2017年より正課授業外で学生に学びの場を提供する『Daito Education PLUS(以下、DE+)』をスタートさせた大東文化大学。これまでの連載では(第1回:学長 門脇 廣文先生、第2回:スポーツ科学科 教授 田中 博史先生、第3回:総合企画課 課長 植付 あゆりさん)、大学改革に臨む学長の思いや、DE+の立ち上げのプロセス、それに携わる教員・職員の思いを紹介してきました。大東文化大学シリーズの最終回は、DE+を支援する若手職員、キャリアセンター事務室 東松山キャリア支援課Tさん に、この取り組みにかける想いを尋ねてみました。
――Tさんは2016年9月の『アクティブラーニングを加速させる学生リーダー育成プログラム 』の時からサポートスタッフとして参加されているそうですね。スタッフは公募だったとのことですが、なぜ手を挙げられたのですか?
Tさん 入職してからずっとキャリア支援課の所属で、板橋キャンパスから東松山キャンパスへの異動は経験したものの、なにか新しいことをしてみたいと思っていました。その頃この話を聞き、全学的な取り組みにも関わってみたかったですし、所属長からもご理解をいただいたので、参加させてもらうことにしました。
更に、リーダーシッププログラムでは研修プログラムとして『自己の探求』を行うと聞きました。私は大東文化大学の出身ではないのですが、実は学生時代に『自己の探求』を受けた経験があったため、それも興味を持つきっかけになりました。
――そうなんですね。ちなみに、学生時代にご自身が体験した『自己の探求』にはどんな印象を持っていましたか?
Tさん 私は大学2年生で受けて、同じ年に『自己の探求Ⅱ』も受講しましたが、楽しかったです。プログラムではさまざまなワークを体験しましたが、自分を知る良いきっかけになり、その時に使った教材は自己分析に使えると思ってとっておいたのを覚えています。一緒にグループワークをしたメンバーにもらったプレゼントカードは就職活動の時にも見返したりもしました。
ただ、2016年の学生リーダー育成プログラムは別の部署に事務局をご担当いただいておりましたし、研修プログラムで『自己の探求』を行うことも決まっていたので、私は当日だけ手伝う、という感覚でした。本格的に関わり始めたのは、次年度以降もこの取り組みが継続していくことが決まってからです。
――自分の体験も含めて、『自己の探求』を学生リーダー向けの研修プログラムに導入すると、どんなメリットがあると思いましたか?
Tさん こういったプログラムを1年生のうちに体験できるのは、学生支援課にとっては退学防止対策にもなるでしょうし、就職活動の自己分析に活かせたという私自身の経験からは、若年次のキャリア支援への効果も大きいと感じていました。また、学生自治会で活動する学生や、学内でリーダー的な存在となっていく学生のための教育や、学生組織を活性化させたり先輩から後輩へ組織を継承したりするためのノウハウも少ないと感じていたので、そういったことを勉強できるツールとしても効果が期待できるのではないかと思っていました。
ただ、初年度はリーダーシッププログラムを実施しただけで終わってしまい、受講した学生のその後の様子がまったく見えなくなってしまいました。そこで当時プログラムを担当されていた先生やメンバーと、このプログラムで学生が身につけたスキルを学内に還元させる方法を話し合いました。
――そこで生まれたのが、DE+ですね。2017年からは、『大東文化を元気にする学生リーダー育成プログラム 』とプログラムの名前を変え、『自己の探求』を体験してモチベーションが高まった学生を学内のプロジェクトに誘う枠組みができました。学生にプロジェクトを体験させる意義を、Tさんはどのように考えていますか?
