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オンラインでのチームビルディング実践【東京経済大学】連載1-4


新入生歓迎イベントを円滑に進めるための上級生ファシリテーター育成や、PBLのグループワークの活性化のためにチームビルディング研修を活用してきた東京経済大学経営学部 教授・加藤みどり先生。2・3年生を対象とした自身のゼミでもチームビルディング研修を実施し、どのような変化が起きるのか試してみることにしました。通常、対面で行われるゼミも、コロナ禍の2020年はオンラインでの実施となりましたが、チームビルディング研修は学生にどんな影響を与えたのでしょうか?





――2020年は加藤先生の2・3年生対象のゼミでチームビルディング研修を導入されましたが、その経緯についてお聞かせください。


加藤先生 その前年のグループワークで、一部機能していないチームがあったのが発端です。東経大のゼミは2年生から履修可能ですが、学生が2年、3年の序列を気にします。多くの意見を出し合うことが重要で、意見の良し悪しは学年には関係ないと言っても、気にする。先輩は後輩を引っ張ろうという、後輩は先輩についていこうという、何か規範のようなものができてしまい、それが必ずしも正しい方向に進むわけではなかったり、タイムマネジメントがうまくなかったりという状況も見受けられました。

「個人でできる作業は一人の時にやって、ゼミで集まる時は話し合おう」と言っても、そもそも全体像を話し合いで作れない。発表が近く切羽詰まってくると、3年生が2年生に断片的な指示を出して進めるというようなことが起きていました。建設的なディスカッションを体験して欲しくて、ラーニングバリューのAさんに相談して、ゼミでのグループワークのためのチームビルディングプログラムを考えていただいたんです。



――Aさんに質問ですが、プログラムを設計するときにどんなことに配慮したのですか?


Aさん 事前に加藤先生からいただいていた要望は、「組織において上下関係はあってもいいけれど、リーダーシップというのは特定の人だけでなく、みんなが発揮できるということを体験的に学んでもらえたり、少しでも理解してもらえたりできるようなものにしたい」ということでした。そこで、リーダーシップのCCT(Consept Clarification Test:リーダーシップやチームワークをテーマとしたコンセンサス実習)を取り入れ、「みんながリーダーシップを発揮していいんだ」と思える規範が生まれるきっかけになるように設計しました。





――通常、ゼミであれば、もちろん対面で行われるのでしょうが、コロナ禍の2020年は対面での実施ができなくなったんですよね。


加藤先生 本学ではオンラインでの授業が4月20日から始まり、初回のゼミは4月23日でした。例年初回は一人でも多くの顔と名前を覚えることを目標に、教室でアイスブレイクとして数種のゲームを行うのですが、オンラインは私も当然未経験です。ツールはZoomを活用し、最初は多くの人と知り合えるかと、6~7人で1つのブレイクアウトルームを設定しました。でも、オンラインだと1対1のコミュニケーションしか成り立ちにくいことにすぐ気づきました。私のゼミではグループワークが基本ですが、学生がグループを超えて移動して互いの進捗を探るなど、かなり自由にやっていました。それがオンラインになると、あちこちで話すとか、会話の相手をどんどん変えるといったことができなくなって。昨年を知っている新3年生は特にフラストレーションが溜まっていたように見えました。

チームビルディング研修は、5月にオンラインで実施しました。私も学生もまだオンラインに慣れていない時期だったので、ラーニングバリューのファシリテーターさんに授業を仕切っていただいた時にはホッとしたのを覚えています。



――対面で行われた前年のゼミとは比較できないとは思いますが、オンラインといえどもチームビルディング研修を行ったことで、少しは学生の様子に変化はありましたか?3年生が発言して2年生が従うというような上下の序列を、少しは崩すことができたと言えそうですか?


加藤先生 明確なことは言えませんが、他の先生の話を聞いていると、よそよりは早めにゼミ生が仲良くなったようには感じますね。

7月後半から大学での対面スクーリングが許可されたので、他大学との合同ゼミ発表会の準備を対面で行ったのをはじめ、2学期はほぼ対面でゼミを行うようになりました。年によってゼミの雰囲気も異なるので、一概には言えませんが、例年よりも2年生が積極的な印象はあります。3年生が1人しかいないチームがあったのですが、最初は2年生が3年生に頼っているような気配がありましたが、次第に2年生が積極的に発言するようになりました。これまでは、2年生に「3年生に遠慮せずに意見を出しなさい」と言っても、やや時間がかかっていましたが、今の2年生はコロナにもかかわらず相対的に早い気がします。それはオンラインチームビルディング研修の効果でもあるのかなと思います。



――チームビルディング研修は、プログラムの中で段階を踏んで、誰もが心理的に発言したくなるように設計されています。人の発言を聴いて、自分の意見を言いたくなって、最終的にそれが言える場がつくられて、言ったことを人にちゃんと聴いてもらえた、という体験もできたのだろうと思います。

それでは最後に、今後の課題などあれば、お聞かせいただけませんか?


加藤先生 素晴らしいリーダーシップを持つ学生が現れて、主体性を発揮して周りの学生を巻き込む存在になったとしても、必ず卒業していきます。それが、学生の育成に取り組むうえでの難しさでもあり、優れたリーダーシップをいかに下級生に伝えていくかを考えるのは教職員の仕事と思います。



――学生のリーダー人材は、育成すると同時に、その継承も大切だということですよね。笹川さんは学生課の職員という立場から、その課題をどのように感じていらっしゃいますか?


笹川さん 加藤先生と同じです。チームビルディング研修自体は、どの大学で導入してもある程度の成果は出るということですが、その成果を継続させるという点においては、人間性や理念の深さにも関わるのかなと思います。組織的にやれることをやったうえで、何が次の人材をつくるのか、まだわかりませんが、それを探っていくしかないのだろうと思います。




――組織的にリーダー人材の人間性や理念を受け継ぐ必要性は、学生だけでなく、それを支える教職員にもあるのかもしれませんね。


笹川さん たまたま私は今、同じ課にいるスタッフの中で、自分の10年後、20年後の後継者になってくれそうな人を見つけることができました。この人たちの今後の人事異動がどうなるのかはわかりませんが、組織的にやっていくというのは、3年や5年スパンではなく、もっと先を見つめていなければならないと感じます。



――チームビルディング研修は、集団に働きかけて、集団が活性化することで個々が成長することを重視しています。最初からリーダーシップを発揮するようなタイプではなかった人が、周囲の影響で変化してどんどん主体的になり、そのことがさらに周囲にいい影響を与えるようになる。そういうサイクルが生まれるきっかけになればいいですね。


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年2月)のものです。

 

 チームビルディングが進んでいくと、メンバーそれぞれの主体性が立ち上がってきます。“主体性が立ち上がる”とは少しおかしな表現かもしれませんが、個々人の個性が発揮され、こだわりの意見が表明され、まさにその人らしさが前面に出てくるのです。加藤先生とのチームビルディング体験は、生協のウェルカムパーティーを主催する学生ファシリテーターの育成に始まり、PBL型初年次ゼミ、そして2・3年ゼミでのオンラインチームビルディングへと展開していきました。そのすべての場で、学生さんたちが自分の意見を表明しはじめ、○○がやりたい、と気持ちを出してくれ、主体性が立ち上がり、チームが進展していきました。数人の明らかな変化がメンバーに刺激を与え、集団全体への活性化に繋がっていく、そんなチームビルディングの醍醐味を何度も目の当たりにしました。またオンラインでもチームビルディングが進展していくのを確認したことは、我々にとっても大きな勇気になりました。


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