広島工業大学は創立から50余年。5万人を超える卒業生を輩出し、現在は工学・情報・環境の3学部11学科を擁し、実践的な技術者の育成に力を注いでいる大学です。新入生の大学適応をスムーズにするため、電気システム工学科では新入生オリエンテーションとして宮島での宿泊研修を行っていらっしゃいました。さらなる効果を求めて抜本的な改革を検討する過程で、弊社のチームビルディングプログラム「自己の探求」に興味を持っていただき、2019年より導入していただいています。この改革をリードしたのが川原耕治先生(工学部 電気システム工学科 教授)です。プログラム導入の背景や、それに伴う新入生の変化について話を聞いてみました。(全3回の1回目)

――まずは、川原先生のご経歴をお伺いしてもいいでしょうか。ご専門や広島工業大学で教員になられた経緯についてお聞かせください。
川原先生 専門はコンピューターによる電力システムの運用や計画です。僕は元々広島の人間なので、大学の修士課程を出た後に、助手をしながら博士号をとって教員となり、広島工業大学に来ました。ここに来て20年くらいになると思います。
――ここで学務部長も務めていらっしゃったんですよね?いわゆる企業で言うとマネージメントの役職のような立場を経験されていかがでしたか?
川原先生 8~9年ほど前のことですが、そこから4年間しました。別に手を挙げたわけでもないのですが、現在の学長はよく知っている方でして。LACナビっていう教育学習支援センターのセンター長もやったことあって、何らかの雑用係をずっとやってきたような感じはしますね。大学によってもいろいろあるんでしょうけど、本学では(そういう役職についた人が)何かできるっていうほどの強い影響力を持つようなことはないですね、はい。
――電気システム工学科では2019年より新入生オリエンテーションに弊社のチームビルディングプログラム「自己の探求」を導入していただいています。最初に興味を持ってくださったのは川原先生だったと伺っていますが、きっかけは何だったのですか?
川原先生 本学の他の学部でそういうプログラムを導入しているという話を聞いて、大阪まで御社のセミナーに行ったのが最初ですね。なぜ、参加してみようかと思ったかといえば、以前は新入生オリエンテーションの一環として、1泊2日で宮島に行ってたんですよ。当時は根拠もなく、「学生を集めて一泊させたら仲良くなる」という考えがあったからです。僕はそういう考え方が嫌で、そうではないプログラムをやっているところもあると聞いて、話を聞いてみようと思ったんです。それ以来、電気システム工学科の新入生ガイダンスでは「自己の探求」をやっています。
――ありがとうございます。「1泊させたら仲良くなるという考え方が嫌」というのをもう少し詳しく教えてもらえますか。
川原先生 ずっとそれをやっていましたが、新入生を何人かのグループに分けて1泊させると仲良くなるという根拠はどこにもないじゃないですか。仲良くする、なんて平たく言ってますが、当時も今も何が問題かといえば、退学率です。そのころ僕は退学率を減らすということに少し関わっていたのですが、退学者というのは、入ってから1年以内で辞める学生が多いわけです。
――なるほど、初年次に課題がある、と。
川原先生 入学時点で、いわゆるコミュニケーション能力が高いかどうかっていうことも含めてですね。その当時は、電気を学ぼうという学生にはおとなしい子が多かったんです。それで、最初にオリエンテーションゼミみたいな形でプログラム的なものをやる方が退学率も低くなるとかっていう話も聞いて。その時は湘南工科大学がやっているというプログラムも見学に行ったことがあります。そういうことを知る中で、ただ単に泊まるだけじゃなくて、積極的にコミュニケーションを取ったりするプログラムをやった方が意味もあるんじゃないかと考えるようになって。わざわざ宮島に行くより、そういうプログラムがあるんだったらそっちをやる方がいいのかなと興味を持ったのがはじまりですね。
