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入学前教育で新入生の「不安」を「期待」に変える【成城大学】連載2-1

成城大学は4学部11学科から構成される人文社会科学系の総合大学。2000年代半ばごろからいち早く初年次教育に力を入れており、リベラルアーツを重視した教育の伝統を進化させています。2015年には「教育イノベーションセンター」を設置し、教育の質保証や教育改革にも取り組んでおられます。前回は副学長で教育イノベーションセンター長の杉本義行先生にお話を伺いましたが、今回は同センター課長の佐々木貴之さんに入学前教育プログラムの導入の背景について話を伺いました。




――先日の教育イノベーションセンター長・杉本先生への取材で、成城大学では2006年頃から初年次教育に取り組むようになり、大学独自の全学共通教育を立ち上げたと伺いました。佐々木さんは当時からそれらに携わっておられたのでしょうか?


佐々木さん 私は入職して13年ほど教務部におりましたので、まさにその頃、全学共通教育の立ち上げにも職員の立場で関わっていました。



――かなり大変なお仕事だったのではないかとお察ししますが。


佐々木さん 教務部としては、資料作りや各種の調整を支援する立場でしたが、各学部で抱えていた教養科目を全学共通教育科目に組み込むにあたって科目の整理も必要となりますし、科目編成には人事もからむので、大変でしたね。



――教員と熱を入れて議論するあまり、ぶつかる機会もあったのではないですか?


佐々木さん そうですね。でもどちらかと言うと、腹を割ってさまざまな話ができたことで、お互い良い関係が築けたように思います。その頃から、今の全学共通教育の柱となるものをつくった現学長の戸部順一先生や、学科主任や教務部長時代の杉本義行先生ともお付き合いがあるので、長いですね。



――杉本先生もそうおっしゃっていました。2000年代半ばに初年次教育、全学共通教育が始まり、2015年に教育イノベーションセンターが設置されたと聞いています。このセンター設置の経緯についてお聞かせいただいてもいいでしょうか?


佐々木さん 発端は文科省の大学教育再生加速プログラム(AP)にアプライすることになったことでした。当時から学内にあったサポーター制度や、学習ポートフォリオによる汎用的能力の可視化などの取り組みで申請を検討。当時の学長で現理事長の油井雄二先生をはじめとする教職協働のプロジェクトチームがつくられて、杉本先生も私もメンバーに加わっていたんです。残念ながらAPには採択されませんでしたが、成城大学にとって必要なものは全学的に取り組むべきであるとの考えや、内部質保証や教学マネジメントの必要性があるという学内的な背景もあり、教育イノベーションセンターをつくって改革を推進していくことになりました。

油井学長の掛け声で設置準備室をつくったのが2014年夏ごろで、規程を整備して、2015年4月にセンターを立ち上げました。私はその時は総務課にいて、文科省のプログラム(AP)申請の取りまとめなどをしていましたが、その後センターの担当になり、認証評価などにも関わっています。



――その後、教育イノベーションセンターの主導で、入学前教育(入学準備プログラム「スタートアップセミナー」)を実施することになった経緯もお聞かせください。


佐々木さん これまで、入学前教育は学部ごとに実施していました。少し先取りして専門教育に取り組んでもらうような内容で、課題図書についてのレポート作成や、eラーニングで英文を読むといった講義のようなものでした。

そこに、2016年に学長裁量経費ができて、教学的な取り組みに予算をつける学内GPのような制度が始まったんです。これは既存の教育や研究だけでなく、「こんなことをやってみたい」という試行的なプログラムも対象になっています。学びの動機や姿勢に関わる入学前教育は初めての試みですので、全学的な組織である教育イノベーションセンターから申請してみたのです。



――教育イノベーションセンター主催の入学前教育には弊社のチームビルディングプログラム「自己の探求」を採用していただきました。従来の入学前教育とは異なる性質のものを実施してみようと思われたのはなぜですか?


佐々木さん 学生の主体的な学びを促すという観点から、入学後の教育についてはまずはアクティブ・ラーニングを推進していこうという考え方がありました。それに対する入学前教育には何がふさわしいかといえば、アクティブ・ラーニングに対応できるような心構えや体験をできるようなものではないか。広い意味での大学での学びに適応してもらうために、既存の専門教育の延長線上にある入学前教育ではないものを、大学としてやってみてはどうかと考えたのです。



――「主体的な学びにつながる動機づけのために」と言い換えてもいいですか?


佐々木さん まさしくそうですね。本学では毎年、新入生アンケートを実施していますが、大学への期待については「友人をつくりたい」、身につけたい能力については「コミュニケーションやチームワーク力」の項目の数値が高い一方で、それに関する課題も出てきていました。大学での不安を期待に変えるような取り組みを用意したくて、従来の入学前教育に付け加えるものとしてプログラムの導入を決めました。



――コミュニケーションやチームワークにまつわる課題を解決する方法はいろいろあると思いますが、弊社のプログラム「自己の探求」を選定した決め手は何だったのでしょうか?


佐々木さん ラーニングバリューさんのチームビルディングプログラムのセミナーに参加して、実際にグループワークを体験させてもらって、「学生主体のプログラム」という理念をよく理解できたからです。プログラムの設計が非常によくできていて、さらに、「自己理解、他者理解、学校理解を促す」というコンセプトにも非常に共感しました。





――「自己理解、他者理解、学校理解」という観点からも弊社のプログラムをご理解いただいていたとは、光栄です。初めて実施した2019年2月は、弊社のファシリテーターがプログラムを進行させていただきましたが、その時の印象で何か覚えていることはありますか?


佐々木さん 先程の3つの観点で言えば、特に参加者は「自己理解」を深めていると感じました。学生が受身で何かを聞くようなプログラムではなく、自分の言葉で話すことを大切にしていますよね。参加者アンケートでも「自分がこんなにしゃべれるんだとわかった」とか「本当はしゃべるのが好きなんだということに初めて気づいた」という声が多かったです。体験を通じて自己理解ができたプログラムなんだなぁと感じました。私も、実際にこのプログラムを実施するまでは、正直、一日でどこまで変わるきっかけづくりができるのだろうと思っていました。ですが、アンケートの回答や学生の様子を見て、自己理解が大いに深まることが変わるきっかけになることを目の当たりにしました。ただ、「学校理解」が深まるかどうかについては、まだまだなのかなぁとは思いました。



――「自己の探求」のプログラムの中には「自分の大学を理解しよう」というようなコンテンツは含まれていませんからね。「自己の探求」の大学適応への効果について「自己理解・他者理解・学校理解が促される」と言いうのは、プログラムの開発者である北森義明先生に師事した水野基樹先生による統計分析によるものです。自己理解、他者理解にそろえて「学校理解」と表現されていますが、私は「学校への期待」、あるいは「学校愛着」のようなものだととらえています。


佐々木さん 確かに、そうですね。スタートアップセミナーへの参加が、大学をより好きになるきっかけになっていると感じます。本学ではこのプログラムを受けた学生が入学後、先輩ファシリテーターとなって、2年目以降はプログラムを担当してくれています。そういう面でも「学校理解」が深まっていると言えそうです。



※肩書・掲載内容は取材当時(2021年5月)のものです。

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