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コロナ禍の高校生活から、つながり重視の濃密な大学生活へ【広島国際大学】連載3-2

薬学部の在籍期間は6年間。モチベーションを保ち続けて国家資格取得や就職に臨むには、学生の自律的な行動が不可欠です。そこで、広島国際大学薬学部では、学生が自ら動き出すきっかけづくりのために、2023年度新入生にチームビルディングプログラムを導入。学生の力を引き出し、仲間と助け合いながら目標に向かって進む意欲を高めてほしいとの期待を込めています。プログラムの実施にあたっては、上級生を募って「ピアサポートクラブ」を組織し、新入生と交流させることも試み、今後もその活動を継続していく予定だそうです。「学生のヨコやタテのつながりをつくる」ための試みを、実際に体験している学生はどのように受け止めているのでしょうか。チームビルディングプログラムを体験し、さまざまなことに積極的にチャレンジしている薬学部1年生のMさんに、大学生活について、今思っていることを聞いてみました。




――まずは広島国際大学の薬学部に入学したきっかけを聞かせていただけますか?


Mさん 小さい頃から体が強いほうではなくて、薬を使う機会が多かったことから薬に興味を持つようになり、薬学部を志望しました。県内進学を希望して広島国際大学を選びました。



――コロナ禍での高校生活はどのように過ごしましたか?


Mさん K先輩と同じで、行事も中止が続いて何もできなかったので、友達との思い出はしゃべったことくらいしかありません。友達も1年の頃と2年の最初のほうで話せた人くらいしかできませんでした。



――大学生活にはどんな期待を持っていましたか?


Mさん 薬学部なので、勉強が忙しくて楽しいことがないのではないかというイメージをもっていました。



――実際にはどうですか?


Mさん 楽しいです。父に、大学生のうちにいろんなことに積極的に参加してみろ、といわれたので、その通りにしています。今、人脈が広がっていろんな人と話せて、大学生活が楽しいです。



――どんなことに参加して人脈が広がっているんですか?


Mさん ピアサポートでは先輩と知り合えたし、それ以外にもいくつか部活にも入っているので上級生の知り合いも増えています。



――部活は何をしているんですか?


Mさん 大学祭実行委員会と、薬学研究会という勉強サークルのようなものと、バドミントン部です。バドミントンは僕が部長となって、6月から活動を始めることになっています。



――1年生でいきなり部長?


Mさん バドミントン部は休部状態だったのですが、僕がしたかったので大学に活動再開の相談をしました。人数が揃えば進められるというので、部員を集め、場所も確保できたので、部長は言い出しっぺの僕が務めることになったという流れです。



――かなり活発にいろんなことに取り組んでいるんですね。入学前に不安だったことはありませんか?


Mさん 僕は同級生より年齢が1つ上なので、それを打ち明けたら距離を置かれるのではないかとか、話が噛み合わないのではないかとか、人間関係については不安がありました。でも、みんな普通に接してくれるので、楽しんでいます。



――入学してすぐに2日間のチームビルディングプログラムに参加することになりましたが、そういう体験が用意されていることをどう感じましたか?


Mさん 正直に言えば、2日間も何するの?知らない人とグループワークをやってうまくいくの?と思いました。



――実際にやってみて、印象に残っていることはありますか?


Mさん 僕は1年生7人と先輩1人のグループで、最初はみんな初対面なのでぎこちなかったのですが、先輩が上手に進行してくれたおかげで、いつの間にか打ち解けて、2日目にはすっかり仲良くなっていました。1日目の最後に、宇宙に持っていくものを決めるグループワークがあったのですが、みんなと「これが要るんじゃないか、これは要らないんじゃないか」とじっくり話し合ったのが印象に残っています。



――初対面の人同士で反対意見を言い合うのはちょっと緊張しますよね。それでもお互いに意見を言い合えたんですね。


Mさん 自分の考えは言えるようになっていたので、いい話し合いができたと僕は思います。グループで出した回答が正解したかどうかという結果よりも、グループでいい話し合いができたという満足度がありました。



――その他に印象に残っていることはありますか?


Mさん プログラムの最後のプレゼントカードの交換です。普段は相手にいいところがあっても、本人にそれを伝えるというような場面はありませんよね。でも、そういう機会があったことで、自分にはこういうところがあるなとか、逆に、こういうことができてないなということがわかって、もっと自分を磨いていけそうな気がしたのでよかったですね。



――Mくんはグループの人からもらったプレゼントカードに書かれていた言葉でどんな自分に気づくことができましたか?


Mさん 「提案してくれる」とか「進行してくれるのがよかった」というメッセージが多かったです。逆に「押しが弱い」とも書かれていました。確かに自分には遠慮するところがあるので「そこまで遠慮しなくてもいいよ」と。



――すごくいい提案をしてくれているのでもっと推してくれていいよ、っていうことでしょうね。


Mさん はい、宇宙で遭難した時に必要なものを選ぶ課題では、自分がしっかり意見を言えなかったことでグループが正解にたどりつけなかったので。



――いろんなメッセージを受け取ったあとで、ご自身の中で意識するようになったことはありますか?


