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【清泉女学院短期大学】連載1-2/学びを「補う&引き出す」ための初年次教育プログラム

更新日:2020年4月28日

清泉女学院短期大学の幼児教育科では、特色あるカリキュラムのもとで保育者養成を行うため、2008年より『保育者養成のための初年次教育プログラム』をスタートさせています。カリキュラムの見直しが必要だと考えるようになった背景で、どんな現象が起きていたのでしょうか?短大が抱えていた課題感について、幼児教育科科長 西山薫先生に当時のことを振り返っていただきました。





――初年次教育プログラムをスタートさせる前の2006年に、弊社でブランド力調査を行いましたが、そもそもどんな課題意識があって調査をご依頼いただいたのでしょうか?


西山先生 実は当時、学内では幼児教育科の将来を考えて、4年制大学にするかどうかという議論があったんです。私は4大へ移行する方針になるのかなと思っていたんですが、調査のとき、ラーニングバリューさんから「なんのために4大にするのか?」と問いかけられたのです。その時の対話の中で「4大になることだけが、大学が生き残る道ではないはず。清泉さんは保育者養成を通して、学生たちにたくましく生き抜く力を身につけさせているんですよね」と指摘され、確かにその通りだと思いました。


卒業生には、ずっと保育者を続ける人もいれば、転職や早期離職する人もいる。結婚・出産も含めて、20~30代の卒業生は保育業界に限らずさまざまな仕事やライフステージにいる可能性が高いんです。ですから、大学は保育者養成を行っているんだけど、それを通して学生に人生を自分で生き抜いていける力や、自分で自分を高める力を身につけさせている、ということに思い当たりました。



――4年制大学移行を検討されたのは、入試や就職などの面で課題を抱えていたからですか?


西山先生 いいえ、そういうわけではなかったのです。就職先からの評判も落ちてなかったし、志願者もそんなに減ってなくて、入口と出口は何の問題もなかったんです。当時、清泉はカトリックを背景にした厳しい躾・習慣を重んじる女子教育を行うことで信頼を得ていました。ただし、ブランド力調査によれば、その評価は高校現場を含めた保護者世代からのもので、将来的にはどうなるかわからないということでした。


保育者養成カリキュラムというものは、国の定めの通りに行っているのでどの学校も同じなんです。そこにどんな仕掛けを施すかが教育のポイントになるのですが、当時の清泉にはそういうものがありませんでした。システマティックに金太郎飴のような保育者を育てるだけじゃなくて、卒業後の人生を自分で組み立てていける力を学生に身につけさせ、なおかつ保育者養成校として他校との差別化を図れるような特色が必要だと思うようになったんです。

もう一つは「これを教えて実習に行かせたら、現場でなんとかなるだろう」という予定調和的な考え方への反省です。それまでは「教えておけばなんとかなる」というある種の楽観的な見方をしていたのですが、ある頃から学生の様子を見て、どうもそれが効いてないのではないかと疑いはじめたんです。


学生に向き合うと、どうしても良い意味や悪い意味で目立つ学生に目が向いてしまいます。それも重要なことなんですが、多くは真面目で言われたことはちゃんとやる中間層の学生です。自分たちの教えたことが学生の中でどう受け止められ、理解されて活用されているかはブラックボックスになっていて、中間層に意識が向いていないのではないか。「実習にさえ出しておけばいい保育者になる」なんてことはないのだから、中間層をいかに底上げするかを考えるようになりました。

それで、学生の質を高めるための仕掛けとして、入学前教育と初年次教育の充実を図ることにしたのです。



――――地域や保育業界からの信頼や期待に応え続けるために、4大になるのではなく、輩出する人材の質をあげる道を選んだ、ということですね。ここまで伺ったところ、初年次教育にとどまらず、学生の様子を見て、各段階でタイムリーに次の学びのステップを用意されている印象を受けます。


西山先生 保育者の資格取得に必要な実習の量は法律上定められています。これまでは、カリキュラムを修了させて卒業させるだけで、なんとか保育者養成をできていたのです。ところが近年、所定のカリキュラムだけでの養成では難しくなってきた実感があり、“体験を補うリメディアル教育”が必要だと考えるようになったのです。



――保育者になるための『100の体験』も“体験を補うリメディアル教育”の一環なのでしょうか?


西山先生 これは細かい体験内容については門外不出なんですが、セミの抜け殻を10個集めるとか、ムシの匂いを嗅ぐとか、100個の体験をしてもらうというものです。子どもと一緒に遊ぶなら、まずは自分でも体験してほしいですから。また、副産物として、友達と一緒にやったり、あるいは誰かの協力を得てやったり、“他者とのコミュニケーションをとる体験”も生まれる可能性があるんです。この“体験”というものを本学の教育の差別化のポイントだと考えています。



――ぱっと見る限りは昔の子ども遊びを中心に体験を促しているように見えますね。


カード形式のファイルになっていて、表に体験する内容が書かれており、裏に学生が体験した感想を書いたり、写真を貼ったりするようになっている
カード形式のファイルになっていて、表に体験する内容が書かれており、裏に学生が体験した感想を書いたり、写真を貼ったりするようになっている

西山先生 特定の季節にしかできない体験もあるので、各自で計画を立てて1年間かけて取り組んでもらっています。

受験の面接で「100の体験をやりたい」といって入学する学生もいます。ですが、「やりたい」はずが、100もあるのでいつの間にか「やらなくちゃいけない」に変わってしまうという難しさはあります。


何かをするには何かが足りない、と足りないことを探すと課題がいっぱい見つかってしまう。すると入学前教育や初年次教育で、学生も教員もやらなきゃいけないことが増えていって大変になってしまう。だから、リメディアルには補うだけでなく、学生が「楽しい、もっとやりたい」と感じて、やる気や能力を引き出す仕掛けをつくらないといけないんじゃないかとは感じています。



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