――大阪までわざわざお越しいただきありがとうございました。セミナーでは実際に「自己の探求」のプログラムの一部を体験していただくので、他の大学の教員や職員と一緒になってグループワークも体験していただいたかと思いますが、いかがでしたか?私の偏見ですが、理科系の先生って、初対面の人とかかわるのが苦手な方も多い気がするのですが。
川原先生 嫌でしたね。自分自身がそんなコミュニケーション能力ある方じゃない。あんまり好きじゃない。特に文系っぽいっていうのが苦手です。すごいなんか難しく感じてしまって。直感的に「面倒くさいな」と思いました。
――よくそんなものを学生にやらせてみようと思われましたね(笑)
川原先生 自分がやるわけじゃないからです(笑)。やっぱり何かそれなりのハードルを超えるようなことをしなければ、ただ人が集まって喋ってるだけで、何かできるようになるとか、コミュニケーション能力が上がるとか、そんなことは絶対ないでしょう。それなりの何かをやらないと無理だろうなと思っていました。まぁ、学生にとっては、しんどいですよね。
――プログラムは順天堂大学で人と組織の活性化について長年研究、実践されていた北森先生がつくったもので、やる前は面倒くさく感じるかもしれないんですけど、やってみると気持ちがラクになるというか、他者と積極的に関われるようになり、それこそコミュニケーションの力が上がるんですよね。
川原先生 多分、電気を学びに来るような学生は、「強制」とは言いませんが、ちゃんとした枠組みの中で行うような体験のほうがよくて、「自由にどうぞ」とか「勝手に話してね」というような場ではうまくいかないだろうなって思っていました。このプログラムが今もこの学科で続いているのはそういう意味もあるのではないでしょうか。
――セミナーで体験していただいたのは3時間ぐらいの短縮版ですが、本来は丸1日、あるいは2日間かけて行うぐらいのボリュームがあるプログラムです。実施校によって内容をカスタマイズするのですが、電気システム工学科ではどのようなプログラムで実施されているのですか?
川原先生 午前中の記者会見と総当たりインタビューは、学生のグループに教員も加わって、みんなで行います。午後の地図をつくるゲームは学生だけでやってもらいます。最後のプレゼントカードの交換は大変ですが、最後まで参加される先生もおられます。
――「自己の探求」を導入後は、新入生ガイダンスをどのような形式で実施しているのですか?
川原先生 2日間をオリエンテーションセミナー(オリゼミ)と位置づけて、1日目にラーニングバリューさんのプログラムを実施して、2日目は同じグループで協力して工作のようなことをしています。
グループ工作は、宮島での一泊研修の頃からやっていたもので、2日目の定番イベントですが、それも以前よりやりやすくなりました。「自己の探求」でわかりあった人と一緒にやるので、限られた時間の中でスムーズに進められるようです。
――工作っていうのは、例えばどんなものをつくるのですか?
川原先生 例年ほぼ同じで、厚紙と割り箸と輪ゴムを材料にして、ゴム動力で動く車を作ってもらい、走行距離を競うんです。これは昔からやっています。
――材料は同じだけど、どうやって走らせるかは自分たちで考えると?
川原先生 そうです。だから、四輪や三輪など、形も仕組みもさまざまです。
――車輪も厚紙でつくるんですよね?上手にカットしないとガタガタしそうですね。
川原先生 路面の状態によってはガタガタする方が滑らなくていいということもあるんですよ。
――なるほど、面白いですね。その定番イベントの様子にも変化を感じますか?
川原先生 そうですね。最初に「自己の探求」で強制的にグループのみんなと話したり接触したりするようになっていますから、役割分担も割とスムーズに決まるようです。
――その時にできたグループは、その後、何かに活用されるのですか?
川原先生 そうですね。「チューターグループ」になり、チューター教員1人あたり8~10人くらいの学生を受け持つことになります。学生は何かあればその教員に聞きにいきますし、教員は1、2年次の「社会実践科目」のどこかで必ずチューターを務めることになります。
※肩書・掲載内容は取材当時(2024年12月)のものです。
Comentarios