帝京大学では2000年代半ば以降、就職氷河期に社会に出る学生のサポートの一環として、就職活動に特化したゼミ形式の科目「キャリアデザイン演習」を開講しています。現在7人の講師がゼミを担当しており、学生は志望分野に合わせてゼミを選択し、そこでの活動を通して自己実現を目指せます。担当講師によって授業の内容も進め方も異なるこの科目を統括しているのが就職課に該当する「キャリアサポートセンター」です。就職活動への意識向上を図る目的を掲げるゼミの仕組みや特徴について職員の宮田美和さんに教えていただきました。
――まずは宮田さんのことをお伺いしたいのですが、帝京大学に入職されてからのキャリアについて教えてください。
宮田さん 入職から14年間教務グループにて勤務をし、2020年4月にキャリアサポートセンターに異動しました。
――2020年4月といえば、コロナ禍に突入したタイミングですよね。
宮田さん そうなんです。実はこれが私の初めての異動で、コロナ禍での就職活動というものもまったくイメージできず、正直にいえば当時は不安しかありませんでした。
――キャリアサポートセンターでは主にはどんなことを担当されているんですか?
宮田さん キャリアサポートセンターは3つのチームに分かれています。3年生を対象にサポートする「就職支援チーム」、主に低学年次である1・2年と短大生を対象にサポートする「キャリア支援チーム」、そして、部署内の庶務的なことからキャリアアドバイザーの統括や、調査分析を担当する「調査分析・管理チーム」があります。私は異動の年に係長に昇格して、キャリア支援チームを任せられています。
――異動していきなりチームを任せられたとは、負担が大きかったでしょうね。
宮田さん 知識も経験もない中でチームを運営しないといけなくて、衝撃は大きかったです。キャリア支援チームは低学年対象のサポートなので、余計に答えが見つけにくくて。本当に手探りでチームのメンバーと一緒にやってきたという感じですね。
――低学年の就職指導とは、どういうことをされているのですか?
宮田さん 3年生から本格化する就職活動につなげるために、これをやったら効果的というような正解がわからず、手探りでやっているところもあります。とにかく早めの意識付けと、1年生のうちから「自分を知る、社会を知る」ことに取り組むよう伝えています。
――帝京大学におけるキャリア教育の概要を教えてください。
宮田さん 1年次に各学科の必修に「ライフデザイン演習」という科目があり、この科目では大学での学びの方法を習得するとともに発表やグループワークを通してコミュニケーション方法を学びます。また、就職を含めて自分の将来を考え、自覚し計画的に大学生活を送ることを学んでいきます。そのほか、自己啓発支援科目という選択科目の中にキャリア教育科目が50科目ほど開講されています。
――帝京大学には、就職活動に特化した「キャリアデザイン演習」というゼミ形式の授業があると聞いていますが、それはどのような位置づけの科目ですか?
宮田さん キャリア教育科目に位置付けられている3・4年生対象の選択科目で、グループワークや面接練習など体験型授業を行う、学部横断型のゼミです。2007年に最初のゼミが誕生してから徐々にゼミ数が増えていき、現在は7つのゼミがあります。そのうちの一つは留学生のみのゼミです。
――ゼミのクラスはどんなメンバーで編成されているのでしょうか?
宮田さん 2年生の後期に募集をかけ、希望するゼミにエントリーしてもらいます。担当教員が書類と面接による選考を行い、応募者の中から最終的なメンバーを決定しています。
――選考ということは、全員が受講できるわけでもなく、多少はゼミの人気の差があったりもするんでしょうか。
宮田さん 毎年全体で300名ほど応募がありますが、1ゼミの定員は20~25人となっているため、残念ながら選考から漏れてしまう学生もいます。様々なバックグラウンドを持った講師が各ゼミを担当し、ゼミにより雰囲気も異なるため学生は自分に合うゼミを探してエントリーしています。
――ゼミも自分たちの魅力をアピールしないとメンバーを集められないのでしょうけど、みなさん、どのように違いを出しているのですか?
