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「ピアサポーター」は教育改革の起点となれるか?【成城大学】連載3-1

成城大学では入学前教育の必要性や、入学前の新入生の不安を解消するといったねらいから、2018年度よりチームビルディングを活用した入学前教育「入学準備プログラム(大学生活スタートアップセミナー)」を実施しておられます。その過程で、学生ファシリテーター養成や、プログラムのオンライン化など、さまざまなチャレンジをして、プログラムは年々進化を見せています。今回取材したのは、一連の取り組みを主導する教育イノベーションセンターの職員で、ピアサポーター(学生による学生のための学習支援団体)の活動を支援する肥田奈緒子さん。大学の教育改革や、それによる学生の変化についてどのように感じているのか、話を聞いてみました。



――前回までの取材で、成城大学では以前より学生が学生を支援する、いわゆる「サポーター活動」が盛んであると聞いています。2017年度に、成城大学で5つめのサポーター団体として、学生による学習支援団体「ピアサポーター」が立ち上がりました。肥田さんは職員としてその活動を支援しているそうですが、まずは、ピアサポーターの活動について具体的に教えていただいてもいいでしょうか?


肥田さん 通常は学生がシフト制でサポートデスクに常駐して、パソコンソフトの使い方やレポートや提出課題への取り組み方法を教える学習サポートを行っています。「授業の駆け込み寺」のような役割ですね。

さらに、4月のオリエンテーション期間中は新入生に対する時間割相談も行っています。対面だけでなく、オンラインでも多くの新入生に利用されていて、例年のべ300人くらいの人に利用されています。これはピアサポーターの活動について試行錯誤していた頃に始めた活動ですが、とても需要が高くて。これによって学内でのピアサポーターの認知度が高まり、成功体験になった活動といえます。

2020年は新型コロナウイルスの影響により、授業がオンラインになってレポート課題が多かったため、「レポートの書き方講座」も好評でした。講座の他に、レポート週間を設け、「この週は○○学部」というように学部ごとにオンラインで対応していました。その他にも、新入生向けに学内のWi-Fiやネットワークへの接続方法、パソコンの貸し出しなどに関する講座など、需要がありそうなことやフォローが足りないことを学生自身が考えて、自主的に開講してくれています。

毎年定例で行うのは「サポーターズフォーラム」。学内の他の4つのサポーター団体(キャリア、バリアフリー、国際交流、ライブラリー)と協力して、企画を考え、運営を行っています。また、同じようなピアサポーター団体がある近隣大学さんとの交流の機会を設けることもあります。



――ピアサポーターと職員はどのように連絡、連携しているのですか?


肥田さん 日常的にはSlack(LINEのようなチャットツール。ファイル共有もできる)で情報共有して、月1回はメンバー全員が集まる全体会を開き、必要に応じて学生幹部メンバーと職員とで、活動内容の検討を行う幹部会も行います。昨年からはオンラインも活用しつつ、みんなで活動の方針や計画を共有しています。ピアサポーターは教育イノベーションセンターだけでなく、図書館、教務部の3部署で支援しているので、各部署の視点からフォローの幅が広がります。何か活動を行うときも、全学生に向けた告知は職員が行うなど、学生と協働しながら進めています。



――肥田さんが教育イノベーションセンターでピアサポーターを担当するようになったのはいつごろからですか?


肥田さん 2期生を募集する頃からです。1期生募集の際は25名の応募者があったのですが、2期生は3、4人ほどしか集まらず募集に苦労しました。



――ちなみに1期生の募集はどのようにしていたのですか?


肥田さん 大学1年生から大学院生まで全学生を対象に、学内ポータルサイトでの告知や募集ポスターの掲示、副学長も参加しての説明会の開催といった手法などで募集しました。応募してくれた学生の学年分布はバラバラで、中には他のサポーター団体に所属している学生もいましたが、全学的な学習サポート団体の立ち上げだったので、ぜひやってみたいという意欲的な学生が集まってくれました。



――2期生募集で減ってしまった原因はどこにあったと推測されますか?

