top of page
  • odlabo

【摂南大学】連載1-4/学生の学びスイッチをONにする初年次教育改革

更新日:2020年4月28日


大胆な初年次教育改革の成功は、「大学という組織」の活性化にもつながっています。組織開発(Organization Development)の観点から今回の改革の取り組みをふりかえってみたいと思います。


教務部長になったことで、「学生に成長実感を持ってほしい、社会人基礎力つけてほしい」との思いを強くした荻田先生。COC+事業をきっかけに、全学教育やアクティブ・ラーニングが社会人基礎力や自分磨きにつながるという手応えも得ていました。

また、時期を同じくして、理事長から「オンリーワンの教育改革を」という新たなミッションが与えられ、荻田先生は2017年4月に副学長に就任。摂南大学のブランド構築のための計画を推進することとなりました。



人が動く、集団が変わる。大学の組織開発(Organization Development)のカギとは?

──「オンリーワンの教育改革を」という理事長命令を受けて、教育ブランド確立に向けた施策はどのようにつくられていったのですか?


荻田先生  まずは、学内のアクティブ・ラーニング研究会(2016年に荻田先生が立ち上げた組織)のメンバーと、各学部からの代表による教育改革実行チームをつくり、チームメンバーの30数名に対して、「オンリーワンの教育改革」をしたいと訴えました。私が考えたのは「いま、摂南大学の教育(学び)が大きく変わる」と「学生の学びスイッチ・オン!」という2つのスローガンです。それをもとに教育改革実行チームでは、ワークショップ形式(KJ法)で意見を出しあい、発表してもらいました。次にコアチームで、出てきた意見を整理して、最終的に「アクティブ・ラーニングの摂南大学。SDをリードする摂南大学。教育改革の摂南大学」という3つのテーマに統合し、教育ブランドをつくる計画をたてました。具体的には、「全学共通教育として、アクティブ・ラーニングでジェネリックスキルを身につける教養科目の設置、研修による教職員のスキルアップ、人材育成のための新たな副専攻設置」という3つの柱を考えています。


教育はどの大学もやっているし、当たり前のことをやっても目立つわけがない。だから、摂南大学らしい、非常識でもいいから新しいことをやってみたいと思い、学生主体の入学宣誓式と1600人のアクティブ・ラーニングをやったんです。


──組織開発(Organization Development)には4つの働きかけのポイントがあると言われます(下図参照)。新しいスタイルで初年次教育が動きだすまでの取り組みを、組織開発の観点から見ると、理事長がおっしゃっている「オンリーワンの教育改革」が、【ミッション・ビジョン】にあたるのだと思います。そして、【ミッション・ビジョン】に向かうための【場づくり】にあたるのが「5000人のアクティブ・ラーニング」や「学修キックオフ・セミナー」ということになるのではないでしょうか。【マネジメント】や【構造】の観点、すなわち評価やカリキュラムという点については、何か取り組まれていることはありますか?



荻田先生 【マネジメント】の観点では、どのように評価を行うかと考えているところです。コストもかかっているので、今回の場づくりが成功しているかどうか評価しないといけません。これについては本学の教務委員会でアセスメントテストの開発中で、将来的にはIRセンターで分析して、全学教育への展開を教育イノベーションセンターや各学部が担う予定です。退学率や出席率、成績が過去と比べてどうなったかの解析も進めています。偶然かもしれないですが、昨年は一昨年に比べて退学率は下がっています。先生方にも何らかの変化が浸透しているためかもしれません。


別の観点で言えば、この取り組みは学生募集におけるアピールにもなっています。副専攻課程のSA学生が高校教員への大学説明会において、「摂南大学ではこんなことをやっています」とアピールしてくれているんです。これが好評だそうで、受験者数増という結果につながるかもしれません。これも追跡調査をしないといけないでしょう。


【構造】の観点では、これから教養科目改革を行っていく計画です。それによって学生がさらに成長すれば、もっと【ミッション・ビジョン】の実現に近づけると思います。


──【ミッション・ビジョン】と【人間関係】への働きかけにとどまっていたら、ただ花火を打ち上げているだけのような状態になってしまいますものね。花火を打ち上げるのは重要なんですけど、それを再生産するよう構造化していかないといけないということですね。


