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課題解決ゼミナールにチームビルディングの手法を取り入れて【十文字学園女子大学2-1】

更新日:2023年4月18日

十文字学園女子大学では2020年度の改組を機に共通教育の見直しを図り、異学年・異学科の学生を集めて行う「課題解決ゼミナール」「総合ゼミナール」を開設しました。課題の設定から解決策の実践まで学生主体で行うこの授業の特徴は、カリキュラムに「チームビルディング」を取り入れている点にあります。

共通教育改革プロジェクトのメンバーでもあり、自ら手を挙げて「課題解決ゼミナール」を担当されているのが星野祐子先生(教育人文学部 文芸文化学科・准教授)です。ゲスト講師を招いてのカリキュラム設定や、学科の異なる学生を集めてのゼミ活動など、学内で前例のない学びの取り組みにチャレンジする星野先生。そのモチベーションの源泉はどこにあるのか?まずは星野先生のユニークな経歴から探ってみました。



――まずは星野先生のプロフィールについてお聞かせください。


星野先生 中学校の先生になりたかったので、大学は教育学部に進みました。中学校教員養成課程の国語専攻で学び、幼稚園から高校までの教員免許を取得しました。ですが、その頃は就職氷河期で、教員採用の枠がなく、2次試験を通過することができませんでした。さあ、どうしようと思ったのですが、同じ頃、卒業研究で扱っていた「敬語」に関心を持つようになり、大学卒業後は日本語学を学べる大学院に進学しました。さらに、後期課程では、別の大学院に進学し日本語学を研究、その後、本学の短期大学部文学科国語国文専攻(現在は廃止)に教員として着任することになりました。


――ということは、大学、大学院前期、後期と異なる場所で、異なることを学ばれたんですね。


星野先生 今振り返ると、新しいことにチャレンジできるのはすごく良かったですし、母校が3つあるのもいいことだなと思います。学部が教育学部だったから、現在、担当している日本語学だけでなく、教育に関することにも興味関心を持てていますし、教育学だったり、国語教育だったりへの関心が、自分のベースにあるんだろうと思っています。


――今はどんなことを教えているのですか?


星野先生 入職した際は短大の教員でしたが、改組して四年制の学部となりましたので、今は教育人文学部 文芸文化学科に所属しています。日本語学を中心に教えています。主に現代語を対象として、授業では日本語の文法や歴史など、日本語に関わることを広く扱っています。私たちは日本語に囲まれているので、それこそなんでも研究対象になります。ゼミではマンガ・アニメや、歌詞を研究対象にする学生が多いです。好きなアーティスト、例えば、モーニング娘やEXILEの歌詞を研究対象にして卒業研究を書いた学生もいます。



――十文字学園女子大学にはどんなタイプの学生さんが多いですか?


星野先生 学生はみんな素直でよい印象を持ちますが、自分に自信がない学生が多いと感じています。ただ、大学の学びは、高校までの学びと違い、好きなことや興味・関心があることを深く学びますので、中には、熱心に取り組み、期待以上の成果を出す学生がいます。その成果を認め、褒めていくと、すごく前向きになっていくのを感じます。



――それはきっと、もとから持っていた素直さが、他者から認められることでいい方向に作用しているということなのでしょうね。

ではここからは、星野先生が携わっておられる、共通教育の「課題解決ゼミナール」の話を詳しく聞いていきたいと思います。

そもそも星野先生がこの取り組みに関わることになったきっかけは何だったのですか?


星野先生 私は安達一寿先生(現:教育担当副学長)が座長を務める共通教育改革プロジェクトの一員でもありました。十文字学園女子大学の教育の目玉となるような、異学年、異学科の学生が集まるゼミ科目をつくることになり、私は企画に携わる一方で、自分でも担当してみたいと思っていたんです。そこで、学科の専門科目を調整してもらい、共通科目である

課題解決ゼミナールを担当できることになりました。



――星野先生がその共通教育改革プロジェクトのメンバーになったきっかけは何だったのですか?



