個別にきめ細かく指導するために、担任数を増やし、少数の学生を1人の教員で担当する案を提案しました。


現在、この案に従って、初年次学生の担任制として、教員1人が1年生12~3人を担当することになっています。担任の先生は、1~2ヶ月に1回程度は学生を集めて懇談会を開いています。試験前は、勉強の進捗状況の確認、試験後には結果をもとに面談をするなど、学生の状況を把握した上で、きめ細やかな指導ができるようになってきたと思います。また、私たちも担任の先生に集まってもらい、全体での意思疎通を図るために意見交換する機会を設けています。



――担任の先生とのミーティングはどのくらいの頻度で行うのですか?


佐々木先生 全体での意識統一というのは必要ですから、担任懇談会を2ヶ月に1回以上は行っています。前期は4月と前期試験前の2回集まっていただき、学生指導のポイントを共有しました。また担任制導入2年目の今年、やっと全員の先生に担任を経験してもらえました。



――学生達だけでなく、先生方の変化を感じることはありますか?


佐々木先生 現担任制を採用したことは非常に評判が良くて、これまでは1年生を指導する機会のなかった先生方が、興味を持っていろいろと指導してくれるようになりました。特に一部の先生方は、今まで4~6年生しか担当しておらず、ほとんど1年生に関わりなかったのですが、1年を担任してもらったところ「まったく違う人種みたいで面白い」と言って頂いています。学生と仲良くなるためお茶会を開くなど、熱心にやってくださる先生方が増えていて、ありがたいことです。


また、担任の先生には「気になる学生がいれば必ずDEPSに連絡してください」とお願いしているので、そんな学生には、担任とDEPSが連携してサポートできる仕組みを作っています。



――DEPSとしての新しい試みはありますか?

佐々木先生 2019年度にDEPSの本部として「教育研究推進室」を設けたのですが、ここに高木さんと野ケ峯さんという2人の若い先生がいて、学生の悩みや苦手な勉強の相談を受けながら、解決に向けて学生をサポートしてくれているのも非常に大きいと思います。歳が離れた怖そうな科目担当の先生や担任には相談できないことも、お2人には気軽に打ち明けられるます。学生指導に経験豊富な野ヶ峰さんと今年の本学卒業生で薬剤師国家試験に合格している高木さんなら勉強のアドバイスも的確にできます。担任制と2人の若手教員による丁寧できめ細かな指導が、1年次生の意識改革に大きく貢献していると思います。



――担任制とDEPSの二段構えで学生をサポートする仕組みが整いつつありますね。

佐々木先生 来年に向けて担任制の仕組みも少し変えたいと考えています。2019年度までの担任制は12~3人の1年生を隔年で3年生まで受け持つ担任制でした。2020年度からは、6~7人の1年生を毎年持ち上がりで3年生まで受け持つ担任制を提案しています。1年次の共通教育の単位の仕組みや各学年のカリキュラムを把握するためにも、3年次までの学生全てを担当することは重要だと考えています。


そして、1学年6人を3年次まで受け持つ仕組みに変えられれば、1人の先生が自分の受け持ちの1~3学年全ての学生を集める場を作るようお願いしようと思っています。すると新しい流れができるなと思います。今でも研究室がそうで、同じ研究室の4~6年生はすごく仲良くなれています。



――なるほど、一人の担任の先生が受け持つ1~3年生にタテのつながりが生まれることになりますね。学生同士、学生と先生、先輩と後輩と、あちこちに小集団をつくり、その中で関係性が変わっていく。新入生にとっては友だちもできて担任とも仲良くなって先輩とも仲良くなれるわけですね。

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