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新入生のために、チームのために、自分のために、私たちがしたいこと【大手前大学】5-3

大手前大学では新入生オリエンテーションの一環として、組織開発の手法を活用したチームビルディングのプログラムを実施しています。そのプログラムのファシリテーターは、「PBL特別演習」と言う集中授業を受講した学生が務めています。新入生がファシリテーターを務める先輩の姿に憧れて、翌年のファシリテーターを志願したり、一度ファシリテーターを経験した人が翌年はファシリテーターのファシリテーター役を務めたりするなど、取り組み全体が学生の成長を後押しする機会となっています。今回登場する4人は、PBL特別演習の受講が2回目で、各グループやクラス全体のファシリテーター的な役割を果たしてくれている学生です。彼らに、グループのチームビルディングのプロセスを見ながらどんなことを感じ、考え、行動しているのか、語ってもらいました。


――みなさんは、昨年(2021年)、PBL特別演習を経験して、今年も引き続き、PBL特別演習に参加してくれています。それぞれバラバラのグループに入ってもらっていますが、自分のグループについてどう感じていますか?ここまでのプロセスについて感じていることを聞かせてもらってもいいですか?


Kくん 僕のグループには留学生が2人いて、言葉の壁に直面しました。実習の後でよかったところ・悪かったところについてフィードバックを行う時間があるのですが、日本語の読み書きが難しい留学生は、いつも発表が一言で終わってしまっていたんです。僕の方からも伝えたいことが伝わらなかったり、自分の伝えたことを相手がどう捉えているのかわからなかったり…。でもきつく言えば辞めてしまうかもしれないという不安もあったりして。そのことをFくんに相談したところ、僕がやってみるよ、と言ってくれたので、グループの活動に関わってもらったんです。


Fくん 他のグループに入ってもいいのかなと思ったのですが、Kくんから危機的状況だと聞いていたので、ちょっとやってみるよ、という感じで入らせてもらいました。



――そんなことがあったんですね。Fくんの様子をみてKくんが感じたのはどんなことでしたか?


Kくん 伝えることも大事だけど、それよりも伝えやすい環境づくりが大事なのかなと感じとりました。ただ、それは僕の捉え方なので、実際に関わってくれたFくんは、どういう意図でやってくれたのかを、僕も聞いてみたいです。



――では、Fくんに、その時どんなことを考えて、どんな場面でどんな風に関わることにしたのか、本人に解説してもらってもいいでしょうか?


Fくん 確かに話しやすい環境をつくることは意識していました。でも、相手は留学生だったので、まずは相手がこの環境をどう感じているのだろうとか、どんな立場にいるんだろうといったことはよく見ましたね。

僕が入ったのは昼休みのタイミングだったのですが、その子は次に発表する順番なのに、カンペの準備などもできていませんでした。僕がまずやったのは、アイスブレイクで「自分はこういう人ですよ」という自己開示をして、共通点を見つけて安心感を与えるということです。さらに傾聴力と、笑顔や頷きといったノンバーバルコミュニケーションを意識して、相手に気持ちよく話してもらえるように心がけました。すると、相手も話してくれるようになったんです。相手がどれくらい自己開示してくれたかは分かりませんが、「そこまで話してくれてありがとう」と相手を認めて感謝する言葉も伝えたうえで、悩んでいることはないか尋ねてみたんです。「次は発表だけど大丈夫?不安なことはない」と聞いてみると「ここがわからない」と言ってくれて、相手の課題を引き出すことができたんです。その先は時間をかけるしかないから、この漢字はこう読むとか、この説明はこうした方がいいなどアドバイスに時間を費やしました。さらに、「あなたが今やっていることは、新入生を喜ばせられるし、チームメンバーにいい影響を与える」という話もして、「あなたはここに居ていいんだよ」という存在意義も伝えました。発言しやすい環境づくりもそうですし、これまでに学んだコミュニケーションの取り方も活かして対応しました。



――Fくんの種明かしを聞いて、その時のことを思い出してみると、Kさんはどんな風に感じますか?


Kくん 一つポイントをあげるなら、「時間を費やす」。ここができていなかったのかなと思いました。面倒臭がっていたというより、寄り添えていなかった。何度も言っていますが、自分の悪いところなのですが、相手のことを決めつけていた部分があったと思います。今の話を聞いて、寄り添って、時間をかけることで、Fくんが大切だという「相互理解」に至れるのだろうと思いました。

メンバーとそれほど長い日々を過ごしているわけではないし、相手が何を考えているかは分からないと思って、僕はこれまで理解しようとするステップを飛ばしていました。表向きの言語が伝わりにくいというところだけ見て、見捨てているつもりはないのですが、「ちょっとムリ」と妥協しているようなところもあったと思います。自分の課題も見つかったし、現状ではいい方向に向かっているので、このまま本番を迎えられるようにしたいです。



――すごくいい気づきを得られたようで、この後のグループの成長も楽しみですね。他の人はどうですか?