星野先生 私が大学のマスコットキャラクター「プラスちゃん」のお世話をしているからでしょうか。学生たちは「プラスちゃんくらぶ」という組織を作り、地域貢献活動に取り組んでいます。実は、2014年ごろ、ゆるキャラブームの真っただ中、ちょうど大学のキャラクターを作るプロジェクトがあり、その座長が安達先生でした。そこで初めて安達先生とご一緒に仕事をする機会を得ました。そして、ほぼ同時期に文部科学省よりCОC事業(「地(知)の拠点整備事業」)の採択を受け、キャラクターを使った地域貢献活動をすることになりました。当時は入職して3年ほど。まだ若くてそれほど仕事が多くない私が、その活動を担当することになったんです。



――活動によって何か大学や学生に変化はありましたか?


星野先生 「キャラクターを使って地域活動をしたら面白いし、大学のPRにもなったらいいよね」と始めたことでしたが、学生と地域のつながりができ、活動をほめていただけるようになりました。PRというより学生の教育という点でありがたいなと思います。最初の一歩が踏み出せない学生でも「プラスちゃんと一緒ならやってみようかな」、「先生が一緒ならやってみようかな」と参加してくれたり、人と関わるのが苦手な学生が、少しずつ外に出ていけるようになったりと変化を感じます。

結果として、就活のいわゆる“ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)”につながったり、市役所職員になるきっかけになったりもしました。学生が成長するのはうれしいものですね。プロジェクト立ち上げの当初はメンバー集めに苦戦しましたが、今は関心をもってもらえるようになり、60人ほど登録メンバーがいます。



――どうやら星野先生は「プラスちゃんくらぶ」での活動の経験を買われて、共通教育改革や課題解決ゼミナールの担当に抜擢されたようですが、地域活動の経験は活かせたのでしょうか?


星野先生 「プラスちゃんくらぶ」の活動は正課外で、「課題解決ゼミナール」は正課という違いはありますが、学生が知恵を絞ってイベントを企画・運営し、ふり返りを実施、次に活かす、という展開は似ている気がします。また、私は日本語学の教員として採用されていますが、もともと教育学部の出身でもあるので、おそらく安達先生はそういう経歴も考慮して、担当にしてくださったのだと思います。



――なるほど、星野先生のプロフィールも人選の際に考慮されたのかもしれませんね。

次は課題解決ゼミナールの概要についてお聞きします。これは2020年の新カリキュラム開始と同時に始まり、共通教育科目の一つとして異なる学年・学科の学生を混ぜたクラスで行われるゼミ、なんですよね。


星野先生 そうです。現在は2、3年生でやっていますが、初めて実施した昨年度(2021年度)は、2年生だけでの実践になりました。



――2020年入学生が2年生になったタイミングでスタートしたということですね。実際には履修者の学科はバラバラになったのでしょうか?


星野先生 2021年度は、3学科から学生が集まりました。9学科あるので、もっといろいろな学科から集まってできるといいのでしょうが、時間割の都合に加え、興味を持ってくれる層に学科の偏りがある気がします。



――このメンバーでどんな「課題解決」に取り組んだのでしょうか?


星野先生 受講生は10人とそれほど多くなかったので、全員で1つのイベントを企画して実施しました。



――それが「突然ですが夏祭りに行けないので一緒に遊びませんか?」というオンラインでのイベントですね。これは学生が考えたものですか?


星野先生 そうです。彼女たちは2020年度の入学生で、1年次の前期はほぼ登校できない状況でした。後期になってハイフレックス型の授業形態となったものの、大学にそれほど帰属意識がないまま2年次に進級しています。そうした背景があって、課題解決ゼミナールを履修した学生に、何か困っていることはないか尋ねたところ「ハイフレックスで隔週登校できるようになったけれど、友達をつくるのが難しい、友達ができない」という答えが返ってきました。

確かに、これまでは、入学直後に先輩が後輩を迎えるイベントがあるなど、みんなが仲良くなる仕掛けがありました。でも、このような状況では、距離をとらなければなりませんし、人と近づくのが難しい。所属学科によらず、人と関わりづらい物足りなさがあったようです。だから、まずはゼミの学生同士が仲良くなるところから始めました。その後、友達を作る機会を提供すると共に、悩み事を共有しよう、という趣旨のイベントが提案されたわけです。



――課題解決ゼミナールを担当しているのは星野先生だけですか?


