連載2-2/学生が主役の「HIT-ALPs」誕生秘話。電気の魅力を伝える挑戦が始まった【広島工業大学】
- odlabo
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更新日:2 時間前
広島工業大学の電気システム工学科では、1,2年生合同で授業の振り返りを行う機会を設けるなど、学生のタテ・ヨコのつながりをつくる取り組みに力を入れています。そんな中、2024年に、学生が中心となって小中高校生に向けて電気の面白さを伝えるプロジェクト「HIT-ALPs」が誕生しました。学生たちの熱意とアイデアがどのように形になっていったのか。その過程についてプロジェクトを担当する村上修二先生(電気システム工学科 教授)に話を聞いてみました。(全3回の2回目)

――「HIT-ALPs」の概要は川原先生にお伺いしたのですが、村上先生が担当されているとのことですので、改めてお聞きしたいと思います。これはどんな経緯で立ち上がったプロジェクトなんでしょうか?
村上先生 人によって、少しずつ言うことや見方も変わるのかもしれないのですが、私が記憶してる限りのことをお話しますね。もともとはラーニングバリューのHさんとの会話の中から「学生が活性化して、それが学生募集にもつながるような活動をやっていきたい」という話が出たんです。それを受けて、私が学科で提案したのは、オープンキャンパスでの説明を担当してもらうとか、オリエンテーション・ゼミナールの指導学生をやってもらうといった、既存の断片的な取り組みをまとめたような役割を任せようとするものだったんですよ。
それに対して松岡先生から、「趣旨は賛成。だけど、やることがそれじゃダメだ」と意見をいただいて。そこから、例えば、いろんな勉強をやらせてみてはどうかといった案も出て来たんです。その時の議論については、松岡先生にも聞いてみてください。
次に私と松岡先生とか板井先生とラーニングバリューのHさん、そして、学生の中からリーダー候補となるような人に何人か参加してもらって、企画会議をすることになりました。それが2024年1月のことです。
企画の趣旨を話すと、学生の方からも、「授業を受けるだけ、実験をやるだけで退屈していたから、何かやりたい」という声も上がって、賛同を得ることができました。ただ、「やることが勉強なんて、そんなんじゃつまらん」と、今度は学生からダメ出しが来たんですよ。そこから、みんなで考えて、学生の方から「小中高校生にいろんな実験を体験してもらって、電気の面白さを伝える企画を作ろう」というアイデアが出てきたんです。考えてみたら、そういう内容であれば学生自身にとっても電気の勉強にもなるし、自分たちでものづくりのプロセスも体験できる。つまり、ものづくりをしながら、チームビルディングもできて、成長できるし就職にもつながるな、と。さらに、企業の方々にも参加していただけるし、電気の面白さを小中高校生にも知ってもらえる。その場にいた全員が「これだ!これがいいな!」と。みんなの意見が一致した、って感じましたね。
――すごいですね。先生とのブレストの場で、そういう意見を出してくれたのはどんな学生さんだったんですか?
村上先生 学生メンバーは松岡先生が選んでくださったんですけど、当時の学部3年生と大学院1年生と2年生で、松岡先生のゼミ生が多かったと記憶しています。その中には学園祭の実行委員長がいて、その後、リーダーをやってもらうことになりました。彼はすごいんです。ちゃんと組織運営っていうのをわかっていて、人の動かし方も知っていましたからね。
――ちなみにHIT-ALPsはどなたが命名したのですか?
村上先生 松岡先生です。HITは本学の略文字、頭文字になります。アルプス(ALPs)っていうのは、Act Leading Projectsの頭文字で、自らアクションを起こして、引っ張っていくというような意味です。言いやすいんですよね、ヒットアルプスって。大学の職員さんの中でもすでに有名になっています。
――前向きな意欲を感じるネーミングですね。メンバー募集はどのように行われたのですか?
村上先生 4月からスタートするためには急いで動こうということになって、まず学生全員にメールを送ったんですよ。「こういう趣旨で、こういうことやっていきたいから、賛同する人は集まってくれ」と。そのメール1本で大学院に残る4年生も含めて36人ぐらいが手をあげてくれたんです。
――ちなみに、電気システム工学科は定員何名ですか?
村上先生 90人です。
――ざっくりいうと、ちょうど 1割ぐらいの学生が集まってくれたと。先生の目論見では、何人ぐらい来たらいいなと思っていたんですか?
