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【清泉女学院短期大学】連載1-3/学びを「補う&引き出す」ための初年次教育プログラム

更新日:2020年4月28日

清泉女学院短期大学の幼児教育科で2008年からスタートした『保育者養成のための初年次教育プログラム』。これは保育者養成において学生に足りないものを「補う」(リメディアル)だけでなく、意欲を「引き出す」ことを重視したプログラムになっています。どのように意欲を刺激する仕掛けを用意しているのか?実践するうえで障壁となっているのは何か?プログラムを牽引する幼児教育科科長 西山薫先生に聞いてみました。




――いまの形の初年次教育が始まって11年。先生方はみなさん協力的なようですが、これまでの取り組みの過程で反発を受けることはなかったのですか?


西山先生 ありますよ。「そういう仕掛けに力を入れるより、学生の自然なやる気を重視すべきだし、サークルとかボランティアとか学生ならではのことをすべきではないか」という声もありました。ですが、サークルやボランティアをやる人は一部に限られるので、そういうチャンスを全員に与えるにはやはりこちらからの仕掛けが必要なんです。

それに、教員側の準備も忙しくて、けっこう負担もあると思います。負担軽減は課題なのですが、そのためには学生が自主的にやってくれて、こちらが安心して任せられる場面をつくらねばなりません。今後のことについては、学生のやる気を引き出すにはどうすればいいかにも焦点を当てて検討しています。



――お話を聞いていると、西山先生が課題を感じているのは学生の“能力”よりも“意欲”のような気がしています。意欲に着目されるのはなぜですか?


西山先生 保育の現場で求められているものって、こどもの意欲を引き出したり、見守ったり、あるいは一緒になって楽しむといった心の動きですよね。心の動きをたくさん求められる現場であるし、気づきも求められる。保育者、学生自身が「やりたい」という気持ちを表現したり、子どもと一緒になって楽しんだり、心の動きが求められる世界なんです。だからベースにあるのは気持ちなんです。

かつて幼児教育科の学生はよくボランティアをやっていたんですが、ある時からアルバイトをする学生が多くなってきちゃったんですよね。でもそれは、やりたくないわけじゃなくて、機会さえあればそこに飛び込む学生は出て来るので。学生がやりたいことをやれる環境をつくることが、初年次教育のベースになっているかなと思います。



――私が最近興味を持っているのがエドワード・デシの自己決定理論です。「動機づけには外発的なものと内発的なものがあり、単位が出るとかお金がもらえるといった外発的動機づけよりも、課題に喜びや満足を感じる内発的動機づけによる行動のほうが、持続するし質も高い」というものです。この内発的動機の条件としての基本的欲求の中には「自律性」と「対人交流」があるのですが、そういうことは意識されているんですか?


西山先生 そういう理論は意識していないけど、結果としてそうだなと思いますよね。『100の体験』も『保育のフィールドワーク』も、初年次教育プログラムに組み込まれているのでやらなきゃいけないのですが、どういう気持ちでそれに臨むか。最初はめんどくさいと思っていたけど、結果としてもっとやりたくなったとか、そういう感情が生まれてきたら良いんじゃないかなと思います。



――初年次教育への取り組みを通して、学生の気質に変化を感じることはありますか?


西山先生 この春から、『自分発見スタートセミナー』のときに、幼児教育科のアドミッションポリシーに掲げられている保育者に必要な様々な資質について、それらが今の自分にとって必要だと思うかどうかをアンケートで聞くようにしたんです。その結果、新入生が「学生生活を通じて身につけたいと考えていること」で一番大きいのは表現力、次が主体性、実行力、そして自己肯定感だということがわかりました。その4項目って、アドミッションポリシーの中でも保育者として望ましい資質として掲げているのですが、いまの一年生は、大事だけど自分に足りないことだと感じているようなんです。


自己肯定感が弱い。そして、受け身。やりたい気持ちはあるけれどなかなか一歩踏み出せない。声が小さいとか表情が乏しいといった表現力の低下。本当はそんなふうに自分に自信がもてない学生にちょっとした成功体験を積み重ねてもらうには、ボランティアが一番いいんです。ただ、そこに出てもらうには仕掛けも必要で。学生が主体的に取り組む活動を通して、自分をできるだけ良い方向に変えていけるようにしたいとは考えています。



――学生の自己肯定感が低い、という課題を感じておられるのは、貴学に限らず他の大学でも多いように思います。初年次教育などで他者との関わりを多く持ちながら、自己肯定感を高めていくのは、保育者として必要な素養を身につけることにもつながりますよね。


西山先生 ただ、ちょっと不安なのは、これは本学だけの問題じゃないんですが、いまの若者は人と関わる仕事に対する面倒くささをちょっと感じてるんじゃないかなということ。もちろん教育、保育の現場が厳しいことの裏返しでもあるんだけど、全国的にみても保育者志望者が減っているんです。YouTuberやゲームクリエイターとは違って、生身の人間と関わる仕事の面白さや楽しさを感じる学生もいるんだろうけど、人と関わるのは面倒くさい、という意識をもたれることへの厳しさは感じています。



――人と関わること自体が敬遠され始めているということなのでしょうか?そうなると、グループで協力しながら何かに取り組むという授業自体が成立しなくなってしまいそうに思えますが。


西山先生 最近の学生を見ていると、10~20人で何かをやろうとするとサボろうとする人が出てきたり、その作業の量を均等に割って「私はこれをします/これをしました/はい終わり」という人が多いように感じます。全然グループじゃない、共同作業じゃない。

そこで、私が担当する保育セミナーのグループでは、10人のメンバーを3,4人のグループに分けて活動をしてもらっているんです。3人だと協力しないといけないし、サボれない。

誰一人として欠くことができない中で、自分がやらないといけないという経験をさせるには10人では多いし、ましてや40人サイズのクラスは大きすぎるんですよね。



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