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【摂南大学】連載3-1/授業支援の学生アシスタント(SA)の活用と発展

更新日:2020年4月28日


連載1、2では摂南大学の初年次教育改革の取り組みについて、副学長、教員のキーパーソンに話を聞いてきました。この連載では事務職員として改革の一翼を担った大阪工業大学 情報科学部事務室 係長 江島 修一さん(2018年3月まで摂南大学教務課勤務)にお話を伺っていきます。

副専攻課程を成功に導くカギはチームビルディング研修とフィールドワーク

──江島さんが鶴坂先生とともにCOC+に携わるようになった経緯について聞かせてください。


江島さん 摂南大学では、当時の今井学長の強い思いでCOC+事業に2015年度に申請することとなりました。2014年度の終わり頃、鶴坂先生がリーダーに指名され、私も学長からの発令でプロジェクトメンバーになったんです。その後、同じくプロジェクトメンバーとなった地域連携センター(当時)、教務課のメンバーと毎日のように会議室に集まり、申請書の作成に明け暮れました。教務部長に着任したばかりの荻田先生も私たちのことを気にして、毎日のように様子を見に来てくれました。


結果的に摂南大学単体で文科省の補助金を獲得することはできませんでしたが、就職してからの15年間を振り返ってみると、これだけ根を詰めて取り組んだ仕事はありません。一緒に取り組んだメンバーとの絆は今でも強いですし、20年経っても30年経っても語れるような、非常に思い出深い経験をさせてもらいました。



──摂南大学は和歌山大学を拠点としたCOC+の参加校となりました。それをきっかけにソーシャル・イノベーション副専攻課程を立ち上げることになったそうですが、どのように組み立てていったのでしょうか?


江島さん  和歌山大学のチームでは、各参加大学ごとに副専攻という仕組みを作り、地域の発展に資する人材を育てることを前提としていました。そこで本学も副専攻課程を作り、主専攻、すなわち学部・学科の枠にとらわれない学びの仕組みを整えることにしたのです。その際、前期の必修科目の「地域と私」に関しては、COC+の申請書を書く段階から、15回分の大まかな授業計画を並行して考えていました。



──「地域と私」にはフィールドワークを取り入れていますが、カリキュラムの発想はどこから得たものですか?


江島さん  過疎地域である和歌山の交流人口・定住人口を増やすというCOC+の課題に応えるために、大阪の学生には絶対に現場を見せなければならないと考えていました。それに、私はPBLを担当していたので、学生には座学だけでなく学外に行ってもらうべきだとも思っていました。そこで、「大学のふるさと」協定を結ぶ和歌山県由良町をフィールドワーク先として設定しました。また、「地域と私」では個人学習よりグループでの学習を主とすることを想定しており、副専攻課程を履修する学生には、チームで協働する力を身に付けてほしいと考えていたことからラーニングバリューさんの『自己の探求』を採り入れることにしたのです。「地域と私」の主担当者である鶴坂先生と随時相談しながら、大まかな授業計画に肉付けをしていきました。


──『自己の探求』はチームビルディングをねらいとするプログラムですが、全15回の「地域と私」のカリキュラムのイントロダクションとなるタイミングで実施したのはなぜなのでしょう?


江島さん  それは私の経験によるところも大きいです。副専攻課程を開設するかなり前の話ですが、当時の上司に「研修の一環として一度『自己の探求』を受けみてはどうか」と言われました。それで2014年12月に関西大学さんのご好意でLA(Learning Assistant/授業支援のための学生アシスタント)育成研修の一環として実施される『自己の探求』を、関西大学の学生さんと一緒に受講させてもらったんです。


2日間のプログラムを楽しく過ごさせてもらって思ったことは「これを受けると元気になるな」。大人が受けて楽しいのだから、学生が受けて楽しくないわけがない。しかも、入学間もないタイミングで5学部が入り混じった中で実施すれば、新たな出会いを得られるんじゃないか、と。だから『自己の探求』を絶対4月にやりたかったんです。


──2016年4月から副専攻がスタート。思っていた通り、新入生に『自己の探求』を実施することができましたが、反応はいかがでしたか?関西大学での体験と比べて、学生の反応に違いはありましたか?


