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新入生の距離が一気に近づく新入生ガイダンスで「ぼっち」を解消【千葉工業大学】連載1-1

千葉県習志野市に本部を置く千葉工業大学は、1942年創立の歴史ある工業大学。1学年の定員は約2000人と国内有数の規模を誇ります。工学部では2010年頃から学科別に、新入生の交流を深めるためのガイダンスを行っています。機械電子創成工学科では、2021年から、チームビルディングプログラム『自己の探求』の一部を、このガイダンスに活用しておられます。新入生ガイダンスの担当を務めておられる新井浩志先生(工学部 機械電子創成工学科 教授) に、プログラム導入の背景や、プログラムの印象について語っていただきました。


――まずは新井先生の経歴をお聞かせいただきたいのですが、ご専門は?

 

新井先生 情報系でコンピュータ工学です。今は機械電子創成工学科といって、機械と電子の両方がからむメカトロニクスなどのモノづくりに関する学科に所属していますが、以前は電気電子情報工学科の情報コースを担当して、コンピュータのハードウェア設計、ソフトウエア開発をしていました。機械と電子の両方がからむモノづくりでも、エレクトロニクスとなるとマイコンで制御するために情報の知識もいるので、それを担当するためにこの学科に異動してきたんです。

 

 

――学生時代は?

 

新井先生 出身は電気工学科です。情報工学が出てきたのはずっと後になってからのことで、当時はIBM汎用機の出始めの頃で、コンピュータをやっている人は電気工学科か電子工学科の人でしたが、私は電気工学科のコンピュータの研究室に入り、そこからずっとコンピュータ関係の研究に携わっています。修士を出てから東芝に入り、4年間勤務した後に大学の博士課程に戻り、博士課程を終えてからからここにいます。

 

 

――新井先生が学生の頃と今とでは、大学もかなり違いますか?

 

新井先生 やっぱり手厚いですよね、いろいろと。昔は補講、補習もそうそうないし、単位を落として落第すればそれまでという時代です。今は、単位を落としても再試や補講をしますからね。就職指導もそうですし、新入生対応もそうですし。今日の取材でお話するような、「新入生のみんなで仲良くなりましょう」というイベントも私の学生時代には特段なかったですし。

 

 

――そうですよね。では、本題に入りたいと思います。千葉工大さんでは、外部の業者さんも利用しながら、学科ごとに新入生ガイダンスを実施されていると聞いています。そういう取り組みが始まったきっかけは何だったのですか?

 

新井先生 入学したばかりの新入生をほったらかすのもよくないということで、授業開始前の1~2日で何らかのプログラムを実施してほしいといわれたのが始まりです。2010年頃のことです。友達ができなくて悩んでしまう学生がいるという話もあって、新入生の時に何かしたほうがいいのではないかと事務サイドから依頼があったんです。内容は学科によって異なりますが、テーマパークに行ってそこで見かけた技術的なものについてプレゼンテーションしなさいとか、通信系企業の展示施設を見学してレポートを書くとか、いろんなものがありました。私が電気電子情報工学科にいた時は、学科を2チームに分けて、フットサルと、電子回路のハンダ付け体験を入れ替わりで行っていました。2016年に機械電子創成工学科ができた後の5年間は、学生を4チームに分けて、千葉・東京の博物館・科学館など4ヶ所に見学に行かせて、報告会をしていました。

 

 

――参加者は何名くらいですか?

 

新井先生 定員は110名ですが、入学者は130名ほどで、それを4クラスに分けて、各クラスに教員2人と院生のTA4人が引率について、各会場に連れていっていました。

 

 

――ラーニングバリューのプログラムを利用する前、2019年まで行われていた施設見学スタイルの新入生ガイダンスなどは、先生方が手弁当で計画されていたのですか?

 

新井先生 そうです。クラス担任が百何十人分の切符をJRに買いにいったりしていましたね。

 

 

――事務方のサポートもなく?

 

新井先生 特段ないです。クラス担任になると、人数分の切符を4ヶ所の行き先ごとに購入して、当日それを現場で配っていました。ほとんどツアーコンダクターです(笑)。

 

 

――自前でそういうプログラムをされていたのに、弊社に新入生ガイダンス向けのプログラムを依頼されたのはなぜですか?