肥田さん 1期生は「なんだか面白そう」と手を上げてくれたのかもしれませんが、2年目になるとサポートデスクでの活動の様子を見て、大変そうだと思われたり、すでに活動している学生の雰囲気を見て尻込みされたりした面もあるかもしれません。「今までになかったことをやってみよう」と、学生さんを巻き込んでいくのは難しかったですし、学内での活動認知度が低いのも課題でした。「ピアサポーターとは何か」と説明のチラシ配ったり、先生方の協力も得て学生と職員が一緒に授業におじゃまして活動を紹介させてもらったり。認知度を上げることにも苦労しました。



――3期生以降はどうですか?


肥田さん 活動が安定して、認知されていったおかげか、3期生は結構入ってくれました。時間割相談や入学準備プログラムでピアサポーターの活動を知り、「入学前の高校生と交流できるなら、私もやってみたい」と入ってきてくれた学生もいましたね。入学式前に実施する新入生オリエンテーションでも、ピアサポーターが登壇して大学生活を説明する機会があり、大教室で300人ほどを前にプレゼンテーションする先輩の姿を見て「私もあんな風になりたい」と思ってくれた学生もいたようです。



――入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」には、弊社のチームビルディングプログラムを取り入れていただいています。そのきっかけとなったのが、学内での学長裁量経費予算への申請で、申請には肥田さんも関わっておられたと聞いています。弊社のチームビルディングプログラムに興味を持たれたきっかけを聞かせていただいてもいいですか?


肥田さん 御社で開催されたプログラムの体験会に参加させていただいたのがきっかけです。そこで初めて会う他大学の教職員の方々と「記者会見」のグループワークを体験しました。こういう場は普通だいたいみんな緊張して、グループ内に先生がいれば「先生に話して頂こう」というような空気になるのですが、みんながそれぞれ自分のキーワードに対して質問を受けて答えるというプログラムは新鮮で。自分のことを人に伝えて、それを人が聞いてくれるのは面白いんだなと感じました。



――面白く感じたのですね?


肥田さん 面白かったです。一方的に自己紹介されるよりも、相手に対して興味がわくというか、親近感がわくというか。こうしてチームビルディングができていくんだなと感じました。ですから、入学前の緊張している状態の新入生にとってはすごくいいんじゃないかと思ったんです。



――2018年度は弊社のファシリテーターが成城大学にお伺いして、チームビルディングを活用した「大学生活スタートアップセミナー」を実施させていただきましたが、その時のことで覚えていることはありますか?


肥田さん プログラムの開始時は全員が黒板に向いて座っていて、凄まじい緊張感が漂っていましたが、終了後は「みんなで一緒に帰ろう」という雰囲気になっていて、空気の違いを大きく感じました。朝から夕方まで、時間をかけていろいろなワークで協力して、相手を知ることができたからでしょうが、顔見知りができて、入学式に行くことや今後の学生生活への不安が解消されたのは心強いのだろうなと思いました。



――この時、ピアサポーターには学生ファシリテーターとしてプログラムに参加していただきましたが、彼らの様子はどのように見ていましたか?


肥田さん この時、ピアサポーターには新入生の各グループに先輩学生として一人ずつ入ってもらったのですが、もともとファシリテーション研修を受けていたこともあり、「ファシリテーションとは何か」を理解していましたし、うまくグループの空気をつくってくれていました。ピアサポーターができた初期の頃はこれといった明確な活動がなく、試行錯誤していたので、インプットのための研修を中心に行っていたのですが、ようやくアウトプットの場ができて、積み重ねの成果を発揮できたと感じました。



――ピアサポーターの学生はどんな感想を抱いたのでしょうか?


肥田さん 彼らも楽しんでいたようです。課題解決の場面でも、高校生と一緒に真剣に考えてくれていましたし。私は記録係で写真を撮っていましたが、新入生だけでなく、学生ファシリテーターのいい表情がたくさん撮れて、楽しんでいるのが伝わってきました。



※入学準備プログラム「大学生活スタートアップセミナー」の様子は成城大学のホームページでもレポートされています。


●2019.02.28 大学生活スタートアップセミナー


※肩書・掲載内容は取材当時(2021年5月)のものです。

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