荻田先生  それを委員会レベルでやっています。というのも、「科目やカリキュラム」「評価」に関することは、学部を巻き込まないといけませんから。次はこれらをPDCAで回していけるようにするのが私のミッションです。3年間でとりあえず形になりましたので、私は2018年4月で教務部長は退任しました。「科目やカリキュラム」「評価」については新しい教務部長が各学部や各部署と協働して回してくれています。私もIR・教育改革担当の副学長の立場で継続して関与しています。ただ、これまでは私を中心に集まっていたけれども、これからは参画してくれた先生のそれぞれが中心となって、そこからさらに広げていくことが重要ですね。


──教務部長就任からこれまでの約3年間を踏まえて、人や集団が動く時に重要なものは何だと思いますか?人が動く、集団が変わる、活性化するカギとなるのは何なのでしょうか?


荻田先生 私が常に意識しているのは、まずは「自分自身が“腹”を決める」こと。今回の件では、私が「学外に発信できるオンリーワンの教育改革」をやろうと、楽観的に、でも本気で決意しました。学生・保護者から多大な授業料をもらって、実力や成長実感をもたせられず、アルバイト三昧で卒業してしまう学生をつくってはいけないと思いました。教務部長になってから、いろんな学部の学生の声をたくさん聴かせてもらいましたが、授業や先生に対する不満、大学への不満などを聴くことができました。摂南大学には、有能ですばらしい教職員が多くいるのに、学生には教員の思いが伝わっていない。学生の「学びスイッチ・オン」こそ、まず大学がやらなければならないことだと思ったんです。


もう一つ大事なことはチームビルディングじゃないでしょうか。自分より立場が上の人・下の人をどう巻き込んでいくか。今回、「大学教養入門」と「学修キックオフ・セミナー」をやるにしても、一部の教員(学部)の猛反対にあったんですよ。ですが、全教職員が集まる場で、学長が「私は荻田先生の教育改革を全面的に応援している。みなさんにも初年次教育改革に協力してほしいと」と言ってくれて。その学長の決断は、私にとっては大きかったし、すごく助かりましたね。それから摂南大学アクティブ・ラーニング研究会のメンバーのサポート。同じ志をもつメンバーがいなかったら今回の改革はできませんでした。

学生も協力してくれました。学修キックオフ・セミナーのファシリテーターをした学生で「これまでは何のためかわからないような学生生活だったけど、これに参加できてよかった」と言ってくれた学生もいました。きっと彼の心、いのちに刻まれるような経験になったんでしょう。それは何よりもうれしいですよ。学生の成長や「こんな新入生がいるんです。困ったけど“ちゃんと”やりきりました」と自慢できる学生の存在は、こうした取り組みの原動力になりますよね。初年次教育改革で、私は「人が主体的な行動をとる仕組み」を学びました。いずれ、私も大学からいなくなりますが、この取り組みを10年は続けたいですね。いま、“志”を同じくする教職員が奮闘していますが、さらに多くの後継者を育てたいです。それが「摂南大学の伝統となり、摂大教育ブランドになる」と、心から期待しています。



【摂南大学】他の連載ページへ

#1-1234  #2-123  #3-123  #4-123


 

インタビューの最後に「人が動く、集団が変わる、活性化するカギとなるのは何なのか?」を荻田先生に問うたときに、「腹を決める」というコトバが出てきたのには迫力を感じました。「誰かを動かす」とか「誰かに意志決定させる」ではなく、「自分の覚悟」ということを口にされたのです。日頃は、明るくて冗談がお好きで、でもちょっとシャイなところのある荻田先生ですが、その覚悟が伝わって来るからこそ、人が集まるし人が動くんだろうなぁ、と感じました。学校の組織開発では、やっぱり人の想いがカギなんだと思いました。

閲覧数:261回0件のコメント
bottom of page