江島さん  授業計画上、「地域と私」の2、3回目(4月上旬)に『自己の探求』を行いましたが、初日に集まった時と、1日が終わって帰る時の表情が全然違いますし、2日目も違う顔になる。SNSでも「行く前は、ほんまイヤやったけど、終わってみたら楽しかった」とつぶやいてくれている学生がたくさんいました。この変化は、『自己の探求』を行うどの大学でも起こっていることだと思います。

ただし、摂南大学と関西大学ではプログラムを行う意味合いが違います。関西大学ではLAとして活動している2、3年生が主な対象で、結構深みのある議論をしつつも、無邪気に楽しむことで化学反応が起きるのではないかなと思います。

一方、摂南大学では、新入生を対象としていて、大学に入学したばかりで不安を抱えていて、どうやって友達をつくろうかなと思っている時期に初年次教育的な意味合いも込めて実施しています。あくまで私の印象ですが、摂南大学の学生は素直だけどちょっと控えめで、殻を破って一歩踏み出すのが苦手な子が多いように思います。その点、『自己の探求』は、「このルールの中で自由にやりなさい」というフレーミングの中で行うので、安心感が増して、活発になれるんですね。一歩踏み出すハードルは高くても、「受講生100人」という安全枠の中でなら伸び伸びとふるまえる。それが「友達も簡単にできるやん」という自信につながったところもあるようです。

大学によってプログラムを行う意味合いは違っても、誰もが楽しみながら自分を見つめ直せるプログラムだなと思いました。


──4月の最初に2日間の『自己の探求』を実施することで、1年間一緒にグループワークに取り組むチームづくりを行い、安心して授業に臨める態勢を整えたと言うことでしょうか。ところで、話をちょっと戻しますが、2014年に江島さんが関西大学で受けたLA育成研修の印象をもう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか。


江島さん  それは土日開催の研修だったんです。土日か…と思っていましたが、上司の積極的な勧めがあり、それならと参加しました。その頃の私は教務課に異動して1年目ということがあり、視野も狭かったですし、守備範囲から出ない仕事をしていました。でも、研修で学生と一緒にグループワークをしたことで、目を覚まさせてもらったんです。「え?キミたち2年生なの?自分なんて30歳過ぎてるんやけど」と衝撃を受けました。


LAに志願して、人の学修を支援したいという人ばかりが集まっているので、ポテンシャルの高い子であるのは分かるのですが、それを超えた素晴らしさを感じました。会話のキャッチボールのうまさや頭の回転の速さ、素直さを兼ね備えた学生の姿に衝撃を受け、私は自分自身のことについても、いろんなことに気づかされたんです。ちなみに、研修で同じグループだったメンバーとは未だに連絡をとっています。そんな深い絆ができるちょっと不思議な研修というか、体験というか。あそこに参加しなかったら、今の私はこうなってはいないような気がしますね。

そして彼ら個々に衝撃を受けたということもありますが、それを機に「LAという枠組みがあるのは素晴らしいな」と思ったんです。


──関西大学のLAが行っている“学生がファシリテーターとして授業運営に参画する仕組み”に興味を持たれたということですね。


江島さん  そうです。摂南大学にもSA(Student Assistant)の仕組みはあったんですが、教員のもとで授業補助をすることが主な業務でした。ですが私は授業のファシリテーションを担えるSAの組織を作れないかなぁと思ったんです。

ファシリテーションをして成長するのは、受講生ではなく、取り組んだ本人です。副専攻の1期生のために、そういう機会をつくりたいなぁと思っていたら、「副専攻のSAをつくろう」と乗ってきてくれたのが、当時の教務部長だった荻田先生でした。



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