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タテのつながりづくりは身近なロールモデルと出会うチャンスになる【広島国際大学】連載3-1

中四国地方有数の規模を誇る医療系総合大学の広島国際大学。薬学部(2004年設置)は「手厚いサポート」を強みに国家資格を有する専門職業人育成に取り組んでおられます。しかし、「教員主導の教育だけでは学生の自律(自立)を促すことはできないのではないか」との視点から、学力強化の新たな打ち手としてチームビルディングプログラムを導入されました。さらに、学生のタテとヨコの関係性を深めるためにピアサポートクラブの設立も構想。人間関係の構築がやがて学習意欲の向上にもつながると期待して、新たな取り組みにチャレンジしておられます。今回話を聞いた薬学部2年生のKさんは、新入生向けのチームビルディングプログラムにピアサポーター(サポートスタッフ)として参加したメンバーの一員です。直接的には学業や資格取得に関係のない活動に積極的に参加する動機は何か?そこでどんなことを感じているのか?話を聞いてみました。





――まずは広島国際大学の薬学部に入学したきっかけを聞かせていただけますか?


Kさん 薬学部志望で県内進学を希望していたので、通いやすくて教育プログラムが充実していることから広島国際大学を選びました。



――高校生活を過ごしたのはコロナ禍だったんですよね。大学生活への期待も大きかったのでは?


Kさん 高校2年生になってからコロナ禍に突入して、規制が厳しくて学校にも通えず、授業も録画された動画で自習するスタイルになりました。家にこもりっきりになって、イベントも中止になったし。私は3年の時に病気になり修学旅行にも参加できなかったので、大学では高校でできなかったことを取り戻したい気持ちはありました。でも、病気のため十分な受験勉強ができなかったので、しっかり受験勉強して入学してきた人たちと一緒に授業を受けて、自分がついていけるのかすごく不安でした。



――実際の大学生活はいかがですか?想像通り、それとも想定外?


Kさん 大きく違ったのは「大学の先生は冷たいから、高校のようなつもりでいると大変」と聞いていましたが、広国大はそんなことなくて、どの先生もすごく学生のことを気にかけてくれるんです。日頃から、挨拶するだけでなくちょっとした雑談もしてくださるし、同じことを何回聞いてもにこやかに丁寧に解説してくれます。温かい先生ばかりで、高校の先生と同じように親しみやすいところが、いい意味で想像とは違っていました。



――薬学部では数人の学生に1人の担任の先生がつく制度がありますよね。


Kさん 私の学年では3人の学生に1人の担任の先生がついていて、私もその制度に助けられました。1年時は、週1回、みんなで集まる時間があり、それほど長い時間ではないですが、授業でわからなかったことを教え合ったりしていました。その他にも担任との面談もあり、週末に1週間の学修状況のふりかえりをするポートフォリオを提出して、それに対してコメントを返してもらっていました。そのコメントがモチベーションの維持につながったし、担任が優しくて温かい人で、勉強や大学生活に関係ないことまでいろいろ聞いてもらうことができて、ありがたい制度だなと思いました。私が悩みを打ち明けた時の受け答えが、高校時代の恩師と同じだったのには驚きました。まさか大学でそんな学生思いの先生に出会えるなんて。担任の先生は1~3年生まで同じなので、「この大学でやっていける」と思えました。



――Kさんは新入生プログラムのサポートをする「ピアサポート」のメンバー募集に応募されましたが、やってみようと思ったのはなぜですか?


Kさん 私には仲良くしている4年生の先輩がいるのですが、その方に誘われて参加しました。


――その先輩とはどんなご縁があってつながりができたんですか?


Kさん 入学前の3月頃に、オンラインで合格者と先生と先輩が話す機会があり、そのサポートをしていたのがその先輩でした。学生生活について質問しているうちに仲良くなり、連絡先を交換させていただきました。入学後に対面し、そこからのつながりです。



――ピアサポートに誘われてどう思いましたか?


Kさん 「1年生をサポートする」と聞きましたが、誘われた当時の自分も1年生だったんですよね。でも、数カ月後に新1年生が入学してくる、と思うと、「自分も先輩に支えてもらったので1年生をサポートしたい」と思って。



――活動はどのように進んでいったのでしょうか?


Kさん 説明には10人以上の人が集まり、4年生や2年生には知っている先輩がいました。先生からピアサポートクラブでどんな活動を行うのかの説明があり、4月に新入生向けのチームビルディングプログラムのサポートをすると聞きました。



――Kさんにとっては、初対面の人ばかりだったわけではないようですね。先生からチームビルディングプログラムの説明を聞いて、どう感じましたか?


Kさん プログラムにそってチームをゼロからつくるような経験はしたことがなかったので、面白そうとか、どんな変化を体験できるのかなと思いました。でも、プログラムは2日間もあると聞いて少し心配もしました。しかし、長い時間をかけて人と仲良くなる機会もあまりないだろうから楽しみたいと思いました。



――当日の様子について教えてください。新入生はどんな様子でしたか?


Kさん 私も1年生7人に混ざって一緒にプログラムに参加しました。1年生は1対1だと話せるけど、集まると口数が少なくなるようなコたちだったんです。「どうすればみんなで話してくれるかなとか」とか「ここで私がでしゃばると目的と外れてしまうのではないか」などと考えてしまって…最初のほうは自分が1年生をサポートできるかという不安がありましたが、だんだん1年生同士で打ち解けてくれました。



――打ち解けてもらうために、具体的にはどんなサポートをしたのですか?


