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キャンパス移転、コロナ禍で途絶えたつながりを取り戻すには?【文教大学】連載2-1

文教大学国際学部では、新入生の大学適応をスムーズにするために、2016年度入学者からチームビルディングプログラムを活用しています。国際学部では、先輩学生30名ほどを募り、チームビルディング研修を行って「学部リーダー」を養成。新入生交流会で入学生を対象とするチームビルディングプログラムを実施する際にファシリテーターを務めてもらっています。2024年度から、前任の千葉 克裕先生に代わって新入生交流会を担当することになったのは、着任4年目の若手教員・久保庭 慧先生(文教大学 国際学部 専任講師)。今どきの学生の印象やチームビルディングプログラムの感想について聞いてみました。



 

――まずは久保庭先生のご経歴をお伺いしたいのですが、ご専門は?


久保庭先生 国際法を専門としています。法学の一分野ですが、ある国の国内で用いられる法律ではなく、条約など国同士が結ぶルールを対象として研究する分野です。現在の所属先である国際学部では、必ずしも法学を勉強しようと思って入ってくる学生ばかりではありませんので、国際法に関係する科目をいろいろと教える中で、そうした勉強を通じて見えてくる(国際)社会のあり方を考えてもらいたいと思いながら日々の授業を担当しています。



――教員としてのキャリアは文教大学が最初ですか?


久保庭先生 常勤としては文教大学が初めてです。学位取得後、いくつかの大学で非常勤講師などをして、2021年4月から現職です。



――文教大学の学生の印象はいかがですか?


久保庭先生 素直で優しい学生が多いと思います。一方で、客観的に見て明らかに力がある学生でも自信をもてないまま入学してきている印象もあり、教員としてはもどかしく思うこともありますね。



――奥ゆかしさも良さであるものの、もう少し自己主張があってもいいのでは、とご覧になられているんですね。さて今回は、これまで千葉先生が中心となって取り組んでこられた、学部リーダーがファシリテーターを務める「新入生交流会」についてお聞きしたいと思っています。久保庭先生が着任された2021年当時は、すでにこの仕組みができあがっていたかと思います。


久保庭先生 4月に着任してすぐ、「こういうことをやっています」と教えていただきました。初年次ゼミのクラス単位で交流会が行われているので、ゼミを担当する先生は顔を出してください、と言われて。右も左もわからない状態でしたが、いきなり新入生交流会に参加することになり見学に行きました。



――2021年といえばコロナ禍真っ只中ですよね。


久保庭先生 そうですね。Zoomを使ってオンラインでやっていました。運営側の学生も、受ける側の新入生も大変そうでしたね。翌年度の2022年度からは対面での実施になりました。



――その時の研修に対する印象は?


久保庭先生 大学に慣れてもらうための初年次の研修はいろいろな大学で実施されているとは聞いていました。大学によっては合宿所に泊まりに行くとか、一緒にご飯を食べて寝泊まりして楽しく過ごすこともあるそうですが、見学したプログラムは自分がイメージしていた大学の初年次研修とは違っていました。自分もそれほど詳しいわけではないのですが、なんとなく企業で行われる研修に似ているなと思いました。もう少し率直に言えば、初年時の学生がするには少しハードだな、というのが初見での印象でした。



――私たちラーニングバリューが得意としているのは集団の活性化です。貴学の場合は、集団の活性化のためにチームビルディングプログラムの扱いを学生さんに覚えていただいて、学生さんのファシリテーションによって新入生の風土づくりをしよう、そんな使い方をされていると思います。そういう取り組みを久保庭先生はどう感じておられますか。


久保庭先生 そういう取り組みが必要か、必要でないかといえば、必要だと思います。というのも、私が大学生だった頃にそうしたプログラムはありませんでしたし、入学するやいなや、「各々好きにせよ」と言われていた時代でした。それはそれで「古き良き大学」の姿でもあるのでしょうが、過渡期だったのかなという気がします。思い返せば私もどちらかといえば迷子になりかけていた学生だったかもしれません。今は大学側がそういう場を提供することが必要になっているような気がします。



――先生から「迷子」というキーワードがでてきましたが、もう少し具体的にいうとどんな状態のことを指しているのでしょうか?