Tさん 自分の学生時代を振り返ってみると、出席すれば単位を取ることはそこまで難しいことではありませんでしたし、テストがあっても勉強すればなんとかなっていました。普通に大学生活を送っていれば、学生が困難な場面に遭遇する機会は案外少ないと感じています。私が大学職員になったのは、社会で活躍できるようになる学生を育てたいという思いがあるからなのですが、そんな大人になるには、大学での学びがもう一歩足りなんじゃないかと思っていました。学生時代という、失敗しても挽回できるような時期に、ちょっとしたチャレンジをしてみるのも良いのではないかと思っています。
例えばオープンキャンパススタッフとして活動するような、自分から何かを求めて動くタイプの人には、チャンスは学内にいろいろな機会が転がっていると思うかもしれませんが、そういった機会は、求めないとなかなか見つけられないものかもしれません。こうした学生リーダー育成プログラムをきっかけに、どんどん挑戦するチャンスが与えられるのは、いいことなのではないかでしょうか。プロジェクトに参加すれば、自分の気持ちだけではどうにもならないことにぶちあたるでしょうし、そこでどうしたらいいかを考えたらきっと成長できるはずです。学生リーダー育成プログラムやDE+を始めたことで、学内に学生の関われるプロジェクトが増えつつあります。DE+は、まさに授業にプラスして学んでほしいことにたどり着ける枠組みだと思います。
――「授業にプラスして学ぶことも必要」という考えは、Tさんの体験に根ざしたものですか?
Tさん そうですね。私は学生時代、学生自治に携わっていたので、学生のうちから「大人と交渉する」ということを経験できていました。そのおかげで就職活動でも大人が怖いとは感じませんでした。学生だけのサークル活動では経験できない、大人との接点を持てたのは良かったと思っています。
――DE+では、「大人」の側で学生のサポート役を務められているわけですが、どんな風に学生やプロジェクトと関わっているのですか?具体的に携わったプロジェクトなどあれば教えてください。
Tさん オリンピック・パラリンピック選手を招いてのキックオフイベントでは前日のリハーサルと当日運営の見守り役として携わりしました。その時の反省点は、反省会ができなかったことです。「やりっぱなし」になってしまい、そのことについて学生と話すタイミングが遅くなってしまいました。私たち職員も当日くらいしか関われなかったことも反省点でした。
入学式のプロジェクトでは、会場視察、会場と学生のやりとりのフォロー、動画撮影の協力などをしたほか、前日当日は運営スタッフとして働きました。当日配布するリーフレットの制作も学生と一緒に取り組みました。ただ、一緒に支援していた職員スタッフからは、「大人がどこまで学生のすることに介入していいのか分からない、難しい」という声も出ました。学生のやりたいことを尊重したいが、やりたいことをつきつめると時間がかかるので、その調整を我々がやってしまった面もありました。大人が転ばぬ先の杖を出してしまったけれど、それがなければ入学式として成り立たなかったというジレンマはあったかと思います。
それらの反省を踏まえて、今年度からはDE+では、各プロジェクトにDaito Education PLUS Centerのスタッフが必ず一人は付く担当制にして、基幹部署に全てお任せするような状態にならないようにしようとしています。
――Tさんは『Daito Education PLUS Center(以下DE+センター)』という有志の教職員による“仮想組織”に属して、プロジェクトに参加する学生を支援されているんですよね。これは正式な業務でもなく、負担も大きいと思うのですが、今の体制について課題を感じていることはありませんか?
Tさん 『学生リーダー育成プログラム』は良いプログラムなので継続させたいですし、お役に立てるならもう少し軌道に乗るまでやらねばという気持ちです。この取り組みをもう一段階ステップアップさせるには、現状を学内外に発信することが必要だと思っています。せっかく良いことをしているのに今はまだ一部の方にしか知られていなくて、同じ部署の方にさえ、私がどんな活動をしているのか発信できていないと思います。学生や私たちスタッフがやろうとしていることを、もっと発信していきたいです。
さらに欲を言えば、DE+センターが「仮想組織」でなくよりきちんとした「組織」になればいいな、とも思います。固定された役割の人がいて、予算もあって、知識が継承できる人員配置があることが理想かなと。そうでなければ学生を継続的にサポートできないと考えています。結局は学生と職員が個人の携帯でつながることしかできず、仕事なのかボランティアなのか曖昧な状態は、活動を継続するには良い条件とは言い難いと思います。また、プロジェクトを担当する部署との兼ね合いについても課題を感じています。
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