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SAで学生をタテにつなぎ、薬学部の未来を拓く【神戸学院大学】連載2-3

更新日:2020年4月7日

初年次教育の充実を図りつつ、教育改革を進めている神戸学院大学薬学部。新入生にチームビルディングプログラムを実施し、仲間と共に学ぶ意識を醸成することで、学部全体の活性化を促しています。学生のヨコのつながりだけでなく、タテのつながりにも関心を寄せているのが薬学部 講師の日置和人先生です。上級生が後輩の学習をサポートするSA(Student Assistant)のシステムづくりを進めるその意図は?ヨコとタテのつながり強化が拓く薬学部の未来像をどのように考えているのか聞いてみました。





――日置先生が中心となってSA(Student Assistant)システムを立ち上げつつあると聞いています。これまで神戸学院大学にはSAのシステムはなかったのですか?


日置先生 教員の授業運営をサポートするティーチング・アシスタントという制度はありましたが、あくまでも教員の指示と要求に対して動く学生アルバイトのようなものであって、学生からの要求に対して答えるようなアシスタントはいませんでした。中には個人的に後輩の勉強を見てくれるような上級生もいましたが、システムとしては存在していません。



――今のところ教えてもらう側の新入生の反応はいかがですか?


日置先生 大学生って1年の歳だけでも先輩・後輩の差は絶対なんです。先輩ってキラキラして見えて、そういう人たちに教えてもらえることがありがたいと思うし、先生とは違って質問もしやすいところもあるだろうし。後輩にとっては、先輩の経験を聞くことで得るものもあるでしょう。特にいまの子たちは効率よくやるということをあまり考えておらず、ひたすら真正面から勉強に取り組んでいます。もう少し自分の時間をうまく使って効率良くやらなければ、ダラダラしてしまうので。そういう面も、要領のいい先輩が教えてくれるといいなぁと思っています。



――国家試験のために膨大な勉強をしなければならないのですから、効率化も勉強の一環ですよね。一方、SAとして後輩を教える側の学生についてはいかがですか?


日置先生 化学に関しては、来てくれるSAの大半は、僕に声をかけられたので仕方なく、あるいは、たまにバイト代がでるからというのが動機でしょう。僕が担任をしている学生に声をかけたら、その仲間を呼び集めてくれたので、学生間のコネクションの広がりは大きいなと感じています。SAをすることが少しでも喜びに変わったり、自分もやると名乗り出てくれる人が増えたりすることを期待しています。


実はSAって教える側にとっても大きなメリットがあるんです。自分ではわかっているつもりなんだけど、いざ教えるとなるとうまく教えられなくて、教えながらどんどん反復することが自分の知識になっていく。そういうことを僕も若い頃に経験しています。上級生のSAが「下級生に教えるうちに自分の頭の中が整理されて、気づきがあった」と言ってくれるのは、そういうことだと思います。


できれば1年生が2年生に質問にいって、2年生がうろ覚えだったら3年生に聞きにいく、というようなところまで広がっていけばいいなとイメージしています。



――SAとしてのタテのチームづくりということでしょうか。


日置先生 そこまでは望んではいませんが、「ここまでは自分が教えられるけれど、ここは自信がないからあなたにサポートしてほしい」と言い合えるようなコミュニティにはしておきたいですよね。



――お互いの得意分野を理解して活かせる関係性を作っておくということですね。


日置先生 自分の知識に自信のないところは、得意な人の力を借りて、さらに自分も一緒に説明を聞くことで知識を吸収できる仕組みができたら、すごくいいですよね。

実社会でもそうじゃないですか。いい会社で働いている人間がどんな仕事でもできるわけじゃない。全体的に能力を上げることよりも、「自分はこの領域を伸ばそう」と割り切ってしまうと肩の荷が下りてラクになりますよね。僕らも研究者として独り立ちしましたが、わからないことはいっぱいあって、その道のプロフェッショナルに教えを乞うことは多々あります。得手不得手があって当然だし、そこを補って行って全体的に良くなれば、それでいいと思うんです。



――SAのシステムは学習面で教える側・教えられる側、双方にメリットがあるのはもちろんのこと、学生をタテにつなぐ役割も果たすということになるんでしょうか。日置先生が薬学部のタテの関わりに目を向けるようになったのはいつごろからですか?


日置先生 薬学部の6年制がはじまってすぐのころですね。各学年でヨコのつながりはあるのですが、4年生になって研究室に入るとそれが途切れでしまう。その代わり、研究室内で4~6年生のタテのつながりはできるんです。そこに目をつけて、僕と神谷浩平先生、楢原正則先生の同級生3人が中心となって、運動会を始めたんです。そういう接点があれば4~6年生のヨコとタテのつながりができて出会える仲間が増えますよね。

僕は薬学部同窓会の幹事もしているので特に思うのですが、学生のヨコのつながりだけでなくタテのつながりが生まれたら、後々の神戸学院大学の発展にはすごくいいんじゃないかと思うんです。



――学力の底上げだけでなく、卒業生のネットワーク化にもSAが果たす役割も大きいと?


日置先生 タテヨコのつながりは、頼れる関係につながりますよね。ネットワークが同窓生全体に広がれば、誰かが誰かの助けになれるかもしれません。たとえ、自分が助けられないとしても、助けになる人を呼んでくることができるかもしれません。相談に乗れる関係というのは実社会において非常に役に立つので、まずは神戸学院大学薬学部卒業生というネットワークがあればいいのではないか。200名以上が毎年卒業している。それが少しでもつながっているならば、ものすごいつながりになっていくと思う。すぐに実感はできなくても、あってよかったと思えるのがそのネットワークであればなと。

それが薬剤師としての使命である国民の健康を守るという難しい課題に貢献することにもつながるのではないかと思うのです。



――それは神戸学院大学薬学部のブランド構築にもつながることですよね。


日置先生 学生の実習挨拶に行くと、関西圏ならだいたい各病院や薬局に神戸学院大学の卒業生がいるんです。これがつながれば強固なネットワークになりますし、全国に散らばっている人にもつながればすごい情報源にも助けにもなります。それを利用しない手はありませんよね。誰でも少なからず母校の連帯意識はあるので、自分の職場に後輩がやってきたら気にかけますよね。それがSAを経験した人であれば、僕以上に後輩を可愛く思うんじゃないでしょうか。それがゆくゆくはものすごい力になるんじゃないかと。そういうことも期待しています。


 

 日置先生とお話ししていると、ご自身の出身大学・学部に対する愛情を強く感じました。だからこそ今の学部の課題を自分事として受け止め、研究や教育以外の様々な仕事も進んで引き受けておられるのだろうと思いました。

 そんな日置先生にとってチームビルディングは、授業の中で学生どうしのヨコのつながりを作ることにとどまらず、SAの存在を通してタテのつながりを作ること、さらに担任制や複数の研究室をつなげてタテヨコの関係を作ること、などなど大きく広がっていっておられるようです。またその目的も、学生を孤立させないネットワークづくりから、教え合い・共に学び合う風土づくり、そして母校の連帯意識を繋いだブランドづくりへと、広がりを見せているように感じました。


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