星野先生 3人で担当していて、前期に2クラス、後期に1クラス開講されています。私は前期1クラスのみ担当なのですが、私が担当する前期1クラスと、後期1クラスについてはラーニングバリューさんに関わってもらっています。私のクラスに関しては、外部講師を招いたことでの効果を検証するという実験的な側面もあります。



――前期、後期で内容に違いはあるのですか?


星野先生 違います。教員の持ち味と集まった学生の個性によって授業を行うことになっていますので。



――星野先生の課題解決ゼミナールでは弊社・ラーニングバリューのスタッフが授業のお手伝いをさせていただいていますが、そもそも星野先生が弊社と接点を持ったのはいつだったのでしょうか?


星野先生 私は、共立女子大学で非常勤講師を勤めているのですが、そこで行われたラーニングバリューさんの何かの企画でお会いしたのがきっかけです。2017年の秋頃だったと思います。



――おそらくそれは「教育サロン」ですね。教職員が集まってざっくばらんに教育の工夫や学生との向き合い方を語り合うための場で、会場を共立女子大学さんにご提供いただいた時のことだと思います。


星野先生 そうかもしれません。その時にラーニングバリューの担当の方と名刺交換をし、その後、折にふれて情報提供をしていただいていました。そうこうするうちに私も大学でFDに関わるようになり、ラーニングバリューさんに、教育担当副学長の安達先生をご紹介できる機会を得ました。

ラーニングバリューさんといえば、組織開発のノウハウをお持ちなので、それを安達先生にお伝えしたところ、「課題解決ゼミナールでゲスト的にサポートしてもらえたらいいんじゃない」とご提案いただきました。そこで、授業に何回かスポット的に入っていただき、チームビルディングの理論的なことも含めて指導していただくことになったんです。



――そうでしたか、ありがとうございました。星野先生には課題解決ゼミナールでの取り組みを「第28回 大学教育研究フォーラム」で発表していただきました。その時のスライドを見ると、全15回の授業のうち、2回目、6回目、7回目、14回目の計4回に外部講師が参加していますよね。そのタイミングで弊社のスタッフが授業に入ることになった理由を教えていただいてもいいですか。


星野先生 「課題解決ゼミナールで大切なことは、一人で考えるのではなくチームで取り組むこと」とか「チームでやるとはどういうことか」について、私はおそらく感覚的には理解しているはずです。ただし、チームビルディングの知識はありません。そこで、授業の目的を伝えるためにラーニングバリューさんにオリエンテーションを終えた2回目のタイミングで来ていただき、チームビルディングの知識やスキルについて教えていただくことにしました。

3、4、5回目は私が担当しますが、最初のうちは学生も新しいことをやるからと気持ちが盛り上がっています。ところが、中盤に入ると、なんとなく気持ちが中だるみして、やる気が持続できなくなっていくんです。今回のメンバーではそうしたことはなかったですが、「話し合いの日にあの子が来ない」とか「企画が遅れている」といった、うまくいかないことが出始めるのがこの時期です。もちろん、私も、違和感を持っているように見える学生のことはサポートしますが、うまくいかないことも結構あります。


例えば、私が関わっている「プラスちゃんくらぶ」でも、地域活動をはじめとする活動に、新メンバーとしてすんなり加われる学生はいいのですが、活動のチャンスを逃してフェードアウトしてしまう学生もいます。そういう学生は、きっと何かしらの違和感があるのでしょうね。そんな経験をラーニングバリューさんに相談したところ「では、中盤でもう一度学生の気持ちを盛り上げるタイミングで自分が入りましょうか」と言ってくださって。

中盤で生じるであろう違和感をみんなで共有して、イベント開催に向けて気持ちをもう一度高めることをお手伝いいただくことにしたんです。






――そして、14回目に再度ゲスト講師として弊社のスタッフをお招きいただいて「まとめ」を行って、15回目でイベント開催の本番を迎えた、という流れですね。


星野先生 本当は学期中にイベントを開催できたらよかったのですが、日程的に難しいものがありました。そのため、前期の授業が終わる前にラーニングバリューさんに入っていただき、イベントを実施するにあたって心がけておくべきことをみんなで確認して終わることになりました。


※肩書・掲載内容は取材当時(2022年6月)のものです。

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