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「教員の手厚いサポート」で新入生の不安は解消できるのか?【広島国際大学】連載1-1

odlabo

更新日:2023年10月20日

広島国際大学は広島県内に2つのキャンパスを持つ中四国地方有数の規模を誇る医療系総合大学。当ブログで過去に紹介した摂南大学と同じ学校法人常翔学園系列の大学でもあります。2004年に設置された薬学部は、2007年度の薬剤師国家試験で一期卒業生の合格率が全国第1位(94.2%)となり注目を集めました。国家資格を有する専門職業人を育成するため、学生への「手厚いサポート」に力を入れる一方で、「教員主導の支援だけでは、学生の成長に限界があるのではないか」との課題も抱えておられます。そこで、学生の自律(自立)を促したいとの思いからチームビルディングプログラムを導入されました。学力強化の新たな打ち手としてチームビルディングを選んだのはなぜか?学部の抱える課題や導入の背景について、学科長の山口雅史先生(薬学部 教授)に聞いてみました。




――まずは山口先生のプロフィールをお聞かせください。ご出身は?


山口先生 生まれも育ちも広島で、広島大学医学部総合薬学科に入学しました。そのまま大学院に進学し博士号を取得しました。私たちの時代は薬学部を卒業すると製薬会社の研究職など薬をつくる方に進む人が大半で、私も外資系の製薬会社に就職しました。



――どのようなご縁で教員になられたのですか?


山口先生 ドイツの親会社がそれまで行っていた日本における基礎研究から撤退することになったのを機に、当時の上司の勧めで海外に渡ったんです。イギリスの大学に所属しながらがん研究センターで白血病や血液幹細胞の基礎研究に携わっていました。3年ほど経った頃に大学時代の恩師から「日本に戻ってこないか」と声をかけていただいたのが、2004年の本学薬学部設置のタイミングで。今から19年前に、薬学部設置とともに着任しました。



――研究者から教育者に立場が変わり、何か感じることはありましたか?


山口先生 研究も教育も人に影響を与えるという面では共通していますし、対象が細胞から学生の行動に移行したに過ぎないと思っています。研究は楽しいですし、責任があまりない時は研究がメインでしたが、職階が上がるにつれて少しずつ教育にも向き合う時間が増えてきたという感じです。



――今回は「教育」に焦点を当てて話を聞いていきたいと思っています。山口先生がこの大学で19年間教育に携わってきて、教員になりたての頃と比べて学生に変化を感じることはありますか?


山口先生 当初は学生が多少なりとも興味を持って大学生活を送っていた気がしますね。ですが、次第に大学や学部が「(学生に対して)手厚くサポートする」を方針として掲げるようになり、今ではそれが本学の特徴になっています。知らず知らずのうちに教員が何かと手を差し伸べるようになり、さまざまな場面でサポートをすることがメインになっていたんです。

本学の現状を認識できたのがコロナ禍でした。それまでは、普通のように多くのサポートをしていたので学生が伸びていたのですが、コロナ禍でサポートできない状況になった時、「何をしたらいいかわからない学生」の存在が明確になり、そういう状態を変えなければならないと感じました。



――対面でのコミュニケーションが主だった頃は、教員から学生に近づく術があったものの、コロナ禍で学生がキャンパスから遠ざかったことで彼らの不安や不満を掴みづらくなったんでしょうね。これまで先生方が提供されてきた「手厚いサポート」とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?


山口先生 私はIRにも携わっていますが、エンロールメント・マネジメントにまつわるさまざまなアンケート結果を見て、入学時の学生が「学力」「人間関係の構築」への不安を挙げていることに着目しました。「学力を上げたら自信がつき、充実した学生生活を送れるようになるのではないか」と考えて。そこで、学生に入学時点で不足している知識と、自ら学修できる勉強方法も教えるために、2018年度から1年生向けに習熟度別クラスでの補習もスタートさせたのです。



――習熟度別クラスで行ったのはなぜですか?


山口先生 薬学部の履修には生物・化学・物理の理科3科目、そして数学の土台が必要です。しかし、今の高校では理科3科目すべてを学ぶことができず、入学時点で学んでいない科目があることを考慮しなければなりません。そこで、入学後に全員にテストを受けてもらって、その結果から学んでない科目や苦手科目を把握したうえでクラス分けをして補習を行うことにしたのです。学生には「授業だけでは習得できないかもしれないので、補習で足りない部分を頑張っていこう」と伝えて参加してもらっています。最初に学習の土台をつくっておけば学生も自律的に学ぶようになるのではないかと考え、1年次の教育に力を入れています。



――成果は感じておられますか?


