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大きくなくていい。改革は小さく始めて仲間と共感を集める【東京経済大学】連載1-2

更新日:2021年6月11日


入学時の不安を取り除くことが新生活のスムーズなスタートにつながることから、初年次教育の改革の必要性を感じていた東京経済大学の学生委員長の加藤みどり先生(経営学部 教授)と学生課長の笹川克也さん。とは言っても、教育プログラムの変更には時間と労力を要することから、まずは生協で行われている新入生歓迎イベントを舞台に、小さな変化を起こしてみることにしました。具体的には、イベントを進行する学生にチームビルディング研修(1日間)とファシリテーション研修(1日間)を2回に渡って実施。すると、上級生ファシリテーターにも新入生にもある変化が起きたのです。



――2018年4月の新入生歓迎イベントである生協のウェルカムパーティに向けて、2017年12月にファシリテーター役の学生に向けたチームビルディング研修を実施しました。その時の、研修の印象をおきかせください。


加藤先生 まず印象に残っているのは、研修を担当したラーニングバリューのファシリテーターのスキルでしょうか。休日の朝一なのにファシリテーターが一声発しただけでで、プログラムに参加した学生の腰が浮いて、前のめりになっているんですから。教員同士で、「お笑い芸人みたいにつかみから入らないと、最近の学生は授業を聞いてくれないのでは」と真面目に議論したことがありますが、学生をその気にさせる授業を見せていただいたな、と。日頃、他の先生の授業を見る機会が少ないので、学生への伝え方は非常に勉強になりました。学生はとても楽しかったようです。「こんなにやらされ感のないグループワークは初めて」という言葉は、ファシリテーションを暗中模索していた私にぐさっと刺さりました。



――チームビルディングのプログラム自体はどうでしたか?


加藤先生 解釈が多様な課題について、みんなで話し合って答えを出すという、普通の生活では長い時間がかかる体験を、ここまでコンパクトに設計できるのかと感嘆しました。生きていれば、説得されて自分の意見が180度変わることもありますが、それを他の人と共有することは稀ですし、異なる考え方を表明し合う機会は大変貴重です。対立を怖がって異論を唱えにくい人に配慮されたプログラムだと思います。



――最初からみんな研修に乗り気だったわけではなくて、イヤイヤ参加した人もいたそうですね


加藤先生 当時の生協委員長の学生が共感し、積極的に導入しようと仲間に呼びかけてくれ、研修の説明会を行いました。生協の専務理事も参加を促したのですが、参加しても距離を置く感じの学生、結局参加しなかった学生もいました。全く新しいことなので想像も難しく、それまでの自主性が損なわれると考える学生がいるのも無理もなく、ある程度当然の反応と思いました。ただ、変化は実施後に起きました。新入生を迎えて実施した生協のウェルカムパーティーで、ファシリテーション研修を受けた学生が担当した午前の部と、受けていない学生が担当した午後の部で、運営面で違いが生じて・・・



――それは誰の目にもわかるほどの違いだったのでしょうか?


加藤先生 学生本人たちもわかったと思います。プログラムも練られ、進行も落ち着いていた午前の部と比べると、午後は楽しく賑やかなのが好きな学生が集まっていて、雰囲気が違いました。新入生アンケートにも「午前と午後が違う」と書かれていましたし、生協の学生委員の間でも「来年もこのままでいいの?」と議論になったそうです。私たちは生協学生委員から場を借りている立場なので、学生のこうした問題提起がなければ、続けるのは難しかったと思います。



――それが翌年以降の取り組みにつながっていったわけですね。2019年のウェルカムパーティーではどのようなことが行われたのでしょうか?


加藤先生 2年目(2019年4月)は、歓迎を受けた新入生数名が学生ファシリテーターになりたいと加わりました。そして、1年目に研修を受けて午前のプログラムの学生ファシリテーターを務めた2人の女子学生(MさんとNさん)が非常に魅力的なリーダーシップを発揮してくれたんです。1年目はラーニングバリューさんから提供されたプログラムをそのまま実施したのですが、2年目は学生のほうから「昨年は1年生からこういう相談を受けたから、こういう内容を入れたいけどいいですか?」と斬新かつ学生ならではの提案をしてくれたのです。彼女たちは、1年目は委員長に言われたからやろうか、くらいの態度に見えました。ですので、2年目の主体性の成長には正直驚きました。周囲への影響も多大で、教職員は学生同士の学び合いには到底かなわないと思いました。最終的にその取り組みは広報課に取材され、大学のニュースレターでも紹介されました。









――主体性の成長。いい言葉ですね。チームビルディングが進んでいくと、そういう現象が必ず起きます。そしてそういう先輩に歓迎を受けた新入生が「学生ファシリテーターになりたい」となるのも面白いですね。笹川さんが先ほどおっしゃっていた、『勧誘から歓迎へ』というスローガンがリアルになったというか、勧誘していないけれど歓迎を頑張ったら勧誘につながったということですよね。


笹川さん 「北風と太陽」のような話ですよね。ようやく学生が「何を求めて何をするか」を理解してくれたんだと思います。これまでは、勧誘ばかりに一生懸命になりすぎたり、ノリで運営してうまくいかなかったりしていましたが、自分たちがやろうとしている歓迎と、新入生が求めている歓迎にすごくミスマッチがあるということに、ようやく気づいたんだと思いますね。

加藤先生の話でも紹介された生協の学生委員の2人がニュースレターの中で、「ファシリテーターのファシリテーターになりたい」と語っています。ファシリテーションが何かを知らないレベルから、それを自覚して、前に進めるリーダーが現れたことがとても喜ばしいことです。



――生協のウェルカムパーティーの取り組みは今も継続しているのでしょうか?


加藤先生 ファシリテーター育成研修はできましたが、残念ながら2020年4月の実践の場はコロナ禍でなくなってしまいました。


笹川さん その代わり、9月と10月になってしまいましたがオンラインで、2020年4月入学者の交流会を行いました。中心になってくれたのは、このあとインタビューしてもらうTくんとUくんです。彼らは2018年4月に、新入生としてウェルカムパーティに参加して、その後研修受けてファシリテーターになったんです。



――前年にリーダーとなった2人の女子学生(MさんとNさん)がファシリテーターを務めたイベントに参加して、自分もそういう役割を果たしたいと思って、手を挙げる。そうやってリーダーを務めてくれる学生がつながっていくのは、組織が成長していると言うことですね。とても嬉しいことだと思います。




※肩書・掲載内容は取材当時(2021年2月)のものです。

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