宮田さん 各ゼミに紹介動画をつくってもらうほか、ゼミ見学会も行っていますエントリーする前に紹介動画を見たり、見学会で先輩から直接話を聞いたりして、各ゼミの雰囲気をつかんでもらいます。ゼミによっても特徴があり、金融就職を目指すゼミやマスコミ関係を目指すゼミなど、志望業界で選んでエントリーする人もいます。
――キャリアデザイン演習の7つのゼミのうちの一つを、弊社のスタッフ樋口が担当させていただいていますが、宮田さんは樋口ゼミの特徴をどのようにご覧になっていますか?
宮田さん 樋口ゼミといえば「チームビルディング」というのが頭に浮かびます。3年生と4年生に強固なつながりがあるのは、ゼミの活動にチームビルディングとブラザー制度を取り入れているからだろうと思って見ています。また、4年生が中心となって、役割分担をしながらテーマごとの活動にも取り組んでいるのも特徴ではないでしょうか。
――ブラザー制度とは?
宮田さん 4年生と3年生がペアになり、先輩が後輩に適宜アドバイスをするというものです。他のゼミでもそういう仕組みはあるようですが、樋口ゼミではそれがより強固に行われている印象があります。授業開始直後の4月は、4年生は就活中でゼミを欠席する学生も多いようですが、就活の合間に来たり、就活を終えた後は、3年生をすごくケアしているのを目にします。
――上下のつながりも重視しながら、チームで就職活動に取り組んでいるのがみてとれるということですね。樋口ゼミではチームビルディングのために、3年生はゼミの開始直前にチームビルディングプログラムの1日研修を実施していますが、宮田さんはご覧になったことはありますか?
宮田さん はい、見学させていただいています。役割や時間を決めてさまざまなグループワークを行なう中で、最初はどぎまぎした様子も見受けられるのですが、回数を重ねるうちにどんどん成長する姿が見られました。樋口先生の教えもあると思いますが、学生の力って素晴らしいなという印象をもちました。
――ゼミによって就職決定力に違いはあるのでしょうか?
宮田さん キャリアデザイン演習の受講生は一般学生よりも早期に内定をもらうケースが多く、最終的にはほぼ100%で就職決定しています。その中でも樋口ゼミはダントツに内定率が高いんです。今年度も5月と7月に担当の先生方にゼミ生の内定率を報告していただいたのですが、樋口ゼミは5月の段階でもかなりの内定率を上げていました。
――早期内定獲得の秘訣はどういう点にあると思いますか?
宮田さん 樋口先生のご指導のたまものだと思います。今年の前期、キャリアサポートセンターに在籍しているキャリアアドバイザーがいくつかのゼミを見学させていただいたのですが「樋口ゼミはプログラムをしっかり組んでいて、学生も積極的に取り組んでいて大変素晴らしい」と言っていました。担当の樋口先生と竹岡先生が学生の状況をつぶさに見てくださって、タイミングにあわせたプログラムを組んでいらっしゃるのが早期の内定獲得につながっていると思います。
――宮田さんは自分の就職や進路を考える活動にチームビルディングを取り入れることに、どんな影響や効果があると思いますか?
宮田さん 「社会で求められる力」として企業が挙げるのは、コミュニケーション能力、社交性、親和性といったものです。われわれもガイダンスやイベントでは「社会人になるとチームやグループで仕事をする機会は多いので、コミュニケーション能力を高めておかないと仕事が成り立たないということも多い」と学生に話しています。チームビルディングで人と関わる経験を積むのはもちろんのこと、さまざまな活動を通してチームにおける自分の役割や、自分では認識できてない自分の強みを知ることができるのもメリットだと思います。自分では気づいていなかったけど、チームのメンバーから「あなたにはこんないいところがある」と認めてもらえる場があるのが、就職活動にチームビルディングを取り入れる良さではないでしょうか。学生にとっては得るものがすごく多いと感じています。
※肩書・掲載内容は取材当時(2022年9月)のものです。
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