北森先生が書かれた「組織が活きるチームビルディング(東洋経済新報社2008)」の第4章は、『効果的なリーダーシップ発揮のために』となっている。
チームビルディングに求められるリーダーシップの問題を取り上げている。
ちなみに「組織が活きるチームビルディング」は5章仕立てとなっており、第5章は事例編なので、この第4章が本編最終章と言うことになる。
第4章 効果的なリーダーシップ発揮のために
「リーダーシップ」とは、「リーダーが発揮する、人や組織を動かしていく力(対人影響力)」と言い表せます。
リーダーシップは、さまざまな要素によって成り立っているものであるため、自分がリーダーとして今どのような影響力をメンバーに及ぼしているのかを、さまざまな角度から見つめることは、「チームビルディング」にとっては非常に重要です。
この章では、「チームビルディング」のためには、どのようなリーダーシップが効果的かを考えていきたいと思います。(第4章の扉より)
リーダーシップの足場
第4章では冒頭に以下の設問が設定されている。皆さんもちょっと考えてみて欲しい。
あなたがリーダーなら、どちらのセリフをいわれたいでしょうか?
また、あなたがメンバーとして参加したくなるチームは、どちらのセリフが聞かれるチームでしょうか?
a「Aさんはリーダーだから、ついていこう」
b「Aさんがリーダーだから、一緒にやりたい」
おそらくリーダーとしても、メンバーとしても、bのセリフのほうにずっと「心地よさ」を感じるのではないか。この違いはどこから来るのか。それはAさんが自分のリーダーシップの「足場」を、どこに置いているのかによる、と北森先生は書いている。
三種類の足場
そしてその足場の種類を3つ挙げている。1つは「地位や肩書き」に足場を置いている場合、2つめは「自分の知識や経験、技能」に足場を置いている場合、そして3つめは「その人自身」に足場を置いている場合である。
3つの「足場」を見比べてみると、1つめや2つめには若干の自信のなさを感じる。リーダーの立場になると、色々な問題に直面するし、メンバーでいるときとは違った責任を負うことになる。その時にリーダーである自分に自信が持てないと、どうしても1つめや2つめの足場に頼ってしまうことが起きる。もちろん1つめや2つめが悪いわけではない。時には1つめや2つめをリーダーシップの道具として使うこともあるであろう。しかし3つめの「足場」に立脚してはじめて、その人らしいリーダーシップを発揮できるようになるのではないか。
DOかBEか
自分自身をふりかえってみてもそうであった。前職で初めて課長になった時、メンバーに何をどう言えばいいのか、どうしてあげればいいのか、どうすればみんなが納得してくれるのか、などなど悶々と考えたものである。つまりリーダーとはこうあるべき、と言う自分のイメージを持ち、それに近づくように考えていたし、足りない部分を補いたい、と考えていた。リーダーとは何をすべきなのか(DO)を考えていたのである。
しかしメンバーが知りたかったのはそういうことだけではなかった。むしろ、この人はどういう価値観を持っているのだろう、何が嬉しいのだろう、何が許せないのだろう、どういう基準で物事を判断するのだろう、すなわち一体どういう人なのだろう、という私自身の在りよう(BE)のことについて知りたいと思っていたのである。
効果的なリーダーシップを発揮するために
ここでもう一つ問題を出してみたい。北森先生の残した研修ツールに以下の設問があるが、あなたはどれが妥当だと考えるだろうか。
1.リーダーシップとは?
a リーダーがメンバーを統率する指導力である。
b 集団の目標を実現するための働きである。
c リーダーが実力を発揮するやり方である。
d 人が人に及ぼす対人影響力である。
2.リーダーシップは?
a 発揮するのは大変難しいので、よい相談相手が必要だ。
b 自分の力を高めていけば、思いどおりのリーダーシップを発揮することができる。
c 相手の受け取ったようにしか発揮できない。
d リーダーシップについての理論を習得すれば、比較的容易に発揮できる。
なかなか難しい問題であるが、1の妥当解はdであり、2の妥当解はcである。
リーダーシップとは対人影響力であり、それが故に自分自身では自覚しにくい。つまり相手(メンバー)にどのように伝わっているのかを確認しないとなかなか気づけない。
しかし視点を変えると、メンバーは自分自身についての理解を深めさせてくれる存在であるとも考えられる。自分自身について真摯に謙虚に聴くことができるかどうか、が大切なのだと思う。
リーダーシップは誰のもの?
「組織が活きるチームビルディング」の「おわりに」の章に、『リーダーシップはリーダーだけのもの?』と言う問いがある。そう。チームのみんなが、自分らしいリーダーシップを発揮しているチーム、また「リーダー」と位置づけられている人は、個々のメンバーのそのようなリーダーシップがスムーズに発揮できるような環境づくり、サポートを常に行っているチーム、そんなチームが望ましいのではないだろうか。
『「本当は、みんながリーダーシップを発揮する人」……できれば、そのような視点で、この本を読んでいただけると嬉しいです』
これが北森先生の願いであり、伝えたかったことなのだと思う。
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