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仲間づくりから始まる「ホップ・ステップ・ジャンプ」を見守って【大手前大学】連載2

更新日:2022年6月23日

大手前大学では2012 年から新入生オリエンテーションの一環として、先輩学生がファシリテーターを務める『キャリアデザイン 0.5』というプログラムを実施しています。これは組織開発の手法を活用したチームビルディングのプログラムで、新入生の仲間づくりや大学への期待喚起を進めるよう設計されたものです。初年次教育の最初のステップともいえるこのプログラムの運営を担う組織が教学運営室。その一員として、2006年に準備室が設置されてから現在に至るまで、新入生オリエンテーションに携わってきたのが増田由希子さんです。プログラムが円滑に進むように裏方役を務める増田さんは、現在の仕組みができあがるまでの過程をどのような思いで見守ってきたのか、聞いてみました。




――増田さんは教学運営室の設立当初からのメンバーですか?


増田さん 私は以前、総務課でエクステンションセンターに携わっていたのですが、2006年10月に準備室ができてからは、ここの所属です。教学運営室は2007年の「三学部クロスオーバー」の開始と同じタイミングでスタートしました。


――「三学部クロスオーバー」は学生が学部の枠をこえて、各学部の専攻プログラムを幅広く履修できる大手前大学独自の制度ですよね。前回は教学運営室長の川口宏海先生に、特定の学部学科に属しない領域を担当するのが教学運営室であると聞きましたが、各学部を横断する領域でもあることから新入生オリエンテーションを教学運営室が担当することになったのでしょうか?


増田さん 2007年は教学運営室が「学生に三学部クロスオーバーの趣旨を理解させて、時間割をつくらせる」ということを主なねらいとして新入生宿泊オリエンテーションを行ったので、教学運営室が担当したのですが、2008年からは「仲間づくり」に重きを置くようになったため、学生課が中心に実施するようになったんです。その後2010年にフレッシュマンセミナーが「キャリアデザイン0.5」に生まれ変わってからは、また教学運営室が中心に行っています。



――2010年以前のフレッシュマンセミナーは、1泊2日の宿泊形式で実施されていたそうですね。その時のプログラムはどんな内容だったのですか?


増田さん 2007年は教学運営室の職員と在学生10名くらいでプログラムを考えました。1日目は全体で教務のガイダンスを行い、その後、クラスに分かれて時間割作成と課題に取り組んでもらいました。2日目は前日に話し合った内容を模造紙にまとめて発表してもらって、午前中で解散するというような内容でした。



――大学のカリキュラムに慣れていただくのがねらいだったのですね。その翌年以降はプログラムのねらいが「仲間づくり」に移行していったのはなぜですか?


増田さん コミュニケーションをとれる学生は自分から進んでとりにいくんでしょうけど、自分できっかけをつくれない学生にはそういう機会をつくってあげたほうがいいんじゃないか、という意見が先生からも職員からも出たからです。そこで仲間づくりをメインにオリエンテーションをしてみたい、と学生課から強い要望が出て、そういうプログラムになっていったと記憶しています。



――学生課から、新入生の仲間づくりを重視する意見が出たということは、退学者の増加など、気になる現象が起こっていたからでしょうか。


増田さん そうですね。三学部クロスオーバーの開始後、初の卒業生が出る前の段階でしたが、4年生を前に退学する学生は見受けられました。



――そういう状況に危機感を覚えた先生方から相談を受け、弊社のチームビルディングプログラム『自己の探求』を試験的に導入していただくことになったのが2009年のことでした。その年は新入生800人中約80人がフレッシュマンセミナーに不参加でした。そこで不参加者を集めて弊社のファシリテーターを派遣して、2日間のチームビルディングプログラム「自己の探求」をテスト的に実施してみようということになりました。2010年は志願してくださった8人の教職員の方にファシリテーターを務めていただきました。2011年にフレッシュマンセミナーが「キャリアデザイン0.5」に変わるタイミングで、専任の先生方にファシリテーターを務めていただくことになったのですが、先生方からの反発が大きかったのを覚えています。


増田さん 2010年の教職員ファシリテーターも大変そうでしたが、2011年は研修の時から一部、反発の強い先生もおられたと記憶しています。教学運営室にもそういう声は聞こえていましたが、「ご負担をおかけしてごめんなさい、学生のために協力してください」とお願いするしかありませんでした。



――2011年は研修の時から、「なぜ私たちがこんなことをしないといけないのか!」と疑問をお持ちの先生もおられました。終了後の振り返り会で、やりたくないという先生に無理やりやらせるのはどうか?という意見もありました。その時、学生課職員(当時)の吉川さん(次回のコメンテーター)が「学生にファシリテーターをやらせてみてはどうか」と発言されたのが、学生ファシリテーターの誕生につながりました。2012年~2014年はアルバイトのSA(Student Assistant)として学生ファシリテーターを担当してもらい、2015年からは単位認定するようになったんですよね。


