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新入生をサポートする体験が上級生のリーダーシップを引き出し自信につながる【文教大学】連載3-1

文教大学国際学部では、2016年度より、新入生対象の交流会でチームビルディングプログラムを活用しています。先輩学生30名ほどを募り、チームビルディング研修を行って「学部リーダー」を養成。さらに、彼らがファシリテーターを務めて新入生のチームビルディングプログラムを行うという流れで、新入生の大学適応をサポートしています。今回は、この取り組みが始まる背景や導入後の学生の変化をつぶさにご覧になっておられる菅原周一先生(国際学部 国際観光学科 教授)にインタビュー。チームビルディングプログラムの印象や学部内での評価、感想について話をお聞きしました。




――まずは菅原先生のこれまでの経歴をお聞かせください。ご専門はファイナンスとのことですが、経済学部のご出身ですか?


菅原先生 実は本来の専門は制御工学で、コテコテの理科系です。メーカーの研究所で10年間ほどロボットや人工知能の研究に携わった後、銀行の研究組織に移りました。20年ほど株式、為替、債券のリスク管理モデルの開発の研究をして、大学の専任教員になったのは約10年前。ドクターは経済学で、フィナンスに関する論文を執筆しました。


――国際学部の中ではかなり珍しいご経歴では?どのような経緯で文教大学に入ることになったのですか?


菅原先生 はい、学部では完全に浮いています(笑)。前職の頃から非常勤でいろんな大学で講義をしていたのですが、教員になってもいいのかなと思ったタイミングでここにポストを見つけたんです。国際学部の経済、金融、会計の分野の教員として採用されました。



――では、本題に入りますが、今回は新入生交流会の取り組みについて取材をさせていただいています。菅原先生は新入生交流会が合宿形式で行われていた時代のこともご存知なんですよね?


菅原先生 はい、1泊2日の合宿で「がやがや」やりながらやっていたんですが、お金と時間がかかっていることを考えると、もう少し効果があってもいいのではないかというようなことも感じていました。千葉先生が問題意識を持たれて、もう少しアドバンスな形での取り組みをしたほうがいいと企画立案され、学部でも了解が得られて、その合宿に代わる取り組みとして、今のプログラムが始められたと記憶しています。



――千葉先生だけでなく、菅原先生も「費用と手間がかかる割に新入生に対する効果が薄い」と感じておられたということでしょうか。


菅原先生 みんなで一泊するので、確かに仲良くはなるんです。じゃあ、全員が仲良くなるかといえば、限定された人だけなんですよね。新入生の中でも数人の仲良しグループはできるけれど、それ以上は広がっていかない。合宿という形式だと、常に教員がきめ細やかに対応できるわけでもなくて、学生に対する影響度の大きさにもばらつきがありました。ある学生は友達とも教員とも仲良くなれたけれど、参加前後でほとんど交友関係に変化がないような学生もいて。そういう意味では(合宿の効果に)均質性がありませんでした。なおかつ、一泊するのでトータルのコストはそれなりにかかっています。そうなると、もうちょっと違う方法があれば、新しい取り組みに変えたほうがいいのではないかと、私自身も思っていました。とはいえ、具体的な代替案はありませんでした。



――その代案をお持ちだったのが千葉先生、ということですね。それ以来、国際学部の新入生交流会では弊社のチームビルディングプログラムを採用していただいています。導入にあたっては菅原先生も関わっておられたのでしょうか?


菅原先生 いいえ、新入生のプロジェクトは当時、実質千葉先生が1人でされていて、サポート担当が毎年変わりながら続いている状態でした。その後、私が国際観光学科の学科長をするようになったタイミングで、学部長から千葉先生の負担が大きいので助けてあげてほしいと言われて関わるようになったのです。お金の管理や社内の手続きなど、千葉先生の苦手なことをお手伝いするような形で途中から参画したという感じです。



――新入生交流会にチームビルディングプログラムが導入された時はどんな印象を持ちましたか?


菅原先生 最初はどのような結果になるのか見当もつかなくて、私も他の先生も遠巻きに見ているような雰囲気でした。ですが、一回やってみるとうまくいったんですよね。何よりも、御社のファシリテーターさんの指導を受けて、交流会当日にプログラムのファシリテーターを務めてくれたリーダー学生(先輩学生)のやる気と成長がすごく大きくて。このプログラムはいいよね、という雰囲気が一気にできあがったと記憶しています。



――合宿形式からチームビルディングプログラムへと変更した時は、先生方もおそるおそるだったのではないかと思います。何しろ、プログラムの内容も影響も千葉先生しかご存知でなかったのですから。知らないものを持ち込まれたけれど、リーダー学生の成長を見て「これはいける」にと変わったんでしょうね。


菅原先生 本当にそうです。最初は、「お手並み拝見。良くなければ合宿に戻すか別の企画に変えなければならない」と思った先生が多かったのではないでしょうか。実施後は、その見方が明らかに変わったと思います。



――大幅リニューアルの結果を受けて、他の先生方からはどのような声が聞かれましたか?


菅原先生 かなり以前の話で記憶が定かではありませんが、確か教授会で千葉先生から報告があり、それに対して多くの先生からすごく良かったというコメントがあったと記憶しています。結構辛口の先生が多いので、成果が上がっていなければ異論も出るのでしょうが、少なくともこの研修についてはそういうことがありませんでした。毎年予算を確保していますが、この件については文句が出た記憶がないですね。



――新入生交流会には先生方も参加されるのでしょうか?


