大手前大学では新入生オリエンテーションの一環として、組織開発の手法を活用したチームビルディングのプログラムを行っており、プログラムのファシリテーターは先輩学生が担当しています。学生ファシリテーターは「PBL特別演習」を受講し、7~8人のグループをつくってファシリテーターに必要な心構えやスキルなどを学んでいます。
今回登場してくれるのは、昨年(2021年)にPBL特別演習を受講し、今年も再び受講して、ファシリテーターのファシリテーター的な役割を担ってくれている学生です。ファシリテーションを学ぶプロセスで得た気づきが、彼らの学生生活や人間関係にどのような気づきや変化を与えているのかについても話を聞いてみました。
――みなさんは昨年(2021年)に引き続き、今年(2022年)もPBL特別演習を履修しています。もう一度、PBL特別演習を受講しようと思ったのはいつ頃か?また、その理由も聞かせてもらえますか?
Kくん 昨年の受講中から、今年も受講するつもりでいました。理由はリーダーシップを発揮したいからです。昨年は香川さんにかなり引っ張ってもらったので、今年は、自分自身の課題に挑戦するためにも、それをやるべきだと思ったんです。
――Kくんの考えるリーダーシップとは、もう少し具体的にいえば、どんな場面でどんな考え方や言動をすることを意味しているのでしょうか?今年はどういうふうにしているのですか?
Kくん 僕は将来起業したいと考えているのですが、会社で例えると、雇用している社員のことを第一に考えられる人が上に立つべき人だと思っています。それはPBLの中でも同じだと思うんです。以前の僕は自身の考えが強く、自我を出すタイプだったのですが、今の僕が考えるリーダーシップとは、チームのメンバーそれぞれが現状をどう思っているかを把握して、それに対する改善策を考えられることかなと思っています。
――なるほど。他の人はどうですか。PBLに再び参加したきっかけや動機は?
Fくん 自分も昨年受講している時から、次もやろうと思っていました。要因はいくつかあります。一つは、自分の人生の目標でもある「人をひきつける存在でありたい」に向けて、現場経験を積みたいという思いがあったこと。もう一つはシンプルに、昨年のことに後悔があったから。辞退者や参加できないメンバーに自分から100%関われたわけではなかったし、「ファシリテーションってこういうことか」と、終わってから気づいたことがすごく多くて。自分を知って、相手を知って、相互理解を深めて目標を達成しようとする中で、全然できてなかったわけではないと思うんです。ただ、振り返ってみると、理解はしていても、行動できていたか言われると、具体的なエピソードが何も思い浮かばない。ということは、それを「やっているつもりになっていた」ということだと思って。昨年の経験で学んだことを活かしてみたくて、もう一度受けることにしました。
Yさん 私も昨年ファシリテーターをした時から、今年もやると決めていました。昨年はついていくだけで精一杯でしたが楽しい経験もさせてもらえたので、そんな場に自分が先輩という立場で入ったらみんなにどんなことができるか試したかったのもあります。
Mさん 私は、PBL特別演習の参加者が募集された時です。昨年のことを振り返って、大変だったことよりも、いろいろ学べたとか達成感があったとかのほうが思い出されたので。また、昨年は先輩に頼っていた部分が大きかったので、今度は自分の力でどこまでできるのかやってみたいとも思いました。将来は福祉関連の仕事につきたいので、ファシリテーターをする時の「促し」や「相互理解」といった姿勢が将来の役に立つのではないかという思いもありました。
――学部の専門分野とは少し異なるようですが、なぜ福祉分野に進もうと考えているのですか?
Mさん 私は昔から自分を出すのが苦手で、大人に一言言えば終わるようなことを言い出せないような子どもでした。大学に入って、将来のことを考えた時に、子どもの悩みを解決してあげられる児童養護施設とかスクールソーシャルワーカーといった児童福祉関連の仕事につこうと思ったんです。
――なるほど。ファシリテーションスキルが相談者との関わりに活かせそうというのが動機だったということですね。他のみなさんにも、PBL特別演習で得た気づきが、学生生活や人間関係に変化を与えているようなことってありますか?
Fくん 自分は3年の春から就活を始めて、夏頃からインターンシップで関わらせてもらっている会社があるのですが、そこでファシリテーターでの「促し」の経験や、自責に落とし込むとか、人を見捨てない、といった考え方が役に立っています。インターンシップ中にチームで2日間かけて自分の人生を考えようというワークをした時も、自分がチームにどんな影響を与えられるかを考えて、相手を答えに導くのではなくて、促すことで、その人が自分で発見したり見つけたりできたという感覚を持ってもらうよう心がけました。自分の促しによって、相手を深掘ることの楽しさや、人と関わることで相手も自分も成長できることを体感できました。ファシリテーターをしたことで、人を促すとか導くとかの基準を見つけられたことが、就活に活かされていますし、今も日頃から意識してやっていることです。
――Fくんは意識的に相手に対して「問いかけ」を使っていますよね。
Fくん そうですね。自分で考えて、自分の答えを見つけてほしいと思っているので。
――他のみなさんはいかがですか。
Kくん 僕は自己理解を深めることもそうですが、相手を理解する大切さを学びました。そのことで、日々の生活の中でも、相手の成長の可能性が0.1であっても、0とみなすようなタイプだったのですが、0.1以上と考えることを心がけるようになりました。
Yさん 私はPBLに参加して、これまでの人生で出会ったことがない分野の人に出会えて、こういう人やこういう考え方もあるんだと知ることができました。今までの私はすごく狭い人間関係の中で20年間生きてきていたので、新しい人と知り合うのがすごく久しぶりのことでした。特にPBLでは、今までこういう人と出会ったことがなかったというタイプの人が多くて。いろんな考え方の人がいるのを知って、考え方も広がったし、人づきあいも変われたと思います。
Mさん 私は自分に自信がつきました。これまでは、自分の短所をネガティブに捉えがちだったのですが、短所も活かせるんじゃないかと思えるようになってきました。以前は話し合いで人と意見が違うと引っ込めたり、自分がやりたいことがあっても他にやりたい人がいたら手を挙げることができませんでした。でも今は、自己主張できるようになってきたと感じています。
――自己主張できてよかったと思えた経験はありますか?
Mさん 演劇をつくる授業の時に、「脚本を書きたい人はいませんか?」と言われて、すごく迷ったのですが、やってみたい、と思って手を挙げて、1本書いてみたんです。それがすごく楽しくて。次に別の作品を作ることになった時も、やりたいと言うことができたので、挑戦できてよかったなと思いました。
※肩書・掲載内容は取材当時(2022年3月)のものです。
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