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自信をつけた、モチベーションが上がった、学生のやる気の受け皿のつくり方とは?【文教大学】連載2-2

文教大学国際学部では、新入生の大学適応をスムーズにするために、2016年度入学者からチームビルディングプログラムを活用。新入生交流会で「学部リーダー」と呼ばれる先輩学生がファシリテーターを務め、プログラムを実施しています。導入から8年を迎え、チームビルディングの効果については一定の評価を認めながらも、運用や学生生活への活用など、いくつかの課題もあるようです。2024年度から新入生交流会を担当されている久保庭 慧先生(文教大学 国際学部 専任講師)に現状感じておられる課題について聞いてみました。





――学生ファシリテーターの研修についてはどう感じていますか。


久保庭先生 (チームビルディングプログラムを)受ける側とやる側では意識が全然違うので、そのスイッチの切り替えが難しそうだなと感じるところもあります。最近の学生はゼミなどではもちろん、通常の講義などでもグループワークがあることが多く、大学生活のいろいろな場面でファシリテーションを求められる機会が増えています。ラーニングバリューさんが提供されるこうしたプログラムは貴重だと思うのですが、実は学生自身は結構慣れてはいる部分があるんですよね。ファシリテーターをやってと頼んでも割と緊張せずにやれている感じはあります。

 本学は教職志望で入ってくる学生が多いのが特徴で、国際学部にも英語科や社会科の教員を目指して入って来る学生がたくさんいます。実はこの研修の運営を引き受けてくれる学生も教職課程の学生が多いんです。見ていると教職をやっている学生は模擬授業などの機会も多いので、全体的にファシリテーションが上手だなと感じています。



――それは学部の宝ですね。プログラムを通して先輩学生(学部リーダー)の変化を感じることはありますか?


久保庭先生 プログラム自体はすごく計算されていて、確実に今必要とされている能力を身につけられるものだと思うのですが、研修で培った能力を長期的に伸ばしたり、活かしたりしていく、という面では難しさもあるかなと感じています。といいますのも、新入生交流会のために春休み期間中に集中して研修を受けてもらって、4月に本番を迎えて、終わったら「お疲れ様でした」になってしまう。



――せっかくファシリテーションを学んでも、新入生交流会しか発揮する場がないということですね。


久保庭先生 学部リーダーは2、3年生が中心になって務めてくれるのですが、3年生になれば就活等も始まって忙しくなってしまいますし、瞬間最大風速的にいろんな能力を身につけてファシリテーションを実践してみるという面では貴重な体験をさせてもらっているのですが、長期的な視点からここで得た能力を大学生活にどう活かすかについてはやや課題も見られるかなと思います。

もちろん、どちらかといえばその責任は教員の側にあるような気がしています。リーダーとして引っ張ってくれた学生の意欲と能力を風化させずにどうやって持続させていくかという点に課題を感じており、そうさせない仕組みづくりができたらいいなとおぼろげには考えています。



――久保庭先生は学内でそんなミッションもお持ちなのですか?


久保庭先生 オープンキャンパスの担当などもしています。本学では年4回オープンキャンパスを行っているのですが、来てくれる高校生は現役学生の生の声をたくさん聞きたいでしょうから、オープンキャンパスでは学生自身にいろんな話をしてもらったり、簡単なアクティビティをやってもらったりしています。一例ですが、学部リーダーを務めてくれた学生たちにそういうことを積極的にお願いするような流れをつくっていけたらいいのではないかと思っています。



――オープンキャンパスのスタッフなどは、研修を受けて、ファシリテーターとしての実践も経て、モチベーションが上がった学生のほうが、高校生への対応にも期待ができそうですね。

実際、弊社とお付き合いのある大学様の中にも、そういう事例があります。私の担当校では、新入生対象にチームビルディングプログラムを実施する際のサポートをしてくれる先輩学生を育て、4月だけではもったいないので、そのメンバーをオープンキャンパスなどの行事でも活用されています。また、ある大学の薬学部では、先輩主催で化学系の難しい科目などの勉強会を行っています。


久保庭先生 そういうケースもあるんですね。私が課題に感じていることはもう一点あって、ファシリテーターを務めてくれる学部リーダーを募集する時。新入生交流会はだいたい9クラスで行うのですが、1クラスあたり3人のファシリテーターを配置したいので、30人くらいは確保したいんですが、それを集めるのに苦労しています。