菅原先生 原則参加してもらっていて、昨年度は参加率は9割以上だと思います。新入生と一緒にグループに入っていただき、全部ではありませんがいくつかのグループワークに参加しています。



――授業前に交流の機会があるだけで、新入生にとっても先生とのコミュニケーションのハードルが下がるのでは?


菅原先生 一気に親近感がわきますよね。それがなければ、怖そう、と引いてしまうのでしょうが、話もしっかりできるようになるので、すごく影響は大きいですね。



――宿泊研修を行っていた頃と比較して、新入生の学校適応に違いは感じていますか?


菅原先生 1年次は15~16名ぐらいを1クラスにした新入生ゼミの時間があるのですが、宿泊合宿の時と、今回のプログラムを受けた時を比べると、全体としてのまとまり具合のレベルが違うんです。まとまりもあるし、だいたいのメンバーの顔と名前も一致しているし、どういうキャラクターの人間で、どういうものが好きかとか、お互いを知っている状況ができています。



――ゼミのやりやすさにつながっているんですね。


菅原先生 ええ、間違いないですね。みんなのことを知らない状態で始めるのと、お互いにある程度わかっている状態で始めるのでは、スタート台の高さが違うので。やりやすさという点においては全然違います。何かをする時の反応もいいし、意見も出やすいし、会話が一方通行でなく、言いたいことがいえる雰囲気で。学生同士の関係も良くなっているし、先生と新入生の関係も良くなっています。学生はすごくいい状態でスタートを迎えられていると思います。



――学生と先生のコミュニケーションはいかがですか?


菅原先生 質問も結構しやすくなっているのではないでしょうか。特に交流会で終日クラスに立ち会っている先生に関しては、そこで学生の顔と名前を覚えてしまうので。顔と名前が一致した状態でゼミを始められるメリットは大きいですし、学生のほうも、この先生がどういう先生かも見抜いているのでやりやすいと思います。



――よいスタートを切れることはその後の大学生活にどう影響していますか?


菅原先生 新入生ゼミが同じ学生は4年間仲が良いという状態が確立しています。新入生合宿をしていた頃にもそういうことはありましたが、まとまりや仲間意識といったものがより強くなっているのは大きな違いではないでしょうか。

実は本学では入学時の学生の学びに対する意識の強さに幅があり、意欲をもって入学していた学生もいれば、明確な目的もなくなんとなく入ってきてしまったという人も結構いるんです。後者の学生は途中で学習意欲が低下してしまったり辞めてしまったりということもあります。定量的に確認したわけではなく、あくまでも定性的なものではありますが、私はそういう学生が減っていて、就学意欲のレベル感が上がっているというように感じています。



――リーダー学生についてはどのように思われますか?


菅原先生 交流会の舞台裏は、大変な苦労も多いようですが、新入生から見れば、落ち着いていて頼もしい先輩に見えると思います。多分、新入生にとっては何でも知っている・何を聞いても教えてくれるすごい人に見えていて、自分の目標になるような存在になっていると思います。



――先生方は春休み中に行われているリーダー学生の研修の様子は見学されていますか?


菅原先生 忙しい時期なので、研修の様子を見ている先生は限られています。私もタイミングが合えば見ますが、中心となっているのは本年度からこの研修を担当してくれている久保庭先生くらいのようです。



――リーダー研修に対する菅原先生の印象は?


菅原先生 基本的に、参加しているのは「新入生の時に先輩たちのおかげですごく助かったから」と自ら手を挙げてくれた学生です。ですが、最初のうちは積極性が欠けているようにも見えます。ところが研修が進むにつれて積極性が出てきます。例えば、誰も手を挙げなければ自分が手を挙げて意見を言うとか、方向性を示すというようなことをしてくれる学生が現れるんです。研修の過程でも成長を感じますし、研修の成果を4月の新入生交流会で発揮する様子を見ていると、普段の様子を知っているだけに「いつからこんなにできるようになったんだろう」と思うこともあります。

多くの先生は研修の成果としてリーダー学生の活躍をしっかり評価してくれています。だから、「すごく頑張ってくれた」と、お世辞抜きで評価していると思うんです。本学の学生は控え目なので、そういう意味でも、主体性を養うすごくいい機会を提供してもらえています。



――先ほど、新入生交流会を今の形で実施するようになってから「ファシリテーターを務めてくれたリーダー学生のやる気と成長が大きい」ともおっしゃっていましたが、菅原先生にはリーダー学生の成長を実感するような出来事があったのでしょうか?


菅原先生 学生一人ひとりをよく知っているわけではないのですが、リーダー経験のある学生が私のゼミに入ってくると、間違いなくゼミの中核になっているんですね。ゼミで何かやろうという時に積極的に発言したり動いたりしてくれる学生というのは、かなりの確率でリーダー研修に参加してくれた学生です。大学に入ってからの変化についてはよくわからないので、もともとそういう素質があった人がリーダー研修に参加することでさらに成長したのかもしれません。ただ、成長しているのは間違いないし、少なくとも3、4年生の段階では、学部リーダー経験のある学生の多くは中核的な人材に育っていたといえます。それは私だけでなく、おそらく他の先生方もそういうことを感じているので、これまでずっと続いているのだと思います。


※肩書・掲載内容は取材当時(2024年3月)のものです。

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