村上先生 何回もメールを送って10~20人ぐらいくればいいだろうと思っていたので、びっくりしました。これだけ学生には潜在的な欲求、欲望っていうものがあったんだなと思って。本当に嬉しかったですね。
――その後、どのように組織をつくっていったのですか?
村上先生 先ほどお伝えした、立ち上げのブレストに参加してくれた学園祭実行委員長経験のある学生にリーダーを務めてもらって、運営方法を相談して、組織を10のチームに分けることにしました。新年度に2年生以上になる人の3~4人でチームつくり、そこに1年生を入れて運営していくことにしたんです。春休みの間に、各チームでどういうことをやっていくか企画してもらい、それを4月のオリゼミ(オリエンテーションゼミ)の時に新入生にプレゼンしてもらって、 1年生のメンバー募集をしました。
――立ち上げて、いきなり企画をたてて活動開始とはすごいですね。10チームはそれぞれ別の企画に取り組んでいるのでしょうか?活動状況について教えてください。
村上先生 基本的にはチーム単位で活動して、概ね実験にはなるのですが、各チームが違う内容のものに取り組んでいます。
――すでに小中学校を訪問したりしているのでしょうか。
村上先生 4月の段階では、どの学校に行くという案もいっぱい出ていたのですが、実際やろうとすると、なかなか大変だなというのがわかってきて・・・結局、2024年は小学校も中学校も高校も行かずじまいでした。ただし、公民館で小学生向けのイベントをやったりはしていて、公民館でのイベントは今後も開催予定です。
――公民館というのは大学近くの?
村上先生 そうですね。活動に賛同、してくださっています。公民館としても地域の小学生、中学生に集まってもらって何か活動をするという目的があるのですが、そのネタを継続して探しておられます。だから、ちょうどそこに私たちがいいネタを提供させていただいてるというような感じですね。
――公民館は何ヶ所かあるのですか?
村上先生 現在つながりがあるのは2ヶ所ですね。まだ、チームでの活動が体系立てできていないので、予定が入ると、「公民館でイベントをやるので参加してくれるチームは集まれ」と声をかけているような感じです。メンバーが揃わない時は、チームに限らず、集まれる学生だけでやることもありますし、体験メニューも松岡先生が準備してくださったりすることもあります。公民館での活動については松岡先生が取りまとめておられるので、詳しいことは聞いてみてください。
それ以外にも自治体の小学生向けイベントに参加して、その中のコンテンツの一つをHIT-ALPsが提供しました。その他にも、地域の個人の方で小学生に場所を提供されてるような方もおられて、そういう方ともつながりができています。


――イベントには何人くらいの小学生が参加者してくれたのですか?
村上先生 10人ぐらいなんですが、非常に楽しそうにやってくれました。
学内では、オープンキャンパスや学園祭など、高校生や地域の方に大学を見ていただくようなイベントでも活動しました。活動の様子はHIT-ALPsのSNSでもレポートしています。SNSの運営も学生が全部主体となってやっているんですよ。
――ちょっと拝見したところ、チームごとにいろいろな企画があるようですね。オープンキャンパスではどのような実験を高校生に見てもらったのですか?
村上先生 自分たちで考えて、発電機を作ったりワイヤレス給電を使った実験をしたりしています。例えば、スマホも置くだけで給電できるシステムや、電池を乗せずに車を走らせるシステムなどです。あとは、摩擦の静電気による発電などもやっていますね。摩擦の電気は一つ一つはそんなに電圧も高くないのですが、蓄電池のようなものにためていって全部つなぐと放電するときにバチンって火花が飛ぶんです。そういうデモンストレーションをしています。
――体験した高校生の反応はどうでしたか?
村上先生 反応はいいですよ。参加者はいつもいっぱいで、ものすごく楽しんでくれるので、印象にも残ってると思います。入試の志望動機でも「オープンキャンパスで先輩から聞いた話が面白かった」とか「先輩が非常に楽しそうだったから私も行こうと思った」といった声は少なくはないですよ。
――うまくつながっていって、募集にも影響出てきたらいいですよね。イベントを運営した学生さんの感想はいかがですか?
村上先生 公民館でもオープンキャンパスでも、相手から反応があるのが楽しいと言っていますね。子どもたちが喜ぶ楽しむ姿を見られるのが醍醐味のようです。
――その後の活動のモチベーションにつながりますね。
※肩書・掲載内容は取材当時(2024年12月)のものです。
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