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【清泉女学院短期大学】連載2-1/深い学びを引き出す教員のファシリテーションとチームワーク

更新日:2020年4月28日

キリスト教系の短期大学で、長年にわたる保育者養成の歴史と実績をもつ清泉女学院短期大学。特色のある保育者養成プログラムの構築に取り組む一環として、2008年より『保育者養成のための初年次教育プログラム』をスタートさせています。ただでさえ、国家資格取得のためのカリキュラムが目白押しのなか、現場で教育に携わる先生方は、たくさんの行事や実習を組み合わせた同大独自の教育をどのように受け止め、考え、実践していらっしゃるのか? 幼児教育科 専任講師のニ方龍紀先生に聞いてみました。



――まずは先生のプロフィールについてお聞かせいただいてもいいでしょうか?


ニ方先生 僕は福祉社会論が専門で、清泉に来て7年になりますが、ここに来る前は東京の大学に社会福祉士課程の実習助手(実習指導員)として勤めていて、その前は大学や専門学校で非常勤講師等として勤めていました。



――そもそも福祉に興味をもったきっかけは?


ニ方先生 大学では社会学を学んだのですが、社会問題にどう取り組むのかという視点で福祉問題に関心をもつようになりました。大学院では福祉社会学が専門の先生のもとで学びました。福祉社会学というのは、子どものことも高齢者のこともそうですが、社会のいろんなところで起きている福祉に関わる問題に対して、社会やそこに暮らす人々の生活のあり方からアプローチする学問です。



――ここでは福祉系科目を教えていらっしゃるんですか?


ニ方先生 保育というのは、「養護」と「教育」を目的としているので、「生活支援」としての福祉の学びも必要になります。ですからカリキュラムにも福祉系の科目が含まれているんです。

僕が担当する1年次の『社会福祉』では、「なぜ福祉は必要なのか」に始まって、どんな福祉施設があるのか、子どもも高齢者も障害者もどのように支援していけばいいのかといった、福祉の全体的な知識を教えています。

その他にも、保護者の相談にのるための『家庭支援論』も教えています。世の中にはいろんな支援があるけれど、必要な人に必要な支援を届けるためには、保護者の話を聞きニーズを掴むことが大切であるとか、何に困っているかわかったらどんな機関や支援につなげたらいいか、などを学ぶための科目です。


これは人と関わって話を聞く「保育相談」と言われる分野なんですが、学生の中には保護者と話すことへの苦手意識を持ってしまう学生もいます。学生は「早くアドバイスをしてあげなきゃ」と考えるんですが、アドバイスをするのは最後になります。まずは保育者としてお母さんたちと関係性を築くのが基礎なのです。話をしていく中で、「先生、実はこういうことがあって」という話が出て来たら、そのときには「こういうことが社会資源としてありますよ」ということで、社会資源につなげていく、というようなことを授業で教えています。



――『初年次教育プログラム』を始めとするこの幼児教育科の教育のシステムについて、先生はどう感じていらっしゃいますか?


ニ方先生 学生が段階を踏んで学びを深められる仕組みになっている、と思います。ここでは様々な学びの要素が含まれている行事が多く設定されています。学科セミナー(=全学宿泊研修、5月)が終わったら清泉祭での学長杯・表現コンテスト(10月)があって、そのあと清泉フェスティバル(=短大卒業研究発表、1月)があって・・・と、きちんと行事が組まれていて、学生も次の目標はこれだ、と見定めて進めています。


また、クラス担任制を採っていて、「学科セミナー」のように 担任の教員とクラスごとの学生の代表である学科委員(クラス委員)が準備・運営の中心になる行事もあります。 僕も最初に担任になった時には、どんなことをすればいいのか、分からないことも多かったのですが、行事に取り組む中で、段々と慣れてきたのかなと思います。



――行事の多さが、学生が学び教員が教えるリズムを作っているのかもしれませんね。

クラス担任は何年かに一度回ってくるんですか。


ニ方先生 そうです。幼児教育科は専任教員が11人で、そのうち毎年4人が担任をもつことになります。1年の担任になるとそのまま持ち上がりで担任を続けることになりますね。1学年に2クラスあり、それぞれ担任がいます。

最初に担任になったときは先輩の先生(経験年数の長い先生)と一緒に担任を勤めて、教えてもらいながら 取り組みました。

また、担任制とは別にセミナー制もあります。担任としては50人くらいのクラスを持っていて、それ以外に1年次の保育者論、2年次の「卒業研究セミナー」の担当としてそれぞれ10人くらいのグループを担当することになります。クラス単位と保育セミナー単位で二重に学生のことを見守るのが特徴だと思います。



――担任を持ちながら、それとは別にセミナーで10人ぐらいのグループの指導も行う、ということですよね? セミナーはどんな仕組みになっているのでしょうか?


ニ方先生 1年の『保育者論』では、担当グループの学生と1年間一緒に勉強していくことになっています。幼稚園に行くなどして、どんな遊びの企画なら子どもが楽しんでくれるかを考えながらさまざまな活動に取り組みます。その過程でだんだん学生はグループの仲間のことを知ることができます。

2年にあがると『卒業研究セミナー』になり、自分の希望する先生を選んで、セミナーのメンバーと一緒に卒業研究に取り組むことになります。



――ニ方先生は現在、担任をされていますが、行事が多いので負担も大きいのではないですか?


ニ方先生 特に一年生の担任は取り組むことが沢山あると思います。まず入学当初の春学期はクラスの人間関係作りというところからになります いろんな地域や高校から集まってきた全く知らない者同士の50人で、なにはともあれ他の人と話せる関係を作っていくことが重要だと思います。5月に学科セミナー(宿泊研修)があり、6月頃から10月の清泉祭(学園祭)で行われる表現コンテストの準備が始まります。1・2年生それぞれにA・Bの2クラスずつ、計4クラスが、クラスごとに子どもを対象とした劇の表現発表を行い、その表現力を競う清泉祭恒例のイベントです。基本的には、学科委員が中心となって準備を進めます。クラスのみんなの意見をまとめて、一つの劇をつくるのは大変難しいことで、クラス運営を考えるうえでも大事な行事なんです。そういった意味で、学科委員の役割は大きいと思います。

10月の表現コンテストが終わると、そこでラーニングバリューさんによる『ファシリテーター講座』があり、同じころに、翌年の学科委員を学生の推薦により各クラス8人ずつ選出して、その学科委員を中心に、翌年5月の学科セミナーに向けた準備を始めます 。



――年間通して行事が目白押しですね。しかも担任は2年続けるとなるとなかなか大変そうです。


ニ方先生 学生は1年の11月と2月、2年の6月と8月には現場実習があります。2年間の中で、学外での実習と学内での授業を、並行して取り組んでいくことになります。勉強したことをまずは現場に活かし、現場で先生の指導を受けて、もし自分の中で足りないところがあれば、もう一度学校で学んで次の実習で活かす、という現場と大学の協働の中で、学生の力を伸ばすという仕組みになります。





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