 

新井先生 コロナがきっかけです。2019年までは従来のやり方で実施していたのですが、2020年はすべて中止しました。2021年もまだまだ新入生全員で電車に乗ってどこかへ行こうという雰囲気ではありませんでした。どうしたらいいのかと悩んで教務課に相談し、ラーニングバリューさんを紹介されたというのが経緯です。

 

 

――教務課からは私たちのような業者をいくつか紹介されたと伺っています。その中からラーニングバリューを選んだ理由は何ですか?

 

新井先生 3社くらいでしょうか。その時、クラス担任を務めていた先生が決められたと記憶しています。ただ、うちの学科は最初にラーニングバリューさんにお願いして、他社がどういうことをしているのかあんまり知らないんです。資料などもみたというわけではなく、「ラーニングバリューさんでいいんじゃないか」ということで、特に代替案は検討していません。

 

 

――たまたま弊社の営業担当とその先生が出会う機会があり、採用していただいたのかもしれませんね。2021年はオンラインと対面、どちらで実施されたのですか?

 

新井先生 対面でやっていただきました。1クラス40人くらいになるように分けて、学内だけで完結するようにしてもらいました。3年前からラーニングバリューさんにお願いするようになって、クラス担任はかなりラクになっています。

 

 

――先生もあまりご苦労されなくてすむし、学生さんも短い時間で濃密な時間を過ごせているならよかったです。最初に導入した時の印象をお聞かせいただけますか?

 

新井先生 どういうプログラムなのかわからないので教員も5人ほど参加しました。私も教員チームでチームビルディングを体験させていただきましたが、「なるほど、やっぱり違うな」と思いました。

 

 

――何がそんなに違うと感じたのでしょうか?

 

新井先生 以前の施設見学などは、朝から夕方まで1日かけて実施していたんですが、次にどこ行く?レポートはどうする?という話くらいはできるようになっても、結果的にそんなに友達はできないんです。でも、ラーニングバリューさんのプログラムは2時間程度でも濃密。4角形のチャートをつくって、自分がどういう人間かという振り返りをして、まず自分をさらけだすことから始めますよね。

 

 

――「私の学習スタイル」というプログラムですね。チェックシートを使って、自己を知る手がかりを見つけようというステップですね。

 

新井先生 積極的なタイプであるとか、自分の傾向がわかって、教員チームの中でも「これはあたっているな」とか「◯◯先生は、やっぱりその結果のとおりですね」といって盛り上がりました。学生には5~6人でグループをつくってグループワークをしてもらいますが、インタビュー形式のワークなど、積極的にコミュニケーションさせる工夫があって、プロの進め方だなという印象を受けました。いいプログラムだなと思って、他の先生方からも特段異論も出ないので、それ以来、ずっと継続して実施していただいています。

 

 

――ありがとうございます。新入生からの反応や評判はどうですか?

 

新井先生 新入生の距離が一気に近づく感じがしますね。以前のやり方では、イベント終了後に教員側から「きみたちLINE交換しときなよ」と声をかけないと、学生は三々五々に散っていく感じでした。それが今では、自分たちでチームのメンバーと連絡先を交換して、その後もずっと仲良くしているようなので、やはり密度と濃度が違うと感じます。

 

 

――早い段階で、「顔見知り」でなく、顔と名前と連絡先がわかる友達ができると安心でしょうね。

 

新井先生 入学直後に同級生とつながりができるのは大きいのではないでしょうか。2年になれば前期の実験の授業でグループ活動をするので、一緒の班になった人とつながりもできるでしょうけど、それまでは、サークルなどに入っている人でなければ、同じ出身校以外の人とつながる機会はないでしょうから。


 

――ここを逃すと、大学でつながりをつくる機会がない、と。

 

新井先生 自分から動かないと、4年間をいわゆる「ぼっち」のまま過ごす可能性があるでしょうね。

 

 

――近頃はどの大学でも、良くいえば遠慮深いといいますか、自信がなくて自己主張しない学生さんが多いと聞きますが、貴学でもそういう学生さんは多いのでしょうか?

 

新井先生 動かない人は一定数いると感じています。2年前期に班分けして実験科目を始めるのですが、引っ込み思案な人、班の中で浮いてしまう人が見受けられます。感覚的には、1割程度はコミュニケーションが十分できていない学生がいる気がします。ざっくりとした印象でもそれくらいなので、ラーニングバリューさんのプログラムがなければ、もっとひどい状態だったのかもしれません。

 

 

※肩書・掲載内容は取材当時(2024年2月)のものです。



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