 今日も研修後のアンケートをラーニングバリューさんと共有しましたが、受ける前は不安を感じている学生が多くて、「当日まで研修に参加したくなかった」という学生なんかもいたります。でも、そういう学生ほど「受けてみたら楽しかった」といってくれることも多いです。なかなか学生が集められない背景には、募集時にどんなことをするのかが伝わっていないこともあるようです。また、広く声掛けするのはもちろんのこと、先輩からの声も大事になってきます。一度経験した先輩が「すごくよかったよ」と口コミで伝えてくれるような仕組みがあればいいのではないかと思うんです。



――なるほど、単に人数を揃えればいいというのではなく、前向きな動機を持って参加してくれる層にアプローチできれば、量も質も高めることができそうですね。

裏技かもしれませんが、私の担当校では、学生ファシリテーターの活動を単位認定する仕組みにしている大学もあります。「PBL特別演習」という枠にあてはめて30回分の授業とみなし、春休み期間に集中的に研修を行い、4月に新入生を迎えて本番を行ったのち、単位を出しています。それ以前はアルバイト代を出してスチューデントアシスタントとして募集していたのですが、今はその倍ほどの人数が集まるようになっています。


久保庭先生 どうなんでしょうか。自発的に集まっていた時と、単位という外的な強制を与えた時とでは、学生の動きは変わってきますか?



――その成否は集まってくれた学生のチームビルディングにかかっているなと感じています。それがうまくいくと、当初は単位目当てで参加していた人が、「新入生のためにがんばりたい。新入生に喜んでもらえて、自分の力を高めることができて、そのうえ単位までもらえる」というスタンスに変わっていくんです。


久保庭先生 なるほど。そういう案もよいのでしょうが、できるだけ自発性を大事にしたいという思いがあります。むしろ教えていただきたいのは、「初年次の大学生活への円滑な導入のため」という目的以外に、どういうシチュエーションでチームビルディングプログラムが応用されているのかということです。



――違う角度でいえば、ある大学では、早期入学決定者向けに入学前に交流会を行い、チームビルディングプログラムを取り入れておられます。


久保庭先生 ということは、全員じゃないんですね。まだ入学者が決まる前にやっているということですよね?



――はい、参加は入学者の4分の1くらいなんです。その大学でも各教員が担当する初年次ゼミの時間があるのですが、15回の授業の最初の4回にチームビルディングの要素を取り入れて設計しています。先生がファシリテーターとなってさまざまなプログラムを行うのですが、そこで入学前に一度プログラムを体験していた学生がリーダーシップを発揮して、先生にも協力して授業を活性化してくれるんです。

初年次ゼミって、いろんな先生が各々のやり方でクラスを運営していくものじゃないですか。その大学では、進み具合を揃えようとすると窮屈になってしまうし、プログラムを揃えると先生方が受け身になってしまう、ということに悩みを感じておられました。ですが、そういう方法をとると、進行だけを構造化すれば、運営は教員とクラスにゆだねられるし、先生たちにもファシリテーション力がつきます。初年次は学生さんが主体となってチームをつくり、自らのモチベーションを高める時間となり、2年次以降のアカデミックなカリキュラムへとつなげているので、かなり授業をやりやすくなっています。


久保庭先生 入口だけでなく、就職活動などにも(チームビルディングの)応用事例はあるのでしょうか?



――あります。まさに就職では、自分に自信を持って社会に出ていくということが非常に重要になるので、それに向けたプログラムもあります。現在弊社で提供しているプログラムの一例でいえば、大学生活の棚卸しを兼ねて参加者同士でコミュニケーションをとり、自分の持ち味に気づき、過去と未来と自分をつなげて語れるようにするというようなこともやっています。2日間のチームビルディング研修に近い内容ですが、キャリア支援などの目的に応じてカスタマイズしています。


久保庭先生 本学の学生にもそういうプログラムであれば良いかもしれないですね。



――自信をなくす時というのは、自分で自分の枠を狭くしてしまっていることが多いのはないでしょうか。そういう時に、何らかのアクティビティを行い、それに対して他者からフィードバックをもらうことができれば、「自分でもこんなことができるんだ」という自信になることもあります。

話題がかなり脇道にそれてしまいしたが、今後の新入生交流会についての展望をお聞かせください。


久保庭先生 まずは学部の他の先生方の理解を得ながら、これまでの取り組みをある程度定着させていきたいと思います。もう少し先のことについては、少し抽象的ですが、教員側の責任として、学生の学びがその場限りで終わらない仕組みづくりをうまくつくっていけたらと思っています。



※肩書・掲載内容は取材当時(2024年3月)のものです。

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