Mさん 自分には進行役もできると思うと自信がついて、他の場面でも積極的に発言しようという気になりました。



――チームビルディングプログラムで同じグループになったメンバーとチュートリアル演習のメンバーが同じですよね。そこではどんな活動していますか?


Mさん 週1回、先生1人と1年生7人で集まって、テーマを決めて、それについて調べて発表するという活動をしています。



――例えばどんなテーマについて?


Mさん 生活費をテーマに、電気代や食費が上がっているのはなぜかというようなこと考えたりします。自分たちが好きなことをテーマに考える活動なので、薬学とは関係ありませんが、自分が知らないことを知ることができるので面白いです。



――テーマはどうやって決めているのですか?


Mさん 僕が電気代、他の人は食費という意見があって、電気代とか食費だけだと調べるにしても限界があるので大きくまとめて生活費にしよう、というようにグループで話し合って決めました。



――なるほど、そこでMくんの提案力が活きたわけですね。同じチュートリアル演習の7人以外にも交友関係は広がっていますか?


Mさん 少しずつ増えています。自分から話しかけて話が弾んで仲良くなれた人がいたり、逆に話しかけてくれたのでしゃべれるようになった人がいたり。その繰り返しで仲良くなることはありますね。



――Mくんは5月に行われたバーベキューには参加しましたか?


Mさん はい、人脈を広げたいと思って参加しました。いつものチュートリアルのメンバーに加えて、初めての人とも話せるようになり友達が増えました。



――入学から2ヶ月で短期間に人間関係が広がっていますよね。


Mさん 他の大学に通っている友人で、今でも高校時代のメンバーで集まっている人は人脈が広がっていないみたいです。その一方で、新しい友達といる友人は人脈も広がっている印象で。学生生活はスタート時点が大事だと思いました。



――今はいろんな活動に入っていて忙しそうですが、今後はピアサポートクラブにも参加する予定ですか?


Mさん 今のところ正式には入っていませんが、次年度のピアサポートクラブの体制が固まってきたらメンバーを募集するそうなので、その時は入りたいと思っています。学生生活は6年しかないので、今できることを存分に楽しみたいです。



――人とのつながりが学業面に役立つことはありますか?


Mさん 地域創生という科目で災害について調べる課題を与えられた際、わからないことがあったのでいろんな人に聞きまくって答えを見つけることができたことがあります。人とのつながりは少ないより多いほうが情報を集めやすいんだなと実感したし、人脈が広がっていてよかったなと思いました。



――先輩とのつながりについてはどうですか?先輩から勉強のアドバイスをもらうことはありますか?


Mさん 1年生なのでまだ専門科目を学んでいませんが、基礎的な科目のことで勉強の仕方を聞いたことはあります。この先生はわかりやすいよ、など先生の情報をもらえるのも助かっています。勉強だけでなく、将来をどう考えているかも質問して、自分に進路に役立てられそうなことがないか聞いています。



――タテのつながりが自分のメリットになるし、次は自分も後輩に伝えてあげようという気持ちも芽生えるのではないですか?


Mさん ピアサポートが始まれば先輩に質問したいし、僕は不器用なのでいろんなことができるわけではないけれど、後輩のためにできることがあればやっていきたいですね。



――Mさんはタテにもヨコにもつながりを広げることに積極的ですが、その意欲の根源にあるものは何でしょうか?入学前に、お父様に人とつながることの大切さをアドバイスされたと言っていましたが、そういうことも影響していますか?


Mさん チームビルディングプログラムを通して、人と話すことは面白いと思ったし、話すことに自信がつきました。父が言っていたのはこういうことなのかな、とわかってきて、アドバイス通りにやってみようと思っています。まだ学外での活動は何もしたことがないので、きっかけあれば学外の人とも関わってみたいです。


※肩書・掲載内容は取材当時(2023年6月)のものです。

 

チームビルディングのプログラムでは、議論の盛り上がっていないように見えるグループが、何かのきっかけで見違えるように活性化することがよく見られます。それを観察していると、もしかするとある種の負のエネルギーの蓄積が、実はとても重要な役割を果たしているのではないか、と思うのです。何かのきっかけがあると、負のエネルギーの蓄積が一気に解放されて正のエネルギーに転換しているように感じるのです。

今回インタビューしたKさんは2年生、Mさんは1年生。お二人とも高校時代はコロナ禍で、いろいろなことが制限されていました。その分大学入学に際しては、情報不足で不安が大きかったように思われました。そのお二人にチームビルディングの体験は、大学生活へのモチベーションをより高める効果があったようです。それはまさに負のエネルギーの蓄積が開放されたということなのかもしれません。

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