正課の授業外で学生に学びの場を提供する『Daito Education PLUS(以下、DE+)』を支援する教職員チームの一員として活動を続けるキャリアセンター事務室 東松山キャリア支援課のTさん。学生の成長を見守ることができる大学職員としての仕事の醍醐味を味わいながら、自分自身の職場や仕事に向き合う気持ちの変化も感じていらっしゃるようです。
――DE+は、社会で飛躍する大東人を育成するという目的で始まった取り組みですが、学生にはどんな教育的な成果が現れているのでしょうか?
Tさん 学生生活の中で、学ぶ意欲につながっていると思います。プログラムに参加していた学生は、その後学内の他の行事に参加する人も多いです。ただ、学生を育てるには時間も手間もかかりますし、学長はじめ大学側が理解して支援し続けてくれることが不可欠なので、こういった取り組みが立ち消えにならないようにと願っています。
――この活動が軌道に乗ったら、ゆくゆくは次の人に引き継ぎたいという気持ちはありますか?
Tさん そうですね、うまく引き継げるならいいですよね。私の持論ですが、新卒で大学職員を志望する人は、学生支援をしたいという人が多いのではないかと思っています。私はキャリア支援課の職員なので普段から仕事で学生と関わることができますが、学生と全く関わりのない部署に配属になる人もいます。私は業務でも業務外のところでも学生に接することができて二度美味しいですが、学生をサポートする『Daito Education PLUS Center(以下DE+センター)』という場を、もっと他の人にも経験して欲しいと思います。
学内でDE+の認知が高まって、もっとサポートしたい人が増えて、サポートする教職員側の体制もある程度安定することで負担が軽減されていくのであれば、DE+センターはさまざまな部門の職員が学生と接点を持てる場所になっていくと思いますし、そういった形が理想ではないでしょうか。
――DE+は学生だけが飛躍する場ではなく、教職員が学生と関わりながら自らのキャリアも高めていけるような場にもなる、ということでしょうか。
Tさん そういう場所になればいいなと思っています。私自身もいろいろなプロジェクトに関わったおかげで学内に知っている顔が増え、何かあったときに頼れる人が増えたと思います。私の年次では、他の部署の課長職の方と意見を交わす機会は多くありませんが、DE+に携わることでそういったこともさせていただいていますし、キャリア支援課ではなかなか持てない先生方とのつながりも増えました。田中博史先生(大東文化大学 連載2 参照)と話しているところに通りがかった別の先生とも顔見知りになれたり、先生方の集まりに誘っていただいたり。そんな接点ができて、何かあったときに質問できる人や頼れる人は増えたと思います。
――自分の部署や業務の枠に留まらない経験で人脈や視野が広がるのも、職員としての立派な成長だと言えるのではないでしょうか。
Tさん だからこそ、ぜひDE+にはいろんな人に関わって入ってほしいと思うんです。私は大学として何かをする時に“愛校心”は大事だという価値観を持っているのですが、若手同士で話をしていても、「大学は職場」というだけで、休みの日までそんなに学生と関わらなくてもいいという考え方の人も、中にはいらっしゃいます。ですが、学生と話したり、彼らが楽しげに何かに取り組む姿を見たりできるのは大学職員の醍醐味だと思うんです。
――強制力がない取り組みだからこそ、志願した人で構成できるメリットもあるのではないでしょうか。DE+センターは既存の部署とは異なり、年次が違う教職員が意見を交わし合える環境になっているように見えます。門脇学長や田中先生からも「対等」とか「フラット」という言葉が出てきたので、DE+センターはそういう意図もある組織なのかなという気がしますが。
Tさん 今、活動を一緒にしている方々の人柄もあると思いますが、年齢や立場に関わらず、私にも意見を求めてくださいますし、フラットに接していただけるのは下の者としてありがたいですね。日頃の業務では組織の年功序列や自分の裁量のなさを感じている人でも、フラットに関われる人間関係を持てる場があれば救われる面もあるのではないかなと思います。
DE+センターは仮想組織で、部署ではないので人事による人員配置がなく、組織としての体裁が整っていないのが課題である反面、誰でも手を挙げて参加できるのが長所でもあると、個人的には思っています。「大学職員は学生と関わる仕事だと思っていたのに何か少し違う」「数字や文書と向き合う仕事ばかり」と感じている人にとって、担当業務以外で自分がやりたかったことをやれる場所になればいいと思います。そういう面では、DE+の活動には、FDやSD的な意味合いもあるのではないでしょうか。
――FDやSD 的な側面、確かにありそうですね。先日話しを伺った総合企画課の植付さん(大東文化大学 連載3 参照)も「大人がどこまで手を出すべきか、学生との関わり方を学んだ」とおっしゃっていました。
Tさん 部活やサークルのコーチをされている方はそういう経験もされているかもしれないですが、一般職員にとってはなかなかハードルが高いと思います。特別なスキルがない職員でも学生と関わることができ、教育的な活動ができる場面は学内になかなかないのではないでしょうか。
私もキャリア支援課での仕事では、学生に指導的なコトバを使ったりするんですが、DE+ではコトバに迷ってしまいます。DE+センターの教職員がやるべきことは “指導”ではないので、学生と「一緒にやっている」という感覚のほうが強いかもしれないです。
――DE+は学生だけでなく、職員の方にとっても「自分の居場所」になっているのかもしれませんね。日常の業務で苦しいことがあっても、DE+で学生の笑顔を見たり、他の人と話したりできることが、頑張るよりどころになる可能性もありますよね。
Tさん 軸が一本だけだと、そこが折れるとしんどいですが、いくつかあれば補いあえるのではないかと思います。学内での関係性が広がると、本業の仕事もやりやすくなると思います。
――直属の上司には言いにくいことも、他の部署の人には言いやすかったり、それが支えになったりすることってありますから。DE+の活動は職員の気持ちをポジティブな方向に向かわせるという副次的な効能もあるのかもしれません。
Tさん それを求めてDE+を始めたわけではないのですが、結果的にはそういうところもあるのかもしれないと、今日話してみて感じました。
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組織開発の定義には色々な表現がありますが、私の好きな定義は、
「組織開発とは(人に直接アプローチするのでは無く)人と人の関係性に焦点を当て、その質の変化を促すことで、集団全体の活性化を図り、個々の成長をもたらす方法論である。言い換えると、人や組織・集団に内在するエネルギーや主体性を活用するアプローチであると言える」
と言うものです。
Tさんをインタビューしてみて、DE+と言う取り組みそのものが組織開発であると言えるのではないかと思いました。
Tさんは、自主的に参加したDE+センターでの活動を通じて学生の成長を目の当たりにし、大学職員の仕事の醍醐味を実感され、より高く広い視点で仕事をとらえるようになられました。すなわち、学生どうしの関係性の変容が彼らの主体性を引き出し、活動の活性化につながり、それがTさんの仕事をとらえる視点の変化にもつながったと言えるのではないか、そんな風に感じました。
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