久保庭先生 私の学生時代のことはさておき、この3年間の特殊な事情もあるかもしれません。コロナ禍に加えて、本学では2021年度にキャンパス移転があったんです。湘南、茅ヶ崎にあった4学部のうち国際学部と経営学部の2学部が足立区に移転したんです。サークルなどの学生が主体となってやる新歓の活動が、コロナ禍とキャンパス移転が重なってまったくなくなってしまいました。私の着任と同時期に入学した学生たちの多くは2024年度から4年生になるんですが、話を聞いていると、学内でタテのつながりがなかなか持てず、なんならヨコのつながりもあまりないというんです。



――2021年度入学生であれば、オンラインで新入生交流会を体験しているはずなんですが、それくらいでは足りなかった、と。


久保庭先生 そうですね。学校生活への適応という面に関して、そもそも高校までと大学ではギャップが大きいこともありますし、これに加えて、コロナ禍とキャンパス移転いう事情も重なって、人間関係や大学生活にスムーズに入りこめていない学生が多く、オンラインの交流会だけでは十分ではなかった部分もあるのではないかと思います。



――千葉先生がサバティカルに入り、2024年からは校務分掌から外れることになったので、新入生交流会の担当は若手の久保庭先生が引き継ぐことになったと聞きました。


久保庭先生 そうですね。今年度からは私が中心となって進めさせてもらっています。今年度は、前年の秋頃からラーニングバリューさんと打ち合わせをして、年明けの2~3月頃に教員と学生が一緒になって運営担当者の研修を行いました。



――弊社が提供しているのは、先輩学生(学部リーダー)をファシリテーターへと養成するチームビルディングプログラムと、そのファシリテーターが扱う新入生が体験するチームビルディングプログラムの2つです。2月に行う2日間の研修は、自分たちがファシリテーターとして扱うプログラムを体験するとともに、本番を成功させるための意思統一を図ることがねらいです。さらに、3月の研修では本番で扱うプログラムをロールプレイ形式で練習して、4月の本番につなぐという構造になっています。


久保庭先生 2月の研修では学部リーダーの学生たちが2日間かけてフルのプログラムを受けて、4月は新入生にそのダイジェスト版を実施しているんですよね。プログラムは一通り見て把握しているつもりです。



――今日は学部リーダー向けの研修が行われましたが、内容についてはどのように感じておられますか?


久保庭先生 非常にシステマティックにやっていただいていると思います。今日は本番に向けたロールプレイを一通り実施していただきました。研修終盤では、昨年ファシリテーターを務めた学生たちが残してくれていたメッセージも紹介しました。実はこれまでも残していたのですが、ちゃんと次年度の学生に紹介できていなかったんです。良いものをいっぱい残してくれていたので、ロールプレイを一通りやってもらった後でまとめをしてもらってから、先輩が残してくれていた留意点などを共有しました。



――後輩に伝えることが目的だったのか、自分たちの振り返りが目的だったのか?


久保庭先生 どちらもあるような気がします。次年度も引き続いてリーダーを務めてくれる学生もいますので。ファシリテーションに関わる本質的なことだけでなく、「このタイミングでお菓子を配ると雰囲気が変わる」といったような細かいことまで残してくれていて、そういうちょっとした気づきを残してくれたメモは非常にありたがかったですね。本番をやってみて初めて気づく難しさなどもありますので。来年度からはもっと活用していきたいなと思っています。



――新入生に実施しているプログラムについてはどのように思われますか?


久保庭先生 先ほどお話したことと関連しますが、結構カロリーの高いアクティビティ、例えば「月で遭難したらどうするか」をグループで話し合うといったプログラムがあって、ファシリテーションをする側も受ける側もかなり負担が大きいようです。当日はおおよそ9時開始~18時終了としていますが、この2、3年の様子を見ていると、例年プログラム後半になるとバテる学生が目につきます。何らかの形で工夫して、もう少し負担を軽減できないかというのは感じています。



――さすが、よく観察されていますね。本来は2日間で実施するプログラムですので、新入生対象に1日で行う際に『月で遭難したら』のプログラムを含むと負担は大きいかもしれません。


久保庭先生 今年はプログラムも基本的には例年通りで行うようラーニングバリューさんに依頼しました。だんだん慣れて学生の様子もわかってきたので、来年あたりはプログラムを少し変更する相談をしてもいいかなと思っています。



――ぜひ、弊社スタッフにご相談ください。


久保庭先生 もう一点、新入生のアンケートのまとめをしていて気づいたのは、「新入生がもっとも喜んだ瞬間はカードにメッセージを書いて渡すプログラムだった」ということです。リーダー学生からも「みんな恥ずかしがりつつもすごく嬉しそうにしていた」という意見が多かったです。それはなぜかということを分析してくれた学生によれば「普段から褒められていない、あるいは褒められる機会が少ないからではないか」と。



――誤解を恐れずに言えば、このプログラムはメッセージカードの交換に向けて設計されています。ですから、午前中のプログラムをこなしたくらいで、「グループの中の人のメッセージを書いて」と言っても書けないはずです。


久保庭先生 なるほど、ある程度、心地よく疲れたタイミングだからできることだということですね。そういう面も含めて計算されたプログラムだなと感じています。



※肩書・掲載内容は取材当時(2024年3月)のものです。


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