増田さん 今は秋学期授業終了後のウインタースクールに行われる「PBL特別演習」という授業の一環として、ファシリテーターの育成から「キャリアデザイン0.5」の当日の運営まで行ってもらっています。「アルバイトではなく正課授業化してはどうか」という案が出たときは、それまでアルバイトとしてやってもらっていたことを学生がやってくれるのかなと心配でした。ところが、始めてみると、授業として単位認定されるようになってから学生ファシリテーター志願者が増えているんです。



――それまでは毎年アルバイトのファシリテーター募集に苦労されていましたよね。「ファシリテーターをすればいち早く新入生に接触できて、部活に勧誘できるから」とクラブ単位でファシリテーターへの参加を促したこともありましたよね。


増田さん 今は秋頃になると「自分もキャリアデザイン0.5で先輩に丁寧に教えてもらったので、自分も後輩のためにやってみたいのですが、ファシリテーターを募集していませんか」と問い合わせに来る1年生が増えています。先輩が後輩のために、という思いが受け継がれているのはうれしいですね。



――先輩が後輩の大学適応をサポートするのが大手前大学さんの伝統になりつつあるのかもしれませんね。チームビルディングプログラムを新入生オリエンテーションに取り入れるようになって10年ほどになりますが、増田さんはどんな思いで見守っていらっしゃるのでしょうか?


増田さん 宿泊型のオリエンテーションをやっていた頃は、毎年プログラムの内容も目的も担当する部署や先生も変わっていたので、毎年戸惑っていました(笑)。それに比べると、今は質が高くて安定しているように感じます。私は運営を支える側として安心して見ています。

2021年春は初めてZoomによるオンライン実施となり、事前には不安もありましたが、当日は新入生の欠席者もありませんでしたし、学生ファシリテーターもうまくまとめてくれて、例年通り安心して見ていることができました。学生の力には本当に驚かされました。



――2015年以降、毎年「PBL特別演習」から毎年50人くらいの学生ファシリテーターが誕生しています。先輩学生が研修を受けてリーダーシップやチームビルディングを学び新入生のチームビルディングに貢献することは、学内に何らかの変化をもたらしているのでしょうか?川口先生からは、学生ファシリテーターを務めた人が別の場所でもリーダーシップやファシリテーションを発揮してくれるようになったと聞いていますが、増田さんにはどう見えていますか?


増田さん 確かに学生ファシリテーター経験者の中には、オープンキャンパススタッフやインターンシップなどの活動にも積極的で、学内の様々な場所でよく聞く名前になる人も少なくありません。大学案内パンフレットに、大学で活躍している学生として紹介されていることもありますね。学生が参加しやすくて、大学と初めて接点を持つプログラムになっているのではないでしょうか。



――入学して「キャリアデザイン0.5」を受けて、自分も学生ファシリテーターになって、成長して学内外の様々な活動に積極的にチャレンジするようになる。キャリアデザイン0.5が学生のホップ・ステップ・ジャンプの起点になっているとも言えそうです。


増田さん これまで本学のキャンパスは、1年生は伊丹キャンパス、2年生以上は夙川キャンパスに分かれていたため、せっかく「キャリアデザイン0.5」で先輩と仲良くなれても、キャンパスで顔を合わせる機会がありませんでした。それが2021年からは全学部夙川キャンパスで学ぶようになったので、0.5で出会った先輩と授業ですれ違う機会も生まれるため、キャンパスの雰囲気も徐々に変化してくるのかもしれません。



――1年生と先輩が同じキャンパスで過ごすことが大きなパワーを生む予感がします。これからが楽しみですね。


増田さん はい。そうなってくれることを願っています。



※2021年に実施された「キャリアデザイン0.5」の様子は大手前大学のホームページでもレポートされています。


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年8月)のものです。


 

 増田さんは、大手前大学が女子大だった大手前女子大学のころのご卒業生です。大学卒業後そのまま大学職員になられ奉職されてこられました。「キャリアデザイン0.5」の事務局を10年以上担当され、陰で支えて来られた縁の下の力持ちでもあります。700名強の新入生と50名以上の学生ファシリテーターが参加する一大イベント「キャリアデザイン0.5」を成功させるには、増田さんのような方が絶対に必要だと感じました。そんな増田さんは、「先輩が後輩のために」と言う思いを受け継いで続いているこのイベントを、1OGとしても、暖かく見守っておられると感じました。


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