Kさん グループに上級生は私だけで、最初のうちはみんなから「先輩」という立場に気をつかわれている雰囲気がありました。自分も進行役をしなければと思い「◯◯さんはどう思う?」などと指名して意見を求めたり、発言していない人に声かけて「思ったことを話してもいいよ」と促したりしていたんです。みんな指されるたびビクっとして硬くなる雰囲気もあったのですが、プログラムを進めていくうちに徐々にそういうこともなくなっていきました。2日目にはみんなの緊張もほぐれてきて、そのうち、私が何も言わなくても他の1年生がリーダーシップを発揮してくれるようになりました。いつの間にか1年生だけで順番に話してくれるようになって。私が何も言わなくても、1年生が「自分から話します」と言ってくれるようになったんです。最終的には1年生だけでグループワークを進めていけるようになったので、チームビルディングの目標は達成できたかなと思います。今も同じグループだった1年生とは、学内で合えば手をふったり声をかけあったりしています。



――最後にグループのみんなでプレゼントカードを交換したと思いますが、1年生からどんな言葉をもらいましたか?


Kさん 「心強かったです」とか「チームにK先輩がいてよかった」とか。他のチームの上級生より自分が頼りないのではと思うこともありましたが、「頼りがいがあった」と書いてくれた人もいてよかったです。



――Kさんのサポートや気づかいがきっと1年生にも伝わったんでしょうね。Kさん自身はチームビルディングプログラムを体験してみて、印象に残ったことはありますか?


Kさん 「自分の学習タイプ」を知る体験(※何かを学ぶときに、その人がどんなことを大切にしているかを確認するプログラム)が印象に残りました。私の場合は「行動する」が突き抜けていて、その次が「振り返る」と「成長する」で、「考える」がほとんどなかったんです。確かに私は先生方に「もうちょっとよく考えてみよう」と言われることがあるので、自分自身のことがよく現れていることが恥ずかしくもあり面白くもありました。


――4月にチームビルディングプログラムを行い、5月には新入生向けのイベントとしてバーベキューを開催したと聞いています。Kさんはその企画にも携わっていたのですか?


Kさん 3月にピアサポートクラブで集まった時に「今後どう活動していきたいか」についても話し合いをしました。その時に1年生の親睦会をしようということになり、バーベキューやスポーツ大会をしたいねという声が出ていたんです。4月のチームビルディングプログラムの終了後に、ピアサポーターへのフィードバックのために集まった時、山口先生から「5月の親睦会はどうしますか」という声かけがあり、バーベキューをすることに決まりました。



――フィードバックというのは、チームビルディングプログラムの振り返りということですよね?いつごろ、どんな内容で行われたのですか?


Kさん 4月中旬ごろ、アンケート結果をもとに、1年生の感想やピアサポートクラブの今後について話し合いました。満足してくれた1年生が多くて、ピアサポートの活動を自分でもやってみたいという人も20人ほどいたことを聞きました。いい評価をもらえて頑張ってよかったと思いました。



――5月のバーベキューはどうでしたか?


Kさん たくさんの1年生が参加してくれていたのでびっくりしました。私もチームビルディングでかかわった1年生以外とも話したいと思って参加しましたが、勉強のことを質問されたり、逆にこっちからも「学生生活どう?」などと聞いたりして、いろんな人と話して楽しめました。



――Kさんは1年時にチームビルディングプログラムを受けていませんが、受講した今年の1年生と自分たちの代に違いを感じることはありますか?


Kさん 全体で仲が良いなという印象です。私たちは入学直後にオリエンテーションはありましたが、時間的にもごくわずかでしたし、2日間も時間をかけて仲良くなったり、バーベキューのような懇親イベントに参加したりするような機会もありませんでした。バーベキューの様子を見ていると、今年はグループの枠を超えて学年全体で仲よくなっている気がします。



――今年の1年生は、チームビルディングプログラムで先輩との接点もあるので、タテとヨコのつながりがあるのも、Kさんの代との違うところですね。Kさんは4年生に知り合いの先輩がいると聞きましたが、その人とどんな交流をしているのですか?


Kさん 私はすごく勉強に不安があったので、苦手な科目を先輩はどのように勉強したかを教えてもらって、同じように勉強しています。



――例えば?


Kさん 私は生物が頭に入りにくいのですが「自分で絵を描いてみるといいよ」とアドバイスをもらったのでそうしています。反応の経路を自分で描いて指でたどってみると確かに頭に残りやすいと感じています。


――今後はKさんが後輩に教える立場になることもありそうですか?


Kさん 担任から物理に苦手意識を持つ1年生がすごく多いことを聞きました。そして、機会があれば「後輩に教えてあげてほしい」と頼まれました。次回、1年生の学修指導の時間に参加して、教えることになっています。今まで自分の勉強法を教える機会はなかったので新しい試みだなと思います。ピアサポートクラブについてはまだ本格的に始まっていないのでなんともいえないのですが、薬学部の学生のための活動なので、本格的に動きだせば、1年だけでなく他の学年とも関わってみたいと思います。



――最後に、Kさんが将来のキャリアについて考えていることを教えていただけますか?


Kさん もともと病院で働く薬剤師に憧れていて、将来ここで働きたいという病院がありました。4年生の親しい先輩は、私と性格や勉強の仕方が似ていて、私のロールモデルのような人なのですが、私の目指すところよりもっと大きいところを目指していると聞いて、もっと他にも目を向けてみようと視野が広がりました。



――友達と切磋琢磨するのもいいですが、タテのつながりがあればロールモデルを見つけることもできますよね。こうすればこうなれる、というちょっと先の目標があることが、キャリアアップの強い味方になりそうですね。


Kさん はい。私はテスト勉強も先輩とすることが多くて、普段コツコツ真面目にしている先輩でも期末テスト前は大変そうにしています。「あれだけやっていてもこれだけ大変なんだ」とわかるので、今のうちからコツコツやっておこうという気持ちになります。



※肩書・掲載内容は取材当時(2023年6月)のものです。

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