Yさん 私は体調をくずしてしまって、初回は参加したんですが、その後3回ほど休んでしまいました。それは悔しかったのですが、メンバーからは「経験者のYさんが休んでいたので、自分たちでやらなければ、と気を引き締められた」と言ってもらえました。久しぶりに参加した時も、みんなが初日よりも団結していたし、しゃべらなかった人が自分の意見をたくさん言えるようになっていたことがうれしくて。今でも意見の食い違いやモチベーションの差はありますが、徐々にですが確実に、みんなの頑張ろうという気持ちは近づいてきていると感じます。


Mさん 私のグループの人への第一印象は「おとなしめ」で、グループを組んだ時に、よくも悪くも自分に似た人を集めてしまったかなと思っています。何かする時にも一歩引いたり、「いやぁ私の意見なんて」と謙遜したりする人が多い印象です。私が言ったことは理解してやってくれるのですが、全部私が指示を出すのはPBLの授業の中では違う気がしていて。どこまでがサポートや促しになるのかを悩んでいます。みんなで意見を出し合う時も、「私から時計回りに言っていこう」というのは簡単ですが、できれば自発的に意見を出し合って欲しい。と言いつつ、時間は限られているのでスムーズに進行させないといけない面もあるので、そのあたりを悩みました。どうしたらもっとみんなが言いやすい環境をつくったり、自主性を促したりできるのだろうと焦った時期もありましたが、今は積極的に発言できないのもその人の個性と捉えられるのかなと思うようになりました。まだまだみんなを活かしきれていませんが、最近は、「今、メンバーが集まっているのでこの練習をしたい」といった、意見も結構でるようになって、かなりグループ活動も活発になってきたと思っています。


Fくん 自分のチームは、自分なりに、2ステップくらいは成長できていて、すごく安定していると思っています。こちらが何かを促さなくても、自発的に取り組んでくれたりするので、感心するとともに、自分は何をこのチームのためにできるのか考えています。そこで今は「かけがえのない」をテーマに、グループのメンバーの成長にコミットとしたいと考えています。

今回のPBLで自分が一番重要だと思っているのは相互理解、相手を知ることです。今はまだまだ相互理解が浅く、「理解しているつもり」で終わっているのかもしれませんし、グループ内の誰かが落ち込んでいる時に手助けできているかといえば、それもまだできていないように感じていて。しかも、グループ内では一人ひとりの強みや個性が出せていても、枠の外に出たら同じようには活躍できない気もします。それは一人で戦っているからだと思うので、別の場所でも助け合える仲間をPBLでつくって欲しいとも思っています。みんなのレベルが高いと思うからこそ、相互理解にコミットしていきたい。僕にとっても挑戦になりますが、相互理解によってかけがえのないチームになって欲しいと思っています。



――どんなチームづくりをするかは、みなさんに任せているので、思うようにチャレンジしてみてください。約1ヶ月後の本番に向けて、最後に一言ずつ意気込みをお願いします。


Kくん まずは本番を成功させること。そして、自分がそうだったように、今年PBLを受けた人の中から来年も受けたいと思ってくれる人が出てきてほしいしですね。そのために、自分はまだグループにやってあげられることがたくさんあると思っているので頑張ります。


Mさん 私は3つの目標があります。まず、新入生にキャリアデザイン0.5を受けてよかったと思ってもらえて、それを受けたことで大学生活をよりよいものにしてほしいということです。2つ目は、グループのメンバーにPBLを受けてよかったとか、少しでも成長して変われたと思ってもらえること。3つ目は、私自身も変われた、成長できたと思ってみんなと達成感を味わいたいです。


Fくん 僕たちの第1の目標は、キャリアデザイン1につながるキャリアデザイン0.5を新入生に受けてもらって、大学ではこんなふうに学ぶんだとイメージをもってもらうことです。そして、2つ目の目標は、自分のチームが相互理解を深めること。人と本気で向き合うとこんなドラマが生まれるというものを一緒につくりあげ、最後にみんなでありがというといえるような、そんなチームにしたいです。3つ目は、自分自身の課題として、もっとチームにインパクトを残せないかと考えています。自分は、先頭にたって行くぞ!という感じではなく、縁の下の力持ちタイプ。人の話を聞いて助けるといった気遣いはできるのですが、もっとみんなに良い影響を与えるという意味でのインパクトを残せたらと思っています。そして最後に、こういう影響を与えられたと堂々と言えるようなものを見つけられたらいいなと思います。


Yさん 私もまずは1年に、これから大学生活でこんなことをするのか、楽しみだなと思ってもらいたいです。そして、昨年の私のように、グループのメンバーにもPBLを受けてよかったと思ってほしくて。学生ファシリテーターをすると1回だけでも成長できるけど、私は2回目も参加するとさらにステップアップできるんじゃないかと思っているので、来年もしたいと思わせられるような本番を迎えられるように頑張ります。



※本番の様子は大手前大学のホームページ>最新情報>2021年度のお知らせ の中でも紹介されています。

◆2022年03月31日:新年度新入生キックオフプログラム(zoom開催)がスタート


※肩書・掲載内容は取材当時(2022年3月)のものです。

 

 大手前大学の学生ファシリテーター達は、最初は新入生としてプログラムを体験し、翌年以降にファシリテーターとしてプログラムを体験します。今回取材をさせてもらった4名は、さらにもう一度、今度は学生ファシリテーター達のファシリテーターとしてさらに学びを深めていました。その過程は決して平坦なものではなく、意見をぶつけ合ったり、夜通し語り合ったり、自分の気持ちを打ち明けたメンバーから、自分の言葉でみんなに伝えた方がいいと、ある種突き放されたり…。そういったやり取りや経験がチームビルディングに繋がり、チームビルディングのパワーが個々人のモチベーションや主体性をさらに刺激しているさまが、今回の取材でよくわかりました。まさにタックマンモデルだな、と感じました。そして彼らのこの深い体験は、大手前大学の新入生チームビルディングプログラム「キャリアデザイン0.5」の価値を、彼らが頭だけではなく身体でも理解することに繋がっているのではないかと思いました。

 また、彼らの顔は授業の中で見せている顔だけではない、いや授業の中で見えているものが、それぞれの存在のほんの一部であることも強く感じました。ロジャースは「共感的理解」の大切さを説いていますが、生半可なものではないな、と痛感したインタビューとなりました。

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