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【摂南大学】連載1-2/学生の学びスイッチをONにする初年次教育改革

更新日:2020年4月28日


2015年4月の教務部長就任を機に、初年次教育に関わるようになり、薬学教育一筋だった視野を、全学教育にも向けるようになった荻田先生。教育改革のヒントになったのは、ソーシャル・イノベーション副専攻課程で行われているアクティブ・ラーニングでした。


学生が自ら動き出す。アクティブ・ラーニングの教育効果を実感

──教務部長就任の後、和歌山大学が主管の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の参加校として採択されていますね。これについてはどのように関わられたのですか?


荻田先生  COC+の申請書に、中教審の答申に対する取り組みをどれだけ大学がやっているかを記載しなけばならなかったのですが、それを私が担当することになりました。それまでは、薬学教育しか知らなかったので、「中教審?聞いたことはあるけど…その取り組み、何それ?」というレベルですよ。そこから過去の中教審の答申を取り出して、ラインを引きながら全部読み返しました。その中で「アクティブ・ラーニング」「教育の質の転換」という言葉を知ったんです。前年度まで薬学部長でしたので、「教育の質保証」の観点については理解できていたし、書いてある内容には共感できました。そして、自分の中で「全学教育」という概念や育成したい学生のイメージがふくらんでいき、それが初年次教育改革の出発点になったのかもしれません。


──COC+採択を受けて「ソーシャル・イノベーション副専攻課程」を立ち上げ、鶴坂先生の授業「地域と私」で“アクティブ・ラーニング”をご覧になったんですよね?いかがでしたか?


荻田先生  基本的に講義はせず、グループワークでのグループディスカッションが中心。教員がしゃべるのは30分、あとは課題の発見とその解決策について話し合いさせるという授業の進め方が、これまでの教育経験からは信じられませんでした。鶴坂先生の力によるところも大きいのですが、なりより学生の成長に驚きましたね。





──その後、副専攻課程の授業を荻田先生も担当されていますが、どんな風に進めているのですか?


荻田先生  私は「地域医療」を担当したのですが、看護学部の先生に地域包括ケアの話を30分ほどしてもらって、あとは各グループで地域医療の課題を見つけて、どう解決するかをディスカッションしてもらいました。すると、みんなスマホを取り出して“パーっ”と調べ始めるんです。あるグループは「医者不足」という課題をみつけて、「医学部は年間これくらいの人数の医師を送り出しているのに、医師が不足するのは、勤務する地域に偏りがあるからだ」と発表してくれました。放っておいたら、彼らは勉強するんです。それで、副専攻課程の授業では教えることをやめて、課題をあたえて、学生が情報をあつめて考える授業をやるようにしたんです。


アクティブ・ラーニングには本当に教育効果があると、目で見て実感しています。知識を得るだけでなく、グループで“ちゃんと”話ができて、最初はプレゼンができなかった学生もしゃべれるようになる。人との話が苦手な学生も、それなりに“トツトツ”と話そうとしている。そんな姿はいいものですよ。


そういう経験から、学生が好むことを禁止するのではなく、好きにさせたほうがいいと考えるようになりました。すると、学びがどんどん自動化していくんです。今も授業中の板書の撮影や調べものにスマホを使わせていますよ。


──これまで「授業の敵」だったスマホが、表現したり、調べたりするための「ツール」になったわけですね。


荻田先生  教員はつい「我々の時代は…」と、昔の学生像を押し付けてしまいがちですが、それが大きな間違いのような気がします。まったく違う文化の人に、我々の文化を押し付けてはだめなんです。寝させない、私語をさせないために、いかに自分の好きなことをさせるか。一方で、それには難しさもあって、「話し合いをしなさい」と言うとしゃべらない。「話をしないように」と言うとしゃべる(笑)。だから、しゃべる仕組みをつくらないといけないんです。それはラーニングバリューさんに、ものすごく学びました。仕組みというか場づくりというか、“しかけ”ですかね。


──それは副専攻課程を履修している1年生がチームづくりのために行う『自己の探求』のプログラムのことですよね。例えばどういうところが荻田先生の参考になったんでしょうか?


荻田先生 「今からこういうことをやります。目的はこうです」というのをきっちりと伝える。口で伝えるだけではわからないのでポイントを書いてあげる。「さあやりなさい」としっかり時間をとってワークをさせて、「時間がきたよ」と区切る。さらに形の決まった「ふりかえりシート」。今の学生は、私たちの頃のように先生の言うことを適当にノートにメモって学習することが苦手なので、最初はそういうシートをつくって形を決めてあげると動くんだなと思いました。


それから、ルールに基づいて学生同士でグループを組ませるワークがあるじゃないですか。あれには感動しましたね。私の発想にはなかった。グループは教員が分けておいたほうがいいんじゃないか。学生に任せたら時間がかかるし、グループなんかできないんじゃないかと思っていました。でも、時間はかかっても、“ちゃんと”グループができて、ワークとして成立している。そこで学生同士の絡み合いができて、性格や個性が出てくるんですね。あれはすごい。これまでは、その過程を経ないで「これをやりなさい」と言っていました。しかし、それを言ったとたんに、彼らは主体性をなくすんです。そのワークを見たことで目から鱗が落ちました。


──「グルーピング」のワークは学生に主体性を預けるようなものですからね。


荻田先生 ワークが終わるごとに行う「ふりかえり」と「わかちあい」も、私は未だに授業で続けていますよ。「君、こうじゃないよ」と言われた瞬間に、学生は引いてしまう。褒めようが、注意しようが、他人事になってしまうんです。「ふりかえり」では、それをちゃんと自分で気づかせてあげることができます。人間は“ええかっこしい(かっこをつける)”なものですからね。「わかちあい」をすることで真面目に考える。そういう人間心理をついた仕掛けと場をつくることで、学びがアクティブになるんです。


こうした体験ができる『自己の探求』を、副専攻課程だけで実施するのはもったいないと思い、全入学生対象にできないかとラーニングバリューさんにご相談したんです。



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