山口先生 補習の最後にアンケートを実施し、学生の満足度や知識がついたかどうかを回答してもらうと、ほとんどの学生が「参加してよかった」とか「知識が身についた」と答えていたので、ある程度の成果は出ていると認識しています。



――でも、学力強化のための支援だけでは学生の成長にも限界がある、と?


山口先生 補習が多くなると学生も疲れますが、教員側も各学年でも補習をしたりするので時間がかかって余裕がなくなる状況になってきました。教員は学生のためにと考え一生懸命やっていますが、必要なのは学生が自律的に行動することです。知識や学習方法を伝えることはできますが、「自律」を引き出すのは難しいと感じていました。そこで、自律的な行動を促すために2021年度から新たに導入したのが「ポートフォリオ」です。学生にポートフォリオを記入してもらうことで、自分自身で学びのPDCAサイクルを回すという試みを始めました。自分自身の現状を認識してもらうために、良いことも悪いこともとにかく記録してもらい、良い点はさらに伸ばし、改善すべき点に気付き改めるといったことに取り組んでもらっています。



――数年間取り組んでみて、どんな感じですか?


山口先生 1年次は毎週記録したことに、教員がコメントを記しています。自分で気付いたことを行動に繋げるように、アドバイスをしています。しかし、2年次以降はなかなか継続できていないようです。アンケート調査の結果を見ても、1年終了時には「(ポートフォリオに取り組んで)良かった」と答えてくれますが、2年以降になると「1年次にできていたことができていない」という回答が多いです。今後は各学年で学生が自分自身の取り組みを振り返ることを促し、文科省が求める「学修成果の可視化」と連動させていきたいと考えています。



――すでにさまざまな試みを進めておられる中、山口先生が弊社のチームビルディングプログラム「自己の探求」を導入することにしたきっかけをお聞かせください。


山口先生 教員側がいろいろと考えて現状を変えようとしてきましたが、学生自身にも変わってもらわないといけないと思ったからです。薬学教育の内部質保証の観点からも、学生が自ら気づいて行動することが求められています。学生の力を引き出すにはどうしたらいいかを考えていたところ、同じ法人の摂南大学の荻田学長(当記事内第1回を参照)からチームビルディングの話を聞いて。ちょうどタイミングよく、ラーニングバリューの方からチームビルディングで学生の力を引き出すプログラムがあるという話を聞き、これしか残された手段はないのでは、と思い、学部長と相談して本学に取り入れる検討をしたのです。



――「自己の探求」の説明を聞いて、どんなことをイメージされましたか?


山口先生 プログラムの具体的な内容まではわかりませんが、「チームを形成する」という活動に対して、「個々の人間を尊重する」とか「助け合いながら、一緒に同じ方向に向かって進んでいく」というイメージは持っていたので、最終的に学生がそうなっていくのだろうなと思いました。



――新しい取り組みを始める際に学部内の教員のみなさんと合意形成するのは大変だと思うのですが、それについてはどのように対応されたのでしょうか?


山口先生 これまでも、私たちが「やるぞ」という時は、先生方はみなさん協力的にやってくれていました。ただ、チームビルディングプログラムの実施には、先生方に時間を割いていただき、より一層の協力も必要となります。そこで、ラーニングバリューさんにも相談して、「どういうプログラムなのか」「これを行うとどういうことが得られるか」をご理解いただくために、学内FDという形をとって2回にわたってプログラムの一部を体験して、本番に臨みました。



――先生にプログラムの一部を実践していただき、チームビルディングを体験してもらうFDですね。私も2回目に参加させてもらいましたが、先生方の反応はいかがでしたか?


山口先生 個々の先生の違いや考え方が分かる機会となり、仕事がしやすい関係になってきたように思います。私もここでこれだけ長く働いているにもかかわらず「あの先生はこんな人物だったのか」という発見がありました。



――お互いの知らなかった一面が見えてくるのもこのプログラムの魅力でもあります。


9月に行ったFDでは、「こんな感じで進めます」と説明するためにプログラムの前半部分だけを体験したのですが、4月に新入生向けに実施した際は2日間のプログラムをすべて体験しました。学生も楽しんでいましたが、教員も教室の後ろの方で楽しみながら参加させてもらいました。


※肩書・掲載内容は取材当時(2023年5月)のものです。

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株式会社ラーニングバリューでは「自己の探求」や「チームビルディング研修」などの教育プログラムを活用し、学校や授業、クラスなどのコミュニティの活性化支援を行っています。

本サイトでは、大学改革・教育改革の現場を訪問し経営者・教職員・学生など、現場の当事者にお話を伺っていきます。

みなさまのコミュニティの活性化(=組織開発)